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2010.12.07
最近、随分と寒くなってきました。
・・・というよりも昼と夜の寒暖差、湿度の差が激しいですねえ。
以前も、養生や、急激な気候変動について書きました。
まあ、いずれにせよ本格的な真冬はもうすぐそこです。
こういう時の過ごし方を誤ると、普段から精神的、肉体的に疲れている人は特に、大概カゼをひきます。
そして、そこにさらに誤った養生法を重ねることによって、さらにこじれていきます。
早い段階で正しい治療と正しい養生をしてしまえば、カゼなんてものはどうってことありません!
コワいコワいと思って、カゼの人を避けてたってこの時期避けきれませんし、始まりませんから(笑)、
まずは正確な自分の体質を知って、正しい養生法はどんなものかを知るところからスタートするべきでしょう。
西洋医学では、インフルエンザや、肺炎が恐いということもあって、ワクチン接種や、ひいてしまったら解熱剤、抗生剤なんかを使って対応しています。
東洋医学では当然ながら、昔から今日に至るまで、鍼灸と漢方で対応します。
でも双方とも、その前に、まずは「養生」が大事です。
いざひいてしまって、治療しなければならない状況になったとしても、まずは「正しい養生」ありきです。
手洗いうがいはもちろんのこと、普段からのぼせ易い人は足腰をしっかりと防寒しておく必要があるし、
暴飲暴食から胃腸を弱らせている人は飲食を減らし気味にし、胃腸に負担をかけないことがポイントになるでしょう。
また、ハードワーカーで睡眠不足、過労気味の人はしっかりとした睡眠時間の確保、
運動不足で体がなまっていたり、精神的ストレスでイライラしている人は散歩等の軽い運動や、
そういう時間が取れないのであれば、せめて少しぬるめのお湯にゆっくりつかって少し汗を出してあげてから布団に入るとか、
必ずその人の弱点をうまくフォローできるような養生法が効果的です。
よく巷で目にする、
「〇〇さえ食べていればカゼ知らず!」
とかそういう、
”これさえやってればオールオーケー”方式は絶対に間違いです。
これだけ個体差があって、なおかつその個体が置かれている環境も千差万別な訳で、特定の何かをしとけばオールオーケーなんて、どう考えてもありえません。
(特定の感染症に対するワクチンなんかの場合は除く)
そうではなく、
「自分自身の正しい体質と、それを取り巻く今現在の環境、状況」
に対する正確な理解と、
「それに合わせた的確な養生法」
があってこそ、病を未然に防げる、あるいはかかってしまったとしても最小限に食い止めることが可能になるのではないしょうか。
患者さんの話を聞いていると、間違った養生法をしていることが非常に多く見受けられます。
上記に書いたような養生法はあくまでも一例であり、その患者さんに合わせた、もっともっと細かい養生指導も、やろうと思えば可能であります。
きちんとした養生、それをするためのきちんとした自分の体質把握、これが健康の第一歩じゃないかな、と思います。
そのために清明院では、初診時の詳細な問診を大事にしているのです。
治らん治らんと、自分の生活の見直しを棚に上げて、あれ飲んでみたりこれ食べてみたり、ウロウロしてても、思うように治らんのは当たり前です。
東洋医学も西洋医学も確かに優れた医学であり、あらゆる病に効果的ではありますが、
その効果を最大限生かすためにも、
「その人に合った正しい養生の実践」
というのは一大事なのであります。
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2010.11.27
皆さん、「病識(びょうしき)」という言葉、ご存知でしょうか。
参考にwiki
要するに、
「自分が”病的な状態”であるということを自覚していること」
と考えていいと思います。
これはよく、現代医学の、精神科、あるいは内科領域でしばしば問題になる用語だそうです。
とりわけ、アルコール依存や統合失調症などの病気の際に、よくこの用語が問題になります。
