東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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「心」って何ですか?(その6)

2010.06.04

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これまでのお話・・・

「心」って何ですか?(その1)
「心」って何ですか?(その2)
「心」って何ですか?(その3)
「心」って何ですか?(その4)
「心」って何ですか?(その5)

 

だんだんと、ネタが増えてまいりましたね・・・。

 


イイ感じです。(笑)

 


ただまあ、このブログは専門家に向けたものではないので、最初から全部読まなくても、1話1話、

「誰でもが」

分かるように配慮したものにしよう、と思っています。

 

今日は東洋医学のいう「心」を理解する上で欠かせない、「神(しん)」というものの関わりについて述べます。

 

 

東洋医学には「五神(ごしん)」という考え方があります。

 

人間の精神活動(考えたり、覚えたり、判断したり・・・)は、この「五神」というものの働きによってなされている、と考えられています。

 


そしてこの「五神」というものは、読んで字のごとく”5つ”あり、それぞれが「五臓」と深く関わる、とされています。

 


「五神」と「五臓」の関わりを書きますと・・・

・肝・・・魂(こん)

・心・・・神(しん)

・脾・・・意(い)

・肺・・・魄(はく)

・腎・・・志(し)

となります。

 

この中の、「肝」と「魂」の関わりについては、以前「肝」って何ですか?(その4)にて述べました。

 


脾と意、肺と魄、腎と志についても、いずれ述べようと思っていますが、今日はとりあえず「心と神」について述べましょう。

 


この「五神」というものには、それぞれに役割があります。

 


例えば、肝の魂には無意識をつかさどる働きがあったり、それ以外の意や魄や志にも、それぞれ異なった働きがあります。

 


その中で、この「心神」というものは特別、別格です。

 

なぜならば、他の四神の働きを統合し、まとめる、という、”部分的”ではなく、”全体包括的な”働きを持っているからであります。

 

つまり、人間が持つあらゆる感覚、記憶、本能、理性、思考、といった、精神活動の全てを、「心」が蔵する「神」が、最終的には統括している、という風に、東洋医学では考えます。

 

この辺の詳しい話はたにぐち書店『中医心理学』に非常によくまとまっております。

(しかしこれは専門書ですので、一般の方は読んでもチンプンカンプンかもしれません。)

 

 

実は僕は昔からこの辺の理論が好きでして、というか興味を持ってまして、色々な先輩たちに質問したり、本を読んだりして、徐々に自分なりに勉強を進めていました。

 

日々患者さんに接するたび、

「一体、人間のココロの仕組みってどうなっているんだろう?」

「この人は何を求めているんだろう?」

「どうすればこの人は癒されるんだろうか?」

とかっていう問題は、僕が鍼を持って以来、ずーっと頭にありました。

 


これを「医学理論的に考える」、一つのヒントがこの『中医心理学』でありました。

 

・・・まあそれはともかく、「心」という臓が蔵するこの「神」というものは、「魂」の説明の時と同じ感じになりますが、「気」のある側面に名前を付けたもの、と考えたらいいと思います。

 


つまり、平た~く、はしょりまくって、強引に、言うと(笑)、「気」のように全身を周流しつつ、”主に”「精神活動」のバランス調節をしているもの、と言えます。

 


じゃあ肝の臓が蔵する「魂」との違いは何か、というと、「魂」が無意識の精神活動に関与するのに対し、「神」は意識下の精神活動に”主に”関与します。

 

要は、仕事でも家庭でも、それ以外の人間関係も、我々の振る舞いは全て、各人の顕在意識下でなされていて、潜在意識が表面化することは通常ない訳ですが、

 

両者は表裏一体の関係性を持っていて、相互に影響しあう訳です。

 

これを調整、統括し、顕在意識を清明、正常たらしめているものが「心神」なのであります。

 

なので様々な要因でコレが不安定になると、実に多様な症状を呈します。

 


いわゆる西洋医学的な、”精神病”と言われるようなものも、東洋医学では「心神の病」の範疇に入ってくることが多いです。

 

あるいは原因不明の激痛を伴う病なども、この範疇で考えると説明がつくことが多いです。

 

なので臨床的には、この考え方を応用すると、非常に強力な鎮痛作用を鍼で表現することが出来たりします。

(・・・と言ってもまあ、そんな簡単な技術ではないけどネ。)

 

