東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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鍼灸に関するRWD研究(乳がんサバイバーの疼痛)⑥

2026.10.26

 

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こんばんは 謝敷です。
 
 
 
 
ついに10月も最終週となりましたね。
朝晩はすっかり冷え込み、空気もだいぶ乾燥してきましたね。
暦上は、霜降で次が立冬なので、秋も終盤といったところでしょうか。

 
 
 
 
今週末には、私が所属する順天堂大学公衆衛生衛生学講座の
谷川武教授が会頭を務められる日本公衆衛生学会も開催されますので、
教室では、まだ秋の終わりを感じさせない熱気を感じます。

 
 
 
 
さて、乳がん経験者の痛みに対する鍼治療の影響を、
リアルワールドデータ(RWD)で検討した論文を見ています。
 

 

 

 

前回、鍼治療を受けた患者さんでは、
オピオイドの使用者割合が治療後に減少していたものの、
患者さんの背景因子を調整すると、
非鍼治療群との差は統計学的に有意ではなくなることを見ました。
今日は、この部分について、もう少し細かく見ていきたいと思います。





今回のようなリアルワールドデータを用いた研究では、
患者さんがランダムに「鍼治療を受ける群」と「受けない群」に
分けられているわけではありません。

 

 

 

そのため、実際の生活の中で、患者さん自身が鍼治療を選んだり、
医療者から勧められたり、
保険や経済的な条件によって受けられるかどうかが決まったりしています。

 

 

 

この研究でも、鍼治療を受けていた人には、
米国西部の居住者、PPO型保険の加入者、
転移のある患者さん、タキサン系薬剤の治療歴がある人、
更年期症状を有する人などが比較的多く、
基準日前の医療費も高くなっていました。

 

 

 

 

つまり、鍼治療を受ける人と受けない人は、
もともと全く同じ特徴を持つ集団ではありません。
そして、こうした患者背景を調整したところ、
調整前にみられていたオピオイド使用者割合の減少について、
非鍼治療群との差は統計学的に有意ではなくなりました。

 

 

 

 

このことは、
調整前に観察されていた鍼治療とオピオイド使用減少との関連の一部が、
鍼治療を受ける人ともともとの患者背景の違いによって
説明されていた可能性があることを示します。

 

 

 

例えば、症状が強く、これまでに多くの治療を受けてきた患者さんほど、
通常の治療に加えて鍼治療を選びやすいかもしれませんし、
一方で、そうした患者さんは、もともと鎮痛薬を多く必要とする可能性もあります。

 

 

 

 

反対に、医療へのアクセスが良く、
補完医療を利用しやすい環境にある人では、
治療の選択肢そのものが異なる可能性もあります。

 

 

 

このように、比較したい「鍼治療」以外の要因が、
鍼治療を受けるかどうかと、
結果として観察される鎮痛薬使用の両方に関係している状態を、
疫学では「交絡(confounding)」と呼びます。

 

 

 

そこでこの研究では、年齢、居住地域、保険の種類、
疼痛の種類、併存疾患、医療費、
転移や抗がん薬治療歴などの情報を用いて傾向スコアを算出し、
IPTW(逆確率重み付け)によって、
鍼治療群と非鍼治療群の背景をできるだけ近づけた、というわけです。

 

 

 

その結果、調整前にはみられていたオピオイド使用者割合の減少の差は、
統計学的に有意ではなくなりました。
しかし、残念ながら、今回の解析では
複数の患者背景をまとめて調整しているため、
具体的にこれらの背景因子のどの要素が、原因となったかと断定することはできません。





よって、この結果から言えることは、
調整前にみられていた鍼治療とオピオイド使用減少との関連には、
鍼治療そのものだけでなく、
鍼治療を受ける人ともともとの患者背景の違いが影響していた可能性がある
というとこまで…となります。

 

 

 

さらに、リアルワールドデータに記録されていない
患者さんの生活背景、教育歴、経済状況、症状の程度、
鍼治療を選んだ理由などは、十分には調整できません。

 

 

 

 

どれほど大きなデータベースであっても、
「データとして存在していないもの」は調整することができない
わからない!という点は、
リアルワールドデータ研究の難しさでもあり、面白さでもあると思います。

 

 

 

Ng DQ, Lee S, Lee RT, Wang Y, Chan A.
Real-world impact of acupuncture on analgesics and healthcare resource utilization in breast cancer survivors with pain.
BMC Med. 2024 Sep 16;22(1):394. doi: 10.1186/s12916-024-03626-2. PMID: 39285302; PMCID: PMC11406884.

 
 
 

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