自分がアルコール依存や統合失調症に該当する状態になっていても、その自覚が患者さん自身にない。
患者さん本人としては、自分のことをいたって健康だと思っている。
そういう時、
”病識がない”
と考え、問題視し、治療の第一歩は、
”病識を持つこと”
と考えたりすることがあるようです。
・・・まずは、自分が健康でない、ということを理解するところが治療の始まり、と考えると、コレは何も西洋医学に限ったことではなく、
我々が普段診ている患者さん達でも、当てはまるケースは大いにあるように思います。
例えば、ある患者さんは、仕事に追われ、あくせくあくせく働いているうちに、それが当たり前になってしまった。
当然食生活、睡眠時間はメチャクチャ、運動は全くしてない、ストレスは常に感じている。
そういう人が、たまたま腰が痛くなったので、紹介されて鍼灸院に来た。
診てみると、とても1回や2回の治療で立て直せるような体の状態ではない。
しかし本人としては「病識」がないため、すぐ簡単に治ると思っている。
・・・こういうケース、実際に、たまにあります。
こういう場合に、患者さんを極力ビックリ(動揺)させないように、何がどうよくないか、そしてそれはどうすればよくなるか、という話を、
患者さんの納得を得ながら進めるのは、なかなか難しいことです。
こういうケースは、特に、20代、30代の若い患者さんに多いように思います。
確かに、あまりにも自分の体のことを気にし過ぎて、いつも不安がってばっかりいるのも問題です。
しかし、自分の健康を過信し過ぎて、突っ走った結果、手遅れ状態になってしまった。
それから慌てても、最悪、
”時すでに遅し”
になってしまっている場合さえあります。
・・・忙しく働くのも結構だけれども、たまには自分の体を冷静に見つめなおし、確かな「病識」を持つことは、
”未病を治す”
ことに直結します。
「病識」、軽んじてはいけないと思います。
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清明院に皆様のお力を!<m(__)m>
2010.11.09

これまでのお話・・・
スピリチュアルペイン(その1)
スピリチュアルペイン(その2)
スピリチュアルペイン(その3)
東洋医学のお話に入る前に、前回ちょこっと書いた、「スピリチュアルケア」というものについて、軽く触れておきましょう。
(この話題、何やら皆様興味津々とみえるので・・・。)
これまでのお話で、「スピリチュアルペイン」というものは、緩和ケアにおける「トータルペイン」の4分類の中の一つであり、「スピリチュアルペイン」の、
さらに細かい分類は3パターンある、というお話をしました。
今日お話しする「スピリチュアルケア」というものは、この3つ、それぞれに対する医療人としての対処法(ケア方法)だそうです。
(ここは非常に難しい問題をはらむので、深く入り過ぎずに、簡単に述べます。)
1.生きる目的を失っている場合
・・・将来を見出す。これにより、新たな現在を再構築する。
2.他者を失っている場合
・・・新たな他者を見出す。
3.出来ていたことが出来なくなった場合
・・・「考える」「感じる」「表現する」など、まだ自律性がある、ということを理解してもらう。
と、言葉では何となく分かるけど、よくよく考えると、どれも非常に難しいものです。
この3つのケアの基本的態度になるのが、
「傾聴(けいちょう)」
と、
「共にいる」
という行動になります。
これをすることによって、上記のような解決策をともに考えていく、というスタンスです。
緩和ケア医療では、医療者、あるいはご家族等、周囲の人間がこれを行うことによって、スピリチュアルケアに繋がる、としています。
・・・まあ、絶望の状態になった時、そばに自分の話をよく聞いてくれる人が一人いるのと、いないのとでは、その患者さんの心理状態は全然違ってくるということは、
想像すれば誰でも分かります。
この「スピリチュアルケア」というものを、医療者が理解しているのといないのとでは、終末期はもちろん、一般の患者さんにおいても、
治療効果、病の経過に大きな違いが出てくるような気がします。