かなり簡単に述べましたが、東洋医学の言う「心の臓」が蔵する「神」とは、以上のような役割を持ち、人間の健康には欠かすことのできない役目を担っている、ということです。

 


次回に続く

 

 

 

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「心」って何ですか?(その5)

2010.06.01

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これまでのお話・・・

「心」って何ですか?(その1)
「心」って何ですか?(その2)
「心」って何ですか?(その3)
「心」って何ですか?(その4)

 


今日は、「心」と「血」の関わりについて・・・

 

☆心と血の関係

 

以前、「肝」って何ですか(その2)において、人体を潤し、栄養する重要な要素である「血(けつ)」は、五臓の中の「肝」に蔵され、

全身に配分調節されている、というお話をしました。

 


しかし、じゃあ「血」は肝に”しか”関わらないのか、というと、そんなことはありません。

 


肝以外の4臓にも、当然関わります。

 

 

その中で、特に「血」と密接にかかわるのが「心」であります。

 

なぜならば、(その1)で述べたように、心の臓には「ポンプ作用(主血作用)」という働きがあります。

 

この働きは、簡単に言うと、ドクンドクンと、全身に血が行きわたるように、律動的に「血」にプレッシャーを与えている作用、という意味です。

(笑・・・そのまんまだネ。)

 


でも、ということは、心には常に一定量の「血」がプールされていなければその働きを果たせませんよね?

 


つまり、十分に血が入ってなかったら、「ドクン」と動いてもスカッと空振りになっちゃうわけです。

 

ですので、「肝」が蔵している血が少なくなってしまうという、病的な状態(肝血虚)の時、肝以外の4臓の中で「心」という臓は非常に悪影響を受けやすい、と言えると思います。

 

こうした、肝と心の密接な関係性を、東洋医学では「心肝同源(しんかんどうげん)」なんて言ったりします。

 

この場合の「源」というのは、この二臓の安定的な機能の源(みなもと)が心も肝もともに「血」であるから、です。

 


そいで、血が少ない、という影響を心が受けると、心の臓の働きがうまく出来なくなり、不眠や動悸、あるいは精神的に不安定になったりと、実に様々な症状が出るのです。

 

こないだ、「肝」って何ですか?のシリーズ10話を読んで下さった、熱心な患者さんに聞かれました。

 

 


患「先生、あれを読むと、体の働きのほとんどは肝がやってないですか?」


竹「いやいや!そんなことはないです。(笑)肝がやってることはすごく大きいけど、他の臓腑の働きもすごいもんです。

これから他の臓腑も解説していきますが、徐々に色んなことが分かってくると思いますよ。お楽しみに!」

 

 

・・・東洋医学をまったく知らない人達に対する、本格的な東洋医学の、誰にでも分かるような解説。

 

この連載は僕にとってのチャレンジでもあるんです。

 

(次回に続く)

 

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「心」って何ですか?(その1)

2010.05.27

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・・・さて今日から「心(しん)」という臓について、考えていきましょう。

 


これを読んでいく時に注意してほしいのは、やっぱり西洋医学のいう「心臓=heart」と、東洋医学のいう「心の臓」というものとは、全く別のものであると考えたほうがいい、ということです。

 

東洋医学と西洋医学は、まったく違う角度、まったく違う哲学をもって、「人体」という小宇宙をみています。

 

だからここを初めから混同してしまうと、後々、ワケが分からなくなるのがオチなんです。

 

(僕自身がそうでした)

 

しかし、みている角度、哲学が違う、とは言っても、その対象は「人間」な訳ですから、その解釈が

”部分的には”

オーバーラップしてくることも当然あります。

 

これから述べる、「心の臓」の働きの中にも、そういう部分はあります。

 


でも、そこだけを強調して採り上げて、両医学の融合が出来るか、と考えると、それは限りなく不可能に近い、というか無理、少なくとも現段階では無理にそうしない方がいい、と僕は考えています。

 

まあ、コレ言いだすとまた前置きが長くなりそうなんで、さっさといきます・・・。苦笑

 


☆心は君主

 


東洋医学では、体を一つの国に例え、五藏六府をそれぞれ官職に例える考え方があるのですが、心というのは君主(国王、王様)と言われます。

(『黄帝内経素問』霊蘭秘典論(8)です)

 

 


国王がしっかりしていれば、国、国民は安定しますよね。

 

反対に、国王が不安定だと、国民も不安定になります。

 

