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2009.11.23

この前、
“「気」って何ですか?”
という疑問に対する、僕なりの簡単な考えを述べました。
(読んでない方はこちら 参照)
その中で、古代中国の自然哲学では、
「この世の全てのものは「気」から出来ており」
そして全ての自然現象は、
「気の動きによる現象である」
・・・と考えています、という話をしました。
しかしそれだけでは、すべての細かい現象を説明するのにあたっては、あまりにもザックリし過ぎてないか?という印象を持った方もいると思います。
例えば、人間と、動物、植物、鉱物、その他のあらゆる自然界における
「もののありよう」
とか、
「変化の仕方の違い」
について説明するには、
「みんな気で出来ています。全ては気の動きです。」
と言われたところで、
「は?何それ?よく分かんないし、そんなん信じられないよ!おたく新興宗教ですか?」
・・・ですよね?
(笑・・・僕も最初はそう思いました。)
もちろん、そのリアクションというのは、程度こそ現代とは違うだろうけど、古代も同じだったんじゃないでしょうか。
なので、それをより細かく、分かり易く説明(というより理解)するために生まれていった考え方が
「陰陽(いんよう)」
や
「五行(ごぎょう:木、火、土、金、水)」
という考え方なのだと思います。
「気」を「陰気」「陽気」さらに「五行の気」という風に分けて、諸現象を説明していったわけです。
ただ、一応分けるけれども、前提として、あくまでも、全ては“気”で出来ている、という考え方を失わないように、です。
(ここが重要!)
これについて、説明する内容の幅を広げ過ぎると、あまりにも壮大な話になってしまうし、かといって細かすぎると、専門用語ばっかりの難解な話になってしまいます。
なので、ここでは、あくまでも患者さん向けに、東洋医学の言う、
「人体内における気の動き」
を理解するための「陰陽」というものについて、ごくごく簡単に紹介してみたいと思います。
まず、一番分かり易い例として、この世界に存在する人間には、男と女の2種類がいます。
今も昔も変わりません。
これを、男は陽、女は陰と分けました。
「陽」とは動的な気の実在、「陰」とは静的な気の実在を意味します。
じゃあニューハーフはどうするんですか?と思った方、彼らはもともとは男です。(笑)
じゃあ映画の『リング』に出てくる貞子みたいな、両性具有は?と思った方、あれは例外ですので、性別とは違った物差しを使って陰陽分類すればよいのです。
・・・ともかく(苦笑)、現在でも、オリンピックなどで100mを何秒で走れるか、幅跳びでどれだけ飛べるか、比べれば必ず男性の方がいい記録が出ますよね?
・・・まあ、「動く」ということに関しては男性の方が得意というか、女性と比較して相対的に、そういう「動的な性質」を持った「人間」である、といえます。
一方女性は、男性と比較して相対的に静的(別に動けない訳ではない)であると同時に、「妊娠し、出産する」という生物学的な特徴があります。
これは、男性にはどうやっても真似出来ない、女性特有の機能ですね。
静的である、ということはマイナスだとか、あるいは動的であることに比べて劣っている、ということでは全然なく、そういう、動と静がうまくバランスをとることによって、
自然界の一部である「人間」という動物、つまり”気の凝集体の集団”が平和に、永続的に維持される、と考えます。
陰と陽との「バランスの調和から起こる正常な変化の連続」こそが大事なんだ、という考え方です。
(ですので女性差別とかではないですよ。誤解なきようお願いしますね(笑))
ここで、では男には陽の気、女には陰の気しか流れてないかというと、それは違います。
相対的に陽である男性にも、相対的に陰である女性にも、「陰陽」の2つの気が流れている、と考えます。
そうすると陽の中にも陰陽が、陰の中にも陰陽がある、そしてその中にも・・・となるわけで、そのパターンはいくらでも無限に分けられる訳です。
人間一人一人の個性、微妙な違い、というものについては、DNAではなく、東洋医学ではこれで説明していきます。
男っぽい女は陽寄りの陰、女っぽい男は陰寄りの陽、という具合に。
先ほどのニューハーフは後者ですが、生殖能力を持つわけではありませんよね?そういう意味では結局は彼らも「陽」です。
ちなみに余談ですが、そういうのを生年月日や星回りその他から細かく細かくパターン分類し、整理して、「ある人間」に起こる過去、現在、未来の予測をするのが「占い」ですよね。
(細木和子さんは今どこへ・・・。)
東洋医学では、このように人間(男女)に流れる陰陽の気のバランスが大きく乱れたものを「病気」(ここにも“気”が!)と考えます。
(因みにもちろんこの考え方は動物にも応用され、”獣中医学”と言われる分野もあります)
そして人体の中のその「気」の通り道のことを「経絡」(けいらく)と呼び、その経絡の上にある、鍼したり灸したりすることによって、
陰陽の気のバランス調整に使える点を「経穴」(けいけつ=ツボ)と呼ぶわけですね。
「気」と「陰陽」という哲学が大前提として基盤にないと、「東洋医学」は成り立たないのです。
「東洋医学」が、もしまったくの空理空論であって、現実に成り立たないものなら、当院の患者さん達はもちろん、中国、日本で数千年に渡って患者さんの病気が治ってきた、
という事実はすべてウソで、何かの間違いだった、ということになりますし、もしそうならば、西洋医学が世界中に爆発的に広まっていく中で、東洋医学は確実に滅び去ったでしょう。
しかし現代において、いまだに滅んでいない、それどころか実際に患者さん達が治っている、ということは、「東洋医学」がれっきとした医学である証拠であり、
「気」と「陰陽」という哲学は、自然を理解する上での重要な一つの考え方である、何らかの真実をつかまえている、ということの証左だと思います。
「陰陽」とは、この世界を認識する時に、一つの仮説として「気」から全てのものが成り立っている、と考えた場合に、個々の違いと共通点、
諸々の自然現象を説明、理解する上で「必要な」考え方である、ということです。
・・・どうでしょうか。分かりにくいでしょうか?