このことは、僕自身の短い臨床経験の中でも大いにうなづける部分です。
僕はこの業界に入って、比較的早い段階から、「往診」での鍼灸治療を、今日までやってきましたので、寝たきりの方、重病、難病によって通院が困難な方と接する機会は、
他の鍼灸師の先生方よりは断然多かったと思います。
こうした患者さん達を思うと、たとえ僕のつたない鍼治療でも、週2回、3回と、そのお宅に通って、よくよく話を伺い、鍼をすることで、
様々な症状の緩和はもちろん、患者さんが非常に安心し、最後は亡くなるにしても、安らかに最期を迎えることが出来る、少なくともその一助にはなりえると実感する、
という経験を、これまで何度もしています。
鍼灸臨床サイドから見ると、
「傾聴」+「共にいる」+「鍼灸治療」
という組み合わせは、緩和ケアの考え方に照らし合わせた場合、非常に「スピリチュアルケア」の効果を高めるような気がします。
・・・というか、あえて「スピリチュアルケア」なんていう熟語を持ち出さなくても、東洋医学ではもともとこういうことを、数千年もの間、
当たり前にやってきたんだと思います。
次回からはそんなお話。
【ここまでの参考文献】
ホスピス―その理念と運動 シシリー ソンダース
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2010.11.07

前回、「スピリチュアルペイン」という言葉を理解するにあたって、まず「スピリチュアル」という言葉の概念について説明しました。
・・・で、今回は「スピリチュアルペイン」についてです。
近代ホスピス運動の草分け的存在で、緩和医療の重要性を説いた、イギリスの女医、シシリー・ソンダース(1918-2005)は、「痛み」というものを、
4つの概念に分類しました。
すなわち・・・
1.身体的な痛み
(痛み、ダルさ、息苦しさによる、日常生活への支障)
2.精神的な痛み
(怒り、恐れ、不安、イライラ、孤独感etc..)
3.社会的な痛み
(仕事、経済、家庭内、人間関係の悩みetc..)
4.スピリチュアルペイン
(人生の意味、死生観、死の恐怖、苦しみの意味に対する問いかけetc..)
この4つです。
そしてこれら1.~4.は、相互に関連しあっているとし、この4つをまとめて、
トータルペイン(全人的な痛み)
として総括し、医療者はこれらの痛みを深く理解するべきだ、としました。
上記の1.~4.は、下に行くにつれて、
「エ?痛みじゃないじゃん・・・。」
と思う人も多いかと思いますが、これらは相互に関わり合っている、という”トータルペイン”の立場、考え方からすれば、「痛み」である、
ということになります。
コレは近年、たまに話題になる、「緩和ケア」という医療分野の用語であり、考え方です。
「緩和ケア」や「ホスピス」というものは、近代日本は生活と宗教の関わりが浅いせいか、まだまだ日本人にはあまり根づいておりません。
ですので聞き慣れない話というか、すぐに理解するのに戸惑う方もおられるかとは思います。
しかしこれはとても重要な考え方だと思います。
いいところですが、次回に続く。(笑)
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2010.10.25

これまでのお話・・・
「心」って何ですか?(その7)
「小腸」って何ですか?(その1)
ちょっと空いちゃったけど、続きいきます!
☆「小腸の腑」の位置
東洋医学では、「小腸の腑」は、「胃の腑」と「大腸の腑」の間に位置するよ、と説きます。
これだけ聞くと、なんだ西洋医学と同じじゃん!と感じる人もいると思うけど、これも内容がやっぱり全然違います。
以前書いたように、東洋医学のいう「胃の腑」というのは、「脾の臓」と密着しながら、腹部(おへそとみぞおちのちょうど真ん中ぐらい)に位置する、と考えられています。
図を出すと、

(江戸期、岡本一抱(1655-1716)『臓腑経絡詳解』より)
・・・こんな感じとか、脾が胃に巻き付いて蠕動運動を説明するときの状況としては

こんな感じでしたね??