このように、心がしっかりと機能していれば、体は安定し、滅びることはなく、心に異常があると、体は不安定で、滅びる方向に向かいます。

 

つまり病になる、ということです。

 

なぜ、心が君主、国王なのかというと、大まかに言うと、以下の二つの機能を「心の臓」が持っているためであります。

 

1.五臓六腑、全身に気血を巡らせるポンプ作用

 

(書籍によっては主血作用、と記載があります。谷口書店『基礎中医学』P71)

 

これは西洋医学の考え方ともオーバーラップしています。

 

しかし、東洋医学的な「心の臓」が巡らせるのはあくまでも「血液」ではなく「気血」なのであり、巡る対象は「五臓六腑のある、東洋医学の生命観に則った」全身なのです。

 

生まれた時から亡くなる時まで、ドックンドックンと、心は気血を全身に送り出し続けます。

 

 


「心の臓」のこの働きがなかったら、人間は生きていられません。

 

 

2.心は神(しん)を蔵するため

 


ここは、東洋医学独特です。

 


後ほど詳しく説明しますが、ここでいう「神(しん)」というのは、精神的な働きの中核をなすもの、と考えればいいと思います。

 


以前
「七情」についてで述べたように、人間は常に、実に色々な精神刺激にさらされていますが、それに対して、正常に反応できるのは、

この心が蔵する「神」という、「形のないもの」が正常に働いていれば、の話なんです。

 

この「神」に異常が起こると、ものごとの判断が正常に出来なくなったり、精神面、肉体面において、あらゆる異常が起こってきます。

 


つまり、心は


・全身に気血を休まず供給するポンプ(カラダの働きのかなめ)


・精神的な働きの中枢(ココロの働きのかなめ)


という2点から、「生命」というものを主宰する、”君主”である、と、東洋医学では位置付けられています。

 


この認識が、東洋医学の言う、「心の臓」というものを理解する出発点になります。

 


(次回に続く)

 

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患者さんの声(80代女性:末期癌による全身の浮腫み、激痛、呼吸困難など)

2010.05.25

久々に、「患者さんの声」をいただきましたので、載せさせていただきます。


本症例の患者さんは、今年(平成22年)の2月に他界されました。

以下の文章は、お孫さん(現在清明院に通院中)が書いて下さったものです。

 


80代 女性

症状:全身転移による末期癌による浮腫み、呼吸困難、歩行困難、全身の痛みなど

 

昨年(平成21年)の秋頃、祖母の細い足が急にゾウの足のように浮腫み、それをきっかけに病院の検査で調べた結果、癌の末期と宣告されました。

 


足の浮腫み以外は特に身体に大きな不調がなかったので、家族にとっては大きな衝撃でした。

専門医の先生は祖母の年齢、体力を考えて、手術や抗癌剤治療は勧めませんでした。

 
家族で慎重に話し合った結果、祖母には病気の事は伝えず、これまで通り、普通の生活をしながら祖母を看病し自宅で看取ることを決めました。

 


祖母は以前から足腰の不調等で竹下先生にお世話になっていたので、祖母の身体に関しては、引き続き竹下先生に全面的にお任せすることにしました。

 
これは私達家族からの願いでもありましたが、竹下先生の目指すところは、なるべく苦しませずに逝かせてあげること、でした。

 


昨年の
10月頃から竹下先生と松木先生が交代で週に34日、往診にきてくださり、特に大きな変化は無く新年を迎えられました。

 
癌患者とは思えないほど食欲はあり、癌の末期だなんて誤診ではないか、と疑ったくらいでした。

若干のふらつきがありましたが、鍼のあとはふらつきがなくなり、元気と自信を取り戻している様子でした。

 


その後徐々にふらつきが強くなり、家の中を動く事もままならなくなった頃、さすがの祖母も不安を覚え、落ち込んでいる事が多かったのですが、

やはり竹下先生と松木先生に優しく励まされ、支えて頂いていたように思えます。

 


鍼が終るとニコニコしていて

「心配しなくていいよ。」

って言われた、とうれしそうに話していました。

 


2月に入った頃からたまに腹部に痛みを訴えたり、ちょっと動くと息切れがひどかったり、食欲が減ってきたり、

と色々出てきましたが、ほぼ全て鍼で対処して頂き、穏やかに過ごさせていただきました。

 


