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2010.01.31
今日は「喜」について書きます。
「喜」という感情なんて、あればあるほどイイに決まってんじゃん!
なければそりゃあ病気になるだろうけど、ある分には病気になんかなる訳ないじゃん!
・・・と思った方は、すでにして「喜」の少ない毎日なんじゃないかとお察しします。(苦笑)
まあそれは半分冗談ですが、東洋医学では、一見プラスに思える「喜」という感情も、過多になったり、過少になったりすれば体に不調を起こす、と考えます。
「喜」は基本的には(正常範囲ならば)「喜は気を緩める」「喜は気を下げる」と言って、精神的、肉体的な余分な緊張を緩和し、気を下げてくれます。
【参考】
『黄帝内経素問 挙痛論(39)』「・・喜則氣緩.・・」
『同 調経論(62)』「・・喜則氣下.・・」
ですから、強い緊張を強いられる仕事をされている方なんかは、定期的に「喜」という感情がどうしても必要です。
これが「笑い」であったり、恋人や家族との「安らぎの時」であったり、趣味や何かに「没頭する時間」であったり、人それぞれ違うでしょうが、
要は「満足感に浸る時間」のこと、と言えば分り易いかと思います。
・・・しかしこれも、「気が緩み”過ぎ”」になると問題です。
東洋医学では、「喜は心をやぶる」と言って、「喜」という感情が過度になると、五臓の中の「心」という臓に悪影響を及ぼす、
と考えます。
(ここでいう”心”は、西洋医学の言う心臓(Heart)のことじゃないよ!)
(因みに出典は『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』です。)
特に「心」の機能のうち、主に正常な精神活動をつかさどる機能が障害されて、情緒不安定や精神異常、不眠など、様々な症状を引き起こす、と考えます。
ですから、東洋医学では、健康な人生には、好きなことをして、
「気が緩む」
時も必要だけど、ここ一番、
「ピシッと緊張する」
時も人間には必要だ、と考えている訳です。
これもやっぱりバランスなんです。
・・・なるほど、確かにそうですよね?
自身の日々を振り返った時、実感される方も多いのではないでしょうか?
・・・ところで、今回は“緊張”と”緩和”の話になりましたが、
「緊張と緩和の法則」
と言えば、落語会の巨人である2代目桂枝雀さん(1939-1999)が提唱した「笑いの法則」ですね。
知ってる人は知ってるでしょうが、人は緊張する場面で、それが緩和する時笑うのだ、というやつですね。
東洋医学では、「笑い」という感情表現も「心(しん)」の働きと関与する、と考えます。
【参考】
『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』「・・在聲爲笑.・・」
『同 調経論(62)』「・・神有餘則笑不休.・・」
『霊枢 本神(8)』「・・心氣虚則悲.實則笑不休.・・」 など
お笑い番組や落語を見ていて「笑う」という現象を東洋医学的に考えると、
まず面白いものを見て「喜び」、
↓
そして「気が緩み」、
↓
それにより「心(しん)」が正常に働いた結果、
↓
「笑う」
となる訳です。
・・・ま、そんなこと考えながらバラエティー番組見てる人もいないけど。(笑)
東洋医学ではこのように、五臓(肝・心・脾・肺・腎)が、それぞれある感情、ある感情表現にも関与している、と考えています。
そこらへんの話も、そのうち書こうかな。
では次回は「思」についてです。
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2010.01.30
日常で、「怒」という感情を感じること、ありますよね??
ちなみに僕はほぼ毎日あります(苦笑)
・・・ただ、大事なのは、不愉快なことがあった時にこの「怒」という感情を感じること自体はまったく普通(当たり前)のことであり、
いたって健康的なことです。
これが過度になったり、変に我慢したりすると体に悪影響が出る、と東洋医学では指摘しています。
よく「怒」という感情を感じた時、「頭に来る」とか、「てっぺんに来る」とか、あるいは「怒髪天を衝く」なんて言い方、ありますよね。
これは要するに、体の上部に「気」が集まる、つまり上半身、頭部にのぼせる、ということを言っております。
こういった記載は、『黄帝内経』の中にも出てきます。
【参考】
『素問 挙痛論(39)』「・・怒則氣上・・」「・・怒則氣逆・・」
『霊枢 邪気蔵府病形(4)』「・・若有所大怒.氣上而不下.・・」
『霊枢 五変(46)』「・・怒則氣上逆.・・」、)
だから怒ってばかりいる人は「気」が頭部で渋滞を起こした結果、頭部の血行が悪くなって、鬱滞して鬱熱を生じ、結果的にハゲやすいんです。
(苦笑・・これは半分冗談、半分本気です。)
また、東洋医学には、
「怒は肝(かん)をやぶる」
という言葉があります。
(『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』です。)
面白いですね。感情の種類によって、ダメージを受ける部分が違う、という考え方は、現代の最先端の脳科学にも通じるものがあるそうです。
とはいえ、まあいつも言いますが、ここで注意しなくてはいけないのは、東洋医学の「肝の臓」と、西洋医学の「肝臓=liver」は別物だ、ということです。
ですので、怒ってばっかりいる人が西洋医学的に肝炎や肝硬変になりやすい、という訳では無いです。
東洋医学の言う「肝の臓」の病変を発症しやすい、ということです。
この場合、東洋医学の言う「肝」の色々な機能のうち、特に
「全身にバランスよく気血を巡らせる働き(中医学のいう”疏泄(そせつ)”の働き)」
が低下し、頭痛やめまいなどなど、上半身を中心に、全身の様々な症状が出てくることが多いように思います。
毎日患者さんを診ていますと、この「肝の臓」の異常によって症状を出している患者さんが、非常に多いです。
(ほとんどと言ってもいいと思います。)
現代人は、怒り過ぎ、あるいは我慢しすぎなんでしょうかね・・。(苦笑)
愉快なことがあれば、その分不愉快なこともある、これは当り前の話です。
それに対して「普通に」怒れる日々を送りたいですね。
(・・・コレがなかなか難しいんだけどネ(笑))
次回は「喜」についてです。
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2010.01.23
「寒燥」、「湿熱」について書いてきたので、せっかくだから「風(ふう)」、「火(か)」についても書いておこうと思います。
「風」と「火」については、「寒燥」「湿熱」の時のように陰陽一対になっている訳ではありません。
風も火も、どちらも性質の上から「陽」に分類され、「陽邪(ようじゃ)」と呼ばれます。
◆「風」について
まず「風邪」ですが、これは自然界に吹く風(かぜ)を想像すれば分かりやすいと思います。
気圧の高いところから低いところに向かって大気が移動する、あれのことです。
これが冷たいところから吹くと寒く、暖かいところから吹けば暖かい気候を形成します。
それが極端だったり、季節はずれだったりすると、人体に悪影響を与えやすく、病因になる場合がある訳ですね。
ここ何日か、季節外れの南風が吹いて、妙に暖かくなりましたね。
皆さん体調は崩していませんでしょうか?