(ホジュン『東医宝鑑』より)
「大腸の腑」というのは、下腹部(おへそより下)にあります。
コレも図を出すと、

こんな感じでした。
(中国明代、張景岳『類経図翼』より)
そしてこの2つの腑の間に、「小腸の腑」は位置しています。
図を出すと、

こんな感じです。
(これも『類経図翼』より)
これらの図をみると、いかに東洋医学が「内臓の、写実的な形態の把握」について無頓着かがよく分かると思います。
いつも言うように、これは当然の話です。
だって昔は麻酔もないし、手術したりとか、安全にいじくれないからです。
治療する上で問題にすべきだったのは「形態」よりも圧倒的に「機能」の方だったワケです。
とはいえ、大腸の腑と小腸の腑は、形(形態)がよく似ています。
やっている仕事(機能)もよく似ています。
しかし、違いはあります。
この辺の話は、「大腸」って何ですか?(その2)にて、少し述べました。
次回は、そのお話。
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2010.08.24

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さてさて、そろそろ五臓六腑シリーズを再開したいと思います。
こないだ、「怒り方の大事」のコメントの多さをみた時、
「あれ、みんなもしや、東洋医学の話し、あんましキョ―ミないのかしら??」
とか、
「やっぱちょっと難しかったんカナー・・・。」
・・・とも思いましたが、負けずに書き続けようと思います。(笑)
このブログの裏テーマは、読み手(皆様)のニーズと、僕の楽しめる世界との最大公約数の模索であります!
(・・・言っちゃったら”裏”じゃないけど。(笑))
まあ、なるべく「面白く」、「分かりやすく」を心がけて、愛すべき東洋医学の世界を語っていきますので、難解、あるいは不可解な表現等がありましたら、
遠慮なくコメント下さいますよう、宜しくお願いします。<m(__)m>
ではいきます。
「肝」、「心」、「脾」、「胃」ときまして、続いて「肺」であります。
ちなみにこのシリーズは、どこから読んでも分かるように配慮して書いていますので、これまでのシリーズを読んでいなくても分かる書き方で書いていきます。
☆東洋医学の言う「肺の臓」とは
毎回毎回、うるさいかもしれませんが、東洋医学の言う、五臓六腑の一つとしての「肺の臓」は、西洋医学の言う「肺=lung」とは違います。
「全然」違います。(笑)
ではどういうものか、と言うと、
1.胸部に位置し、
2.呼吸運動や、それに伴う様々な部位に深く関係し、
3.「心の臓」と協調し合いながら他の臓腑の働きを助け、
4.皮膚や粘膜と深く関わり、
5.人間の本能とも深く関わり、
6.「お水」の出納(すいとう)にも関わり、
7.便通にも関わる、
という「臓」です。
これをざっと見ると、
「なんだ、やっぱ西洋医学の”肺”と似てんじゃん!」
と思う人もいるかもしれませんが、それは違います。
・・・「全然」違います。(笑)
「関わる」と言っても、その「関わり方」も、「関わる対象自体」も、全然西洋医学のそれとは違うんだから、同じな訳ないんです。
これから何回かに分けて、以上の7つのテーマを軸に語っていきます。
お楽しみにネ!!
次回に続く
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2010.07.23

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これまでのお話・・・
「胃」って何ですか?
「胃」って何ですか?(その2)
「胃」って何ですか?(その3)
☆胃は「気」の工場
いよいよ、「胃の腑」の機能面での重要性について書いていこうと思います。
まず、我々人間というのは、「飲食物」と「空気」がないと、すぐに死んでしまいますよね。
外界からこの二つを取り込むことによって、生命を維持している訳です。
そして、このうちの「飲食物」による生命維持に、「胃の腑」が大きく関わる訳です。
飲食物が体内に入ると、まず初めに食道を経て、「胃の腑」に収まります。そしてここで、「脾の臓」と協調して、飲食物から「気血のもと」を取り出します。
つまり脾胃がしっかりと働く、ということが出来ないと、全身の正常で健全な気血の産生運動は、ここでいきなりつまづいてしまう訳です。
しっかりとした脾胃を作るためには手足を使った軽い運動が一番いい、というお話は以前に致しました。
☆脾は上げ、胃は下げる
飲食物が脾胃に入った後、脾が胃をグイグイと「もんで」、気血のもとを取り出したならば、その残り物(カス)はさらに下の「小腸の腑」に送られます。
では取り出した「気血のもと」はどうなるか、というと、一度「胸部」に持ち上げられる、と、東洋医学では考えます。
この「胸部」よりも上の部分のことを、東洋医学では「上焦(じょうしょう)」と呼び、胸部に存在するのは「心の臓」と「肺の臓」、頭に存在するのは「脳」ですよね。
(「脳」についても、またいずれ述べましょう。)