年明けくらいからは近所の内科医院の先生も往診にきて下さっていて、介護保険を使って介護ベッドや酸素の機械や、

浮腫みをとるマッサージ機などをレンタルして下さり、病状に合わせて薬を出して下さっていました。

 


なんとなく外枠のケアを西洋医学で、内側を東洋医学で、といった感じの西洋医学と東洋医学のコラボレーションだったように思えます。

 


2月の中旬に体調が急に悪化し、2月末に亡くなるまで、竹下先生がお忙しい合間
を縫って毎日来てくださいました。

先生が毎日来て下さる事は祖母にとっての安心でもありましたが、私達家族の安心でもあり心の支えでもありました。

先生の月に唯一のお休みの日まで

 

「いつでも携帯に電話してください。」

 

とおっしゃってくださった先生に、本当に感謝の気持でいっぱいでした。

 

昨年の10月の時点で全身に癌が転移していて、手のほどこしようがない、という状態だった祖母が、亡くなる数日前まで食べたい物を美味しい、と言って食べていられた事、

 

癌の末期患者として苦しんだのは最後のほんのちょっとだけで、しかもその頃はほとんど意識が無かったと思うので、祖母はおそらく自分が重い病気であることに気付かないまま亡くなっていけた事は、

 

祖母自身にとっても私達家族にとっても、幸せな事だったと思います。

 

鍼治療の不思議を見せて頂きました。

 

そして何より竹下先生と松木先生が一生懸命やってくださったおかげだと思っています。

 

心から感謝しています。

 

約半年間、祖母の事でお世話になり、先生方はすっかりうちの親戚一同のヒーローとなり、死ぬときは清明院にお世話になる、と決めている人たちもいるので、

 

 

 

私を含め家族、親戚ぐるみで今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

 

◆清明院からのコメント

 

 

この症例は、末期癌と判明してから、亡くなられるまでの約4カ月間を、ご家族の要望により、ほとんど鍼のみで対応した、貴重な症例であります。

上の文章にもある通り、本症例の目的は、なるべく患者さん御本人を楽に逝かせてあげることでした。

「腎虚水泛(じんきょすいはん)、血熱(けつねつ)」と証を立てて最後まで治療し、それはなんとか達成してあげられたと思いますが、

 

最後は亡くなってしまった訳ですから、僕にとっては、もっとこうしてあげられたんじゃないか、ああしてあげられたんじゃないかと、今でも、

 

色々と考えさせられる症例でもあります。

 

人間は早かれ遅かれ、誰でもいつか必ず亡くなります。

 

悲しいけど、それは皆が分かっていることです。

 

ただ、最後亡くなる時ぐらいはなるべく苦しみたくない、周りに迷惑をかけたくない、というのが、多くの患者さんの考え方です。

 

この患者さん自身もそういう方でした。

 

この症例のように、現代西洋医学的には手の施しようがない状態の患者さんにも、鍼は強い味方になります。

 

鍼をして、安心し、痛みが楽になる、よく眠れる、結果、そんなに苦しまずに、比較的安らかに最期を迎えられる。そういう症例を、僕の短い臨床経験の中でも、何例も経験しています。

 

反対に、病院から手の施しようがない、と言われているにも関わらず、開腹手術、抗癌剤治療を選択し、酷い副作用に苦しみながら、本人もご家族も泣きながら亡くなっていった患者さんも、これまでに何人か診ています。

 

この方が亡くなられる前日の、意識があった最後の往診の時、帰り際に、

「明日も来るからね。」

 

と声をかけると、それまで苦しそうにしていたのに、ニコッと笑って頭を下げた、この患者さんの笑顔を、今でも昨日のことのように思い出します。

 

「東洋医学」とは何なのか、“人の生き死に”に対して何が出来るのか、限界は果てしない、と僕は思っています。

 

 

 

 

「お天気」と「ご機嫌」

2010.05.24

いや~、しかし昨日から雨が降るわ降るわ、ろくな天気じゃないですね~(+_+)

 


こういう悪天候の中、来院された患者さん達にまずは感謝。<m(__)m>

 


ニュースをみると西日本はもっとひどいみたいですが、しかし昨日から雨がよく降りますね~・・・。

 


今日、患者さんとの何気ない会話で、こんなのがありました。来院された時、

竹「いらっしゃい!いや~今日はいやなお天気だね~。こんな中よくいらっしゃいました!大変だったでしょ~。」

患「いや~、こんな風に天気が晴れない時は、気分も晴れませんね~。」

竹「・・・ホントだね~!まあどうぞどうぞ。」

という、何気ない会話でした。

 