古代、この働きをみた東洋医学の医者達は、
「風は百病の長たり」
と言いました。
(『黄帝内経素問』玉機真蔵論(19))
これは要するに「風邪」が他の邪気(寒邪や熱邪など)と合わさって、いろんな病気を連れてくることがある、と考えた訳です。
・・・ということは、「風」は自然界(外界)にはあるけど、人間の体内にはないかと言うと、東洋医学では「ある」と考えています。
例えば、緊張すると手が震える、ピクピクと筋肉が痙攣する、などの症状を「内風(ないふう)」と考え、人間の体の中に吹く「風」に相当する現象だ、と考えました。
手が震えていたり、筋肉が痙攣しているのを見て、風が木々を揺らしている現象と重ね合わせたんでしょうか。
おもしろいですね。(^v^)
このように、自然現象をそのまま人体に置き換えて考える考え方は、この医学の言う「天人合一思想」に基づいている、という話は以前このブログに書いた通りです。
まあ、この見方考え方をして、そのつもりで治療を考えた結果、何の効果も得られなかったら、まったくの机上の空論、ゼロ意味になってしまいますが、
それで効果が得られる、という事実があることは、そこに何らかの真実がある証拠だと思います。
◆「火」について
次に「火」ですが、自然界の「火」は分かりやすいですよね?
燃えさかる炎です。
山火事、噴火など、太古の昔から「火」が人間に与えるインパクトのすごさは今と変わらなかったでしょうし、人間が生活する上でも、火は欠かせませんよね。
・・・この「火」も、東洋医学では人体の中でおこる現象のひとつ、と考えます。
詳しい説明は難しくなるので避けますが、これはいわゆる”人体発火現象”みたいなもののことを言っている訳では無く(笑)、人体をめぐる正常な「気」が滞り、
鬱滞が長引いたりした時に起こる病理現象の一つとして考えています。
急激に熱症状が上半身や皮膚に出て、痛みや痒みを引き起こす、非常に激しい邪気、と考えております。
東洋医学ではこのように、自然現象が時に起こす特徴的な現象を、人体でも同じように置き換えて考え、さらに自然の異常と人体の異常との微妙な関係性にまで注目して、
独特の優れた医学体系を構築してきました。
「じゃあ、近年問題になっているウイルスだとか、新手のばい菌とか、その他のあらゆる病原体については、東洋医学では想定していなかったんだから、対応できないんでしょうか?」
というと、僕はそう思っておらず、
「出来る可能性は大いにあるのではないでしょうか。」
となります。
確かに、東洋医学には病原体の構造や種類を細かく分析する、という考え方はありません。
(顕微鏡や血液成分の分析など、技術的に出来なかったわけです。)
しかし、原因はどうあれ、結果的に人体に起こった異常を正常に調える、あるいは近づける方法は、これでもかと言うぐらい考え尽くしています。
なので、現代の様々な病気にも、東洋医学の考え方を応用すると、あっけなく治ったりするものが多くあります。
病原菌を顕微鏡的に明らかにして、殺してしまうのがいいか、病原菌によって起こった体の異常を調え、結果として病原菌を体から追い出すのがいいか、というアプローチの違いがあります。
・・・実際は、どちらがいいかはケースバイケースですので、方法論自体に優劣はないと思っています。
でも、実はこういう分野(東西の医学どちらが適応する病気か)の研究って、全然進んでいないという現実があります。
僕らとしては、東洋医学の言う判断基準に従って治療にあたるのみですが、ここら辺(どのタイミングなら東洋医学的手法の方が良いのか)がもっともっと明確になると、
患者さんのためにとてもいいことだと思っています。
(今の日本の医療体制じゃ難しいでしょうが・・・。)
東洋医学と西洋医学が、いつか「患者さんのために」手を組む日が来ることを祈っています・・・。
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