以前、「脾胃」の存在する、みぞおちからおへそまでの位置(スペース)のことを「中焦(ちゅうしょう)」と言いましたよね。
・・・それに対して「心と肺」が存在するのが「上焦」です。
そしてこの”上”と”中”の境界線になるのが「膈(かく)」ですね。
(膈については「心」って何ですか?(その2)参照)
ではおへそよりも下は?というと、「下焦(げしょう)」と言います。
東洋医学ではこのように、人体を「上・中・下」の横3分割にして、それぞれの関わり、それぞれにおける働きを考えます。
なんで3分割で考えるのか、という問題は、長い話になるので、これもいつか書きましょう。
(笑・・・でもここは大変興味深い部分です。)
少し話がそれましたんで、今日はこの辺で一旦切って、次回は「脾は上げ、胃は下げる」話の続きから行きましょう。
続く
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2010.07.19

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・・・さあ、そろそろ再開しましょう。
これからお話しする「胃の腑」についてのお話は、とても重要です。
東洋医学では、生命を考える上で、この「胃」という腑の働きを、「脾」とセットで大変重要視しています。
何度も言いますが、東洋医学のいう「胃の腑」というものは、西洋医学の言う「胃=stomach」とは違います。混同なきよう。
西洋医学では、「死」を心肺停止と瞳孔散大からの全細胞の活動の停止、と考えます。
(もちろん死の定義については法律的、生物学的など、色々な解釈や議論があります。)
そしてそこに至るプロセスにおいて特に重要視される臓器は「心臓=heart」であったり「脳=brain」ですよね。
語弊があるかもしれませんが、東洋医学では、そうは考えません。
最後まで、五臓六腑の正常な働きに裏打ちされた、「陰陽のバランス」を重要視します。
「陰陽(いんよう)」って何ですか?
「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」って何ですか? 参照
そしてとりわけ、その中でも重要なのが「脾胃」であります。
・・・昔、とあるパーキンソン病(脳の病気で、体が震えたり、筋肉がこわばって、徐々にあらゆる運動が出来なくなってしまう病気)の患者さんがいました。
その方は80過ぎの男性で、奥様と二人暮らし。
昔から病院が嫌いな方でしたが、鍼をすると震えが止まり、ご飯がおいしく食べられる、ということで、信頼していただき、亡くなられる寸前まで診させていただいたことがありました。
その方は最後、徐々に徐々に筋肉が硬直していき、起き上がることすら困難、だんだんと食べ物を噛んだり飲み込んだりすることもままならない状況になっていきました。
その時、病院の医師は、「胃ろう(胃に管を通し、その管から胃に直接栄養を入れる方法)」をご本人と奥さまにすすめてきました。
それをすれば、奥様の介護の負担が減るし、ご本人も長く生きられるし、誤嚥(ごえん:誤って飲み込んだものが気道に入ること)して肺炎を起こす危険性もないと。
しかしご本人は、断固拒否。
「そんなことまでして生きてるんなら、死んだ方がマシだ!俺がもし喋れなくなっても、そんなこと絶対にするなよ!」
と、奥様におっしゃっていました。
その後、いよいよ喋ることすら難しくなり、流動食をどうにか口にするようになった頃、奥様が病院の先生に、
「胃ろうにして下さい。」
と、”ご本人に内緒で”願い出ました。
無理もないことで、介護の負担があまりにもきつかったんだと思います。
しかし、「検査だから」とご主人をだまして病院に連れていき、胃ろうを開けた翌日に、ご主人は他界されました。
・・・何とも言えない、症例でした。
東洋医学が重要視するのは、あくまでも他の4臓5腑とのバランスの取れた、「脾胃」であり、それは機械的な消化吸収機関、としての「内臓の一つ」のことではありません。
この患者さんの場合も、治療していく上で僕の念頭にあったのは、最終的には「脾胃」の機能をどこまで保てるか、繋いでいけるか、ということでした。
その場合、常に他の臓腑や全身(精神的な安寧も含む)とのバランスを考えていなくてはなりません。
すべての生物が避けることのできない「死」というものに対して、一つの自然現象として、相対的に寛容に受け止めるか、たとえ姑息的であっても、
方法があるのにやらないということを医療の敗北と考えて、いかなる方法であっても、延命の道をとるか。
・・・東洋医学の「胃」と西洋医学の「胃」は違うんです。
次回に続く
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2010.06.22

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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
「脾」って何ですか?(その4)
☆脾は湿気が嫌い
いや~、ここんとこ毎日毎日ムシムシしますね~!!