しかしこれは意外と、大事なことだなあ、とその時フッと思いました。

 


何しろ患者さんを治そう治そう、という気持ちを持って、一生懸命鍼をさせていただく、というのが我々の普通のスタンスな訳ですが、

病気の経過中には、急に雨が降ったり、風が吹いたり、暑くなったり、自然界には色んな変化が起こります。

 


当たり前ながら、いくら鍼でも、自然現象を変えてしまうことはできません。

 


鍼は人や動物を治療する道具であり、天気の変化や潮の流れを変えるものではありません。(笑)

 


患者さん、というのは、そういう、予想だにしないような大きな自然界の変化があると、その都度その都度、健康な人に比べて、肉体的、精神的に非常に大きな影響を受けてしまいます。

 


まさに患者さんの体の中も、ココロの中も、雨が降ったり、風が吹いたり、嵐になったりして、それに健康な人よりも大きく振り回されてしまう訳です。

 


・・・なぜなら、なかなか健康な人のように、キビキビとは変化についていけないからです。

 


中には、ついていけないことにガッカリと落胆してしまったり、それが分からないために、ワケが分からなくって精神的に不安定になってしまわれる患者さんもおられます。

 


こうした時、僕らは鍼を使って体を調え、言葉で励ます、説明する、場合によっては笑い飛ばす(笑)ことしかできませんが、こういうことを理解してるのとしてないのとでは対応に大きな差が出ます。

 


”人間”というのは、自然界の中の他の動物と比較して「相対的に」独立してはいるけども、どこまでいっても自然の「絶対的な」支配から逃れることは出来ないんです。

 


天気が晴れなきゃココロが晴れない、こういうのは当たり前なんです。

 


要はそれの「程度の差」の問題なんです。

 


ところでココロと言えば、東洋医学では「心」の臓というものが大きく関与します。

 


という訳で、ぼつぼつ肝に続いて、”「心」って何ですか?”シリーズ、いきます!!


(笑・・・いつの間にか今日のブログは、前フリになっちゃいました。)

 

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「肝」って何ですか?(その4)

2010.05.01

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これまでのお話・・・

「肝(かん)」って何ですか?(その1)
「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)

 

肝という臓は、人間の体の中でも大変重要な臓でして、上記以外にもまだまだ働きはあります。

 

話があまりマニアックになっていきますと、患者さん向きでなくなるんで、このブログでは極力専門用語は使わずに、分かりやすく解説していこうかな、と思ってます。

(まあ専門家の先生方には、そういうサイトや本がいくらでもあるしね。)

・・・てな訳で今日も、肝の働き、いけるとこまで。

 

◆肝は「目」に関わる

 


・・・これも結局は、「髪」や「爪」と同様に、「目」を養っているのは「血」だから、というオチであります。


肝にためこまれている「血」が十分であり、ちゃんと目に十二分にいきわたっていれば、少々長い時間本を読んでも、PC作業をしても、

 

目が疲れたりかすんだりすることはありません。

 

清明院でも、よく患者さんの下まぶたを下げて(いわゆる”アッカンベー”ね。)、白くなってないかどうか診させていただくことがありますが、


下まぶたをめくった時の色が白くなっていれば、


「あ、肝がためてる血が少ないか、ためてる量はあっても、何らかの原因で、目にきちんと行きわたってないな。」


と考えます。

 

他にも、白内障や緑内障、疲労性の網膜剥離などなど、眼科のあらゆる病気は、東洋医学的には「肝」の異常を中心として起こっていることが少なくありません。

 

◆肝は「魂(こん)」を蔵(ぞう)す


・・・コレ、響きからして、いかにも東洋医学~!って感じでしょ?(笑)

「一体なんなのだ、この「魂(こん)」というものは!?ワケのわからんことを言うな!!」

と、僕も学生の頃は思っていました。

これについて細かく細かく解説をしていくと、どんどん肝の話から逸れていきますし、僕自身が年末に北辰会で講義する内容のネタばらしにもなっていきそうですんで、ここではごく簡単に述べてみます。

ここで言う「魂(こん)」ていうのも、人体を循環する「気」の一種だと考えて下さい。

つまり、生きている人間の体の中を絶えず流動し、心身のバランス調節をしてくれているものの一つです。

(「気」については、「気」ってなんですか? 参照)