僕なりにかなり配慮して書いたつもりですが、ご批判、ご感想いただけると幸甚です!
2009.11.17

本日、「腰痛」を訴えてみえた患者さんに、あるご質問をいただきました。
足の臨泣というツボに一本鍼をした後、
患「先生、このツボって何に効くんですか?」
竹「腰痛に効きます。」
患「あ、そうですよね(笑)」
・・・というやり取りでしたが、これ、もっと正確に言うと、
「腰痛以外の諸症状にも効く中で、もっとも腰痛に対して効果を発揮するであろうツボを選びました。」
と答えるのが正確なんでしょうネ。
しかし、あまり正確に答えると、経験上
「?」
とか
「・・・はい。」
と怪訝な表情になってしまうことが多いので(苦笑)、いつも患者さんからの質問にはなるべくサクッと簡潔に答えるようにしています。
教育の現場でもそうなんですが、正確性よりも分かり易さを優先した方が良い場合というのは、厳然とある。
患者さんからしてみれば、腰が悪いなら腰に、肩がこるなら肩に鍼を打つのが、なんとなく当たり前ではないか、と思うのは当然だと思います。
しかしこの考え方を延長していくと、脳が悪いなら脳に、心臓が悪いなら心臓に鍼をする、という風になってしまいます。
(・・・まあ、極端に言うと、ですがね。)
東洋医学的な鍼灸治療、というのは、あくまでも全身のバランスを診て、調える、という考え方をはずしません。
ですので患者さんが何を訴えてきても、必ず我々は全身を診ます。
その中で、もっとも患者さんの訴えを速やかに除去できる可能性が高い、精選された経穴を、”ごく少数”選ぶのです。
最適な鍼の深さ、太さ、長さでね。
なぜなら、それが治るまでの最短距離だと考えているからです。
もちろんその考え方でもって体を診察した結果、腰痛の患者さんの腰に鍼を打つ場合もありますが、経験上、それは意外と少ないケースだと思います。
例えば腰痛一つとっても、
・運動不足や睡眠不足からくるもの、
・飲食の不摂生からくるもの、
・精神的なストレスからくるもの、
・骨の変形や体の歪み
等々、様々な「東洋医学的に考えられる原因」があります。
また実際は、これらががんじがらめにあいまって、最終的に「結果」として、腰痛が出てきているものが多いのです。
そのがんじがらめに絡まった、「病気の東洋医学的なメカニズム」を考えた場合、「悪いところに打つ方式」は「結果」しか相手に出来ないケースが多く、
効果がマイルドすぎてしまうことがあります。
(よくある、そんときゃ少しいいけど、すぐ戻っちゃって、全然治っていかない、ってやつです。)
もちろん、軽く患部をマッサージすれば、症状がすべて解決してしまうような、軽症(局所の筋緊張や血行不良のみの問題)のものであれば、
それで良くなってめでたしめでたし、というものもあります。
しかし、慢性の病気や、重症の病気となると、そうはいきません。
なぜ慢性化しているか、なぜ重症化しているのかを「東洋医学的に」考え、必要最小限の適確な刺激を与えてやることが、当院の言う、
「治る力を最大限活かしきる」
ことに繋がるのです。
清明院ではこのように考え、お陰様で、これまでいい結果を得てきております。
以前、とある先輩が何気なく発した言葉に僕はハッとしたことがあります。
「最小は最大だよね。」
・・・これを書いていてふと、思い出しました。
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