東洋医学では、体の内外の過剰な湿気のことを「湿邪(しつじゃ)」と呼び、あらゆる症状の発病因子と考えています。
体の中の湿邪のことを「内湿(ないしつ)」と呼び、体の外(自然界)の湿邪のことを「外湿(がいしつ)」と呼んでいます。
東洋医学では、「脾」というのはもともと湿った、乾きを嫌う臓だと考えています。
それに対して「胃」は逆で、乾いた腑である、と考えています。
(コレには深い意味があるんですが、難しいので割愛します。(笑))
体の中に余分な水分が増えたり、自然界がジメジメした時期になると、もともと湿っている「脾」の働きは弱ります。
だからいつも言うように、最近のようなジメジメした時期は、消化器に負担をかけないようにして、「飲み過ぎ、食べ過ぎ」はしないようにしないといけません。
それ+手足を使った軽い運動をしておけば、脾がしっかりしますので、あらゆる症状を未然に防ぐことが出来ます。
・・・では、脾が弱ると具体的にどんな症状が現れるんでしょうか?
☆脾が弱るとクヨクヨする
コレについては以前少しだけ書きましたが、(「思」について 参照)あまりクヨクヨと悩んでも脾に悪影響だし、飲食の不摂生などから脾を弱らせても、逆にクヨクヨしやすくなります。
要するに脾が弱ってくると、体がジメジメし、考え方までもがジメジメしてくる訳です。(笑)
身の回りに、引っ込み思案の人、理屈っぽい人、いつも物思いに沈んでいる人なんかがいたら、その人の食生活をよ~く観察してみましょう。
・・・きっとヒドいはずです。(苦笑)
☆脾が弱ると頭の回転が鈍る
コレはなぜかというと、肝が魂を蔵し、心が神を蔵するように、脾は「意」を蔵する、という考え方があります。
「肝」って何ですか?(その4)
「心」って何ですか?(その1) 参照
この「意」というのは、人間の短期的な記憶力を発揮するのに役立ち、人間の知恵、知識、思考能力に深く関わります。
参考図書『中医心理学』たにぐち書店
暴飲暴食のあとは頭の回転が鈍くなる、というのは、多くの人が経験したことがあると思いますが、それはこの「脾」に蔵される「意」の働きが鈍っている結果、と東洋医学では考えます。
自閉症、認知症などの精神疾患なども、多くの場合「脾」が関わっていることが多いように思います。
東洋医学の言う「脾」は、このように、消化吸収だけでなく、精神的な働きにも大いに関わる、と考えます。
まだ他にも、脾が弱った時の症状はありますが、一つ一つ全部書くよりも、大まかな傾向を述べていこうと思います。
・・・次回に続く
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2010.06.18

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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
☆脾の位置
今日は、脾の位置についてお話ししようと思います。
脾は、前回までに書いたように「胃の腑」とぴったりくっついて、体のど真ん中に位置します。
東洋医学では「胸(膈)から上」を上焦、「上腹部から臍のレベル」を中焦、「下腹部以下」を下焦と、大まかに人体の部位を上中下の3つに分けて考えますが、
この中で、脾が位置するのは「中焦」の位置です。
つまり腹、体のど真ん中に、堂々と、デーンと存在しているのが「脾胃」なのであります。
日本では、あまりいい意味で使われることはないけれど、”中華思想”という言葉があります。
古代中国人にとってはこの「中」というものに特別な意識があります。
中国人が「中」という字を使う時は深い意味があることが多い、と思った方がいいです。
当然それは医学にも反映されていて、「脾胃」は生命活動の中心となる、と言い、ここの営みを指して「気血生化の源(きけつせいかのげん)」なんて呼んでいます。
つまりここに入ってきた飲食物から、「気血のもと」をきっちりと取り出し、「心」や「肺」の存在する「胸から上」に持ち上げ、不要なものは「下腹部」にある「小腸」「大腸」に送る、
という活動の活発さこそが、”生命力”そのものの根本だ、という解釈です。
・・・ではなぜ、その「気血生化の源」である脾胃の営みが、手足を使った運動にて鍛えられるんでしょうか?