 

で、「魂」は、日中活動時は「気」のように全身を行ったり来たりしていますが、睡眠時は、「肝の臓」に戻る、という運動パターンを持っています。

「肝の臓」が家だとすると、その家の主人が「魂」といった感じです。

 


このように肝の臓は、「血」であったり「魂」であったり、色々な重要なものを”蓄える”という性質があるということが、肝の臓を理解する上ではひとつ、重要です。

 


 

・・・で、「魂(こん)」「気」との違いはどうかというと、「気」が全身を巡って、”全ての生命活動を”調整するものであるのに対して、「魂」は、

「人間の無意識の精神活動を調節しているもの」

と言われます。

(笑・・・分かりにくいねえ~)

 

要はこの、「無意識の精神活動」っていうものは、僕らが普段、普通に「意識的に」やっていることの”支え”であり”裏”となっているものです。

 

例えば、「何かしよう」と思う時も、それを実際に行動に移す時も、その背後には、必ずこの「魂」の働きがある、ということです。

 


だから、目立ちませんが、大変重要なものです。

 

この「魂」の働きの具体例としてよく言われるのは、「夢」や意識昏迷状態での「うわごと」などです。

「夢」についてはかつて「夢」はなぜ見る?にちょこっと書いてますのでご参考あれ。)

 

 

本来は、「寝てる」という状態であれば、人間は当然無意識状態ですから、「魂」の出番はありません。

 

だから寝ている時は「魂」「肝」におとなしく帰っています。

(その時「魂は肝に蔵されている」わけね。)

 


しかし肝が病になると、この「魂」が不安定になって、(肝の臓に蔵することが出来なくなって)寝ている間も肝に帰らなくなります。

 

(非行少年のように、夜遊びし出すわけです)

 

そうすると、「夢」をよく見て、しかもそれをいつまでも覚えている、という病的な現象が起こります。

 

これを東洋医学では「多夢(たむ)」と呼び、うわごとや、酷いものでは夢遊病なども含めて、「魂(こん)」が夜の間に肝の外で遊んだ、

 

という意味で、「遊魂(ゆうこん)現象」なんて言います。(笑)

 

・・・面白いですねえ。(笑)

 

東洋医学にはこういう、西洋医学にはない、独特の病のとらえ方がたーくさんあります。

 

どれもとても面白いです。

 

しかしもちろん、この医学は面白いだけで終わりません。

 

例えば上記のような、毎晩毎晩、悪夢にうなされて睡眠不足で困っている、という患者さんがいた時に、これを”遊魂現象”と考え、「肝」に着眼して診察し、

実際に肝の病が中心だ、と確定したとします。

 


そして、それを上手に治療していくことによって、夢を見なくなり、ぐっすり眠れるようになる、

 

そして、それに伴って、肝の臓に関する病的なツボの反応やその他の症状が体から消えていく、という現象が「現実に」起こるんです。

 

そういう症例を実際に経験するたび、東洋医学はこのような一見不可思議な説明から、確かに一部「真実」を捕まえている、と再確認出来る訳であります。

 

 


次回につづく。

 

 

 

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自分で自分を治療・・・。

2010.03.11

おとといは雪が降り、半端じゃない寒さとなりました。

昨日も雪こそ降らなかったものの、かなりの寒さとなりました。

そして今日はカッと晴れて暖かい・・・。

そんな不安定な天候の中、僕は不覚にも昨日の朝、

「マズい・・・。カゼっぽい・・・。」

と思って目を覚ましました。体が全体的に重だるい、背中と頭が痛い、寒気、鼻水・・・。しかし、こういう時こそ普段の勉強がモノを言います。

即座に脈、舌、症状を確認し、鍼を一本。スーッと楽になります。しかしまだ完璧ではありません。

2時間ほど経ってから、再び所見を確認。さらに鍼を一本。今度は直後効果はそんなにありませんでしたが、脈は大きく変化。

その後忙しくて自分を治療できずに夜になるが、何とか普通に治療をこなせる。

夜、自宅にてさらにもう一本鍼。強烈に眠くなる。そのまま寝て、夜中に汗びっしょりで目を覚ます。

服を着替えて、所見を確認し、もう一本鍼。また眠気。そのまま寝る。

今朝、スッキリと無症状にて目を覚ます。

あー、東洋医学、やってて良かったと実感。いつもは忙しくて自分に鍼が出来ないような時は、漢方薬に頼ることもあるんですが、比較的症状が軽かったこともあって、あえて今回は鍼にこだわってやってみました。

そんな遊び心も、またイイ。(笑)

三寒四温

2010.03.04

いや~、せっかく暖かくなってきたと思ったら、先週末ぐらいからまた寒くなっちゃいましたネ・・。

 


ところで昔から、この時期のことを「三寒四温」と呼んでいます。

 


これは、朝鮮半島や中国北東部でも同じような現象があるらしく、3日寒い日が続き、その後4日は暖かい日が続く、
という、7日間周期の独特な現象なんだそうです。

 


これが大体お彼岸(春分の日)ぐらいまで続くので、「暑さ寒さも彼岸まで」なんて言葉もあります。

・・・ところで我々東洋医学を実践する者にとっては、この時期はやっかいです。

 


なぜなら、人間の体には、暖かい日には皮膚がゆるんで、汗や水蒸気を発散して体にこもった余分な熱を発散し、寒い日には皮膚を緊張させて、

 

熱(陽気)を漏らさないようにするという、いわば

 

「自ら陰陽バランスを調節する」

 

霊妙で重要な働きがあるのですが、これがあまりにも頻繁に、交互に行われると、この働きがついていけず、病になることがあります。

 

 


しかも、春先という時期は気が上にのぼせ易い時期でもあります。

 

これについてもそのうち解説しようと思いますが、この時期によく問題になる「花粉症」なんていう病気は、その典型例です。

 


要は、寒いなら寒いまま、暑いなら暑いまま、であれば、体の調節機能も余裕で対応できるけれども、
これがあまりにも「頻繁で極端」だと、

 

ついていけなくなる人が出てくる、ということです。

 


これの治療を考える上では、発散できずにこもってしまった「熱」にとらわれたり、発散しすぎて冷えてしまった「寒」にとらわれ過ぎると、


治療した翌日の気候いかんによっては、症状を悪化させることがあります。

 


そこで、こういう不安定な時期は、あまり極端な治療はあえてせずに、治療した翌日が暑くても寒くても、患者さんが上手に、スムーズに対応できるような治療を考えなくてはなりません。


(もちろん患者さん一人ひとりに合わせて個別にね。)

 


ここら辺が、この時期のあらゆる病変に対する治療の、難しくもあり、面白いところでもあります。

 


・・・ところで、全然話変わるけど、もう終わっちゃったけど、「ひな祭り」ってなんでしょうかね?

 

 


次回はそのお話。

 

 

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清明院オフィシャルホームページ(PC)


清明院スタッフブログ『清明なる日々』 

 

 

 

わが日々

2010.03.03

こないだ患者さんから、

「なんか先生のブログ読んでたら、先生って治療か、勉強か、飲んでるか、寝てるかしか、してなくないですか?」

と聞かれました。僕は当然、

「その通りでございます!」

とキッパリお答えしました。まあ充実っていうかなんていうかね、今はそれがイイ感じなんです。なのでもしこれに飽きたら、また他のことでもすると思います。

・・・当分、飽きないでしょうけどね。(笑)

僕はもともと極端に飽きっぽくて、昔から身の回りのものごとの全体像が僕なりにつかめてしまうと、とたんにそこにいるのが退屈になります。そのくせ「ヒマ」は嫌いだったりします。

まあ気分屋というか、要は根気がないんですね。(笑)

よく同業の後輩から、

「竹下先生って、どうして鍼をやろうと思ったんですか??」

と聞かれることがありますが、僕は大概、

「んーまあ、ヒマ潰しかな・・・。」

と答えます。(笑)僕は10代の頃、僕は毎日毎日、何か面白いことないかな~、と「真剣に」考えながら日々暮らしていました。

そいで試しに勉強を一生懸命やってみたり、仕事を一生懸命やってみたり、色々やった訳ですが、そこから得た結論は、

「自分が楽しくて、一生懸命になれて、終わりが果てしなくて、しかもそれが世のため人のためになることが、どうも一番飽きなさそうだぞ!」

ということです。

そいで「試しに」東洋医学、鍼灸やってみたら、これがなかなかね、「面白い」んですね~。

(ちなみに僕は人が何かをやった時に、「面白い、楽しい」と思えた時点ですでに才能あり、ということだと思っています。)