これはあまり難しい話にしたくないので、簡単に述べましょう。
要は、体のど真ん中にある脾胃から、一番遠いのが手足であり、手足は脾胃がしっかり働かないと、栄養が行き届かず、十分に養われないから、
「手足を使った運動をする」
ということは、脾胃のお尻を叩くことにつながるんです。
手足を積極的に使うことで、
「お~い!脾胃さ~ん!早く気血をおくれよ~!!」
とやっている訳です。
すると脾胃さんが、
「はいよ~!ちょっと待ってな~!!」
ということで、頑張って消化吸収機能を行い、気血をたくさん、速やかに作って、手足を養おうとする、という訳です。
ということは当然、手足を使わなければ脾胃は怠けて弱るし、脾胃が弱れば手足も弱くなる(萎える)ということです。
だから脾胃と手足は「中央(真ん中)と四隅(よすみ)」という、ちょっと変則的な陰陽の関係をなしている訳です。
(笑・・・ムズい?)
一応、専門家の方も読んで下さっているようなので、上記解釈の根拠を示しておきます。
『黄帝内経素問』太陰陽明論(29)です。
ちなみに杉山流などでは五行を使った解釈がありますが、あれは一般には説明しにくいので割愛しました。あしからず・・・。
ここまで書いたところで、急用が入ってしまいましたので、今日はここまでです!
次回に続く
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2012.07.08
2016.05.09
2016.04.12
2016.04.28
2015.06.04
2012.12.23
2014.02.17
2014.04.26
2025.12.12
患者さんの声(睡眠障害、その他不定愁訴)2025.12.05
2025年11月の活動記録2025.12.01
2025年 12月の診療日時2025.11.22
患者さんの声(15年以上メンテナンスで継続通院)2025.11.20
11.22(土)、25(火)、通常通り診療やります!!2025.11.19
2025年10月の活動記録2025.10.29
2025年 11月の診療日時2025.10.15
2025年9月の活動記録2025.10.10
清明院16周年!!!2025.10.01
2025年 10月の診療日時2025.09.20
2025年8月の活動記録2025.09.01
2025年 9月の診療日時2025.08.15
2025年7月の活動記録2025.08.01
2025年 8月の診療日時2025.07.04
2025年6月の活動記録2025.07.01
2025年 7月の診療日時2025.06.26
2025年5月の活動記録2025.06.01
2025年 6月の診療日時2025.05.10
2025年4月の活動記録2025.05.01
2025年 5月の診療日時2025.04.04
2025年3月の活動記録2025.04.01
2025年 4月の診療日時2025.03.13
2025年2月の活動記録2025.03.01
2025年 3月の診療日時2025.02.06
2025年1月の活動記録2025.02.01
2025年 2月の診療日時2025.01.21
順天堂東医研、第6回公開シンポジウム「総合診療と東洋医学」2025.01.10
2024年12月の活動記録2025.01.02
2025年 1月の診療日時2025.01.01
謹賀鍼年!!2024.12.28
年内診療終了!!2024.12.14
2024年11月の活動記録2024.12.01
2024年 12月の診療日時2024.11.07
2024年10月の活動記録2024.11.01
2024年 11月の診療日時2024.10.10
清明院15周年!!!2024.10.09
2024年9月の活動記録2024.10.01
2024年 10月の診療日時2024.09.19
2024年8月の活動記録2024.09.01
2024年 9月の診療日時2024.08.03
2024年7月の活動記録2024.08.01
2024年 8月の診療日時2024.07.10
患者さんの声(70代女性 目の痛み、不安感)2024.07.05
2024年6月の活動記録2024.07.01
2024年 7月の診療日時2024.06.05
2024年5月の活動記録2024.06.01
2024年 6月の診療日時2024.05.10
2024年4月の活動記録2024.05.01
2024年 5月の診療日時2024.04.13
(一社)北辰会、組織再編。