そいでこれがまた、ある程度出来るようになると、えらく「人の役に立つ」んですね~。そんでまた、それを極めようと思ったら「果てしない」んですよ。

時間は万人に平等です。1日が10時間しかない人なんて、この世にいません。平等な24時間をどう使おうがその人次第です。

その中で、「つまんなくって」、「人の役に立たなくって」、「簡単に」出来てしまうことをやってたって、僕にとっては「ヒマ」なんです。飽きるんです。もたないんです。

だから、僕にとって鍼灸は最高の「ヒマ潰し」なんです。

(誤解する人がいそうなので付け加えておきますが、遊び半分でやってるという意味ではなく、僕は極めて「真剣に」ヒマ潰しをしている、ということです。)

そんでもって今や「ヒマな日々」とか「充実した日々」とかを考えることは、僕にとって「虚実」を考えることなんであります!

・・・書いてみたはいいものの、今日のブログ、意味伝わったか、若干不安です。(苦笑)

「喜」について

2010.01.31

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今日は「喜」について書きます。

「喜」という感情なんて、あればあるほどイイに決まってんじゃん!

なければそりゃあ病気になるだろうけど、ある分には病気になんかなる訳ないじゃん!

・・・と思った方は、すでにして「喜」の少ない毎日なんじゃないかとお察しします。(苦笑)

まあそれは半分冗談ですが、東洋医学では、一見プラスに思える「喜」という感情も、過多になったり、過少になったりすれば体に不調を起こす、と考えます。

「喜」は基本的には(正常範囲ならば)「喜は気を緩める」「喜は気を下げる」と言って、精神的、肉体的な余分な緊張を緩和し、気を下げてくれます。

 

【参考】

『黄帝内経素問 挙痛論(39)』「・・喜則氣緩.・・」

『同 調経論(62)』「・・喜則氣下.・・」

ですから、強い緊張を強いられる仕事をされている方なんかは、定期的に「喜」という感情がどうしても必要です。

これが「笑い」であったり、恋人や家族との「安らぎの時」であったり、趣味や何かに「没頭する時間」であったり、人それぞれ違うでしょうが、

 

要は「満足感に浸る時間」のこと、と言えば分り易いかと思います。

・・・しかしこれも、「気が緩み”過ぎ”」になると問題です。

東洋医学では、「喜は心をやぶる」と言って、「喜」という感情が過度になると、五臓の中の「心」という臓に悪影響を及ぼす、

と考えます。

(ここでいう”心”は、西洋医学の言う心臓(Heart)のことじゃないよ!)

 

(因みに出典は『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』です。)

特に「心」の機能のうち、主に正常な精神活動をつかさどる機能が障害されて、情緒不安定や精神異常、不眠など、様々な症状を引き起こす、と考えます。

ですから、東洋医学では、健康な人生には、好きなことをして、

「気が緩む」

時も必要だけど、ここ一番、

「ピシッと緊張する」

時も人間には必要だ、と考えている訳です。

これもやっぱりバランスなんです。

・・・なるほど、確かにそうですよね?

自身の日々を振り返った時、実感される方も多いのではないでしょうか?

・・・ところで、今回は“緊張”と”緩和”の話になりましたが、

「緊張と緩和の法則」

と言えば、落語会の巨人である2代目桂枝雀さん(1939-1999)が提唱した「笑いの法則」ですね。

知ってる人は知ってるでしょうが、人は緊張する場面で、それが緩和する時笑うのだ、というやつですね。

東洋医学では、「笑い」という感情表現も「心(しん)」の働きと関与する、と考えます。

 

【参考】

『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』「・・在聲爲笑.・・」

『同 調経論(62)』「・・神有餘則笑不休.・・」

『霊枢 本神(8)』「・・心氣虚則悲.實則笑不休.・・」 など

 

お笑い番組や落語を見ていて「笑う」という現象を東洋医学的に考えると、

まず面白いものを見て「喜び」、
  ↓
そして「気が緩み」、
  ↓
それにより「心(しん)」が正常に働いた結果、
  ↓
「笑う」

となる訳です。

・・・ま、そんなこと考えながらバラエティー番組見てる人もいないけど。(笑)

東洋医学ではこのように、五臓(肝・心・脾・肺・腎)が、それぞれある感情、ある感情表現にも関与している、と考えています。

そこらへんの話も、そのうち書こうかな。


では次回は「思」についてです。

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