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Search Results for: 素問

「如環之無端」という言葉

2011.01.06

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今日はいきなり、

「如環之無端」

という言葉について考えてみます。

(笑・・・今朝なんとなく、この言葉が頭をよぎったからです。このブログは、そういうノリです。)

 


コレは実は東洋医学、東洋哲学においては、非常に有名で大事な言葉なんです。

 


日本語でどのように読むかというと、

「環(たまき)の端(はし)なきがごとし」

と読みます。

(ところで読者の皆さんは冒頭の漢文に返り点、正確に打てますか??)

 


・・・ともかく、コレの意味は、大自然の循環や、人体における「気」の循環を指して、

「まるで繋がった環(わ)っかのように、端っこ(終わり)がないようなものだよ。」

という意味で、非常によく出てきます。

・・・ともかく、この言葉は、東洋医学の聖典とされる

『黄帝内経(こうていだいけい)』

の中にも、

『難経(なんぎょう)』

の中にも出てきます。

 


専門家の先生方、素問:六節蔵象論、霊枢:営衛生会篇、難経:30難です。

 


探せばまだ他にもあると思うけど、個人的には30難にこの言葉が出てきてるっていうのは興味深い気がします。

 


・・・ともかく(笑)、それ以外にも、有名な

『鍼灸甲乙経(しんきゅうこうおつきょう)』

や、兵法書として有名な

『孫子(そんし)』

の中にも出てきます。

 


まーまー、とにかく中国では昔っから有名で重要な言葉な訳です。

・・・では、コレが何で有名で重要なんでしょうか。

これは、東洋の自然哲学では、自然界の動き、移ろいにおける「”循環”の重要性」に常に着眼してきたからであります。

 


自然界は毎日毎日、昼から夜、夜から昼へと、陰から陽へ、陽から陰へ、日々まさに循環しています。

 


その”絶対”にして”永久不変”の法則の中で生きている、その中でしか生きられない、我々人間の生命活動も、精神的にも肉体的にも、すべて含めて「循環」することで、

 

「動的な平衡状態」を保っております。

 


やまない雨はなく、明けない夜はない、やなことがあって落ち込んでも、それが永遠に続くことはあり得ないんです。

 


・・・まあ、こう言うとなんか自己啓発本的なポジティブシンキングのススメのように聞こえるけど、これは逆もまたしかりなんですよね。

 


「盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)」

 

という言葉もあるくらいです。

(コレは生命活動というより人間関係(社会活動)で出てくることが多い話ですが。)

 

つまり、結局は「動的な平衡状態」をうまく保つためには、精神面も肉体面も、行き過ぎない、バランスが重要だ、ということなんですネ。

(笑)・・・なんか当たり障りない結論になってしまいましたが、ここから細かい話や具体例に展開しようとすると大変なんです。

 


なのでそれはまたそのうち。

・・・今朝は何やらこの言葉以外にも、色んな興味深いキーワードが何故か頭に次々と浮かんできまして、個人的には新年早々、色々と楽しく妄想しております・・・。

(笑・・・もちろん治療に活かすための妄想ですよ!)

 

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「肺」って何ですか?(その7)

2010.09.03

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これまでのお話・・・


「肺」って何ですか?(その1)

「肺」って何ですか?(その2)
「肺」って何ですか?(その3)
「肺」って何ですか?(その4)
「肺」って何ですか?(その5)
「肺」って何ですか?(その6)

 

☆「肺」と皮膚


今日はコレです。

コレもまあ、

「え!?なんで??肺と皮膚なんて、なんか関係あんの?」

と思う方もいらっしゃるんじゃないかと思います。

これは、東洋医学をちょっと知っているような人の間では、ポピュラーな話です。

東洋医学では、人体の皮膚表面(皮膚、汗腺、産毛、粘膜等まで含む)のことを「皮毛(ひもう)」と呼び、

”肺は皮毛をつかさどる”

という有名な言葉があります。

 

『黄帝内経素問』痿論(44)です。)

つまり、何らかの原因で「肺の臓」に異常を起こすと、この「皮毛」に異常が起こることを教えてくれています。

 

今日はこのことについて考えてみたいと思います。

 

まずこれには、「皮毛」の意味をサッと理解する必要があります。

 


・・・東洋医学のいう「皮毛」は、

1.外気温や、湿度などの複雑な陰陽変化に常にさらされ、それに対する防衛の最前線であり、

2.汗や分泌物を体外に出すことによって体温調節や解毒に一役買い、

3.粘膜においては、常に様々なばい菌や機械的刺激にさらされながらも、それに侵されないように体を守り(ここでも最前線)、

4.体の全ての器官(内臓、骨、筋肉etc…)を大外から「まるっ」と包みこみ、外界との境界線となる

部分のことです。

現代では、アトピー性皮膚炎など、この「皮毛」に慢性的に異常を起こす患者さんが非常に増加しています。

 

(2018年版日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 参照)


コレの原因は当然、様々な原因が複合的に絡み合った結果だとは思いますが、東洋医学的に考えると、一つには、

”大気汚染による「肺の臓」の機能の低下”

も、大きく関与しているであろう、と思います。

 


新宿なんかに住んでますと、まったく、中国の古典にあるような「天空の清らかな気」を吸っている感覚がしません。(苦笑)

 

海の匂いのする伊東に生まれ、土の匂いのする群馬で育った僕には、それがよく分かります。

 


そもそも空気の悪いところで生まれ育った人に、皮膚の異常が増えるなんてのは、東洋医学的に考えたら”当たり前”ですね。

 

・・・ところで、最近はあまり言われなくなりましたが、

「皮膚呼吸」

なる言葉がありましたねえ?

 


現在でも、一部のサイトなんかでは、当たり前のようにこの言葉が登場し、それに基づいた施術の効能なんかが説明されています。(苦笑)

 

皮膚でガス交換(酸素と二酸化炭素の交換)を行うのは両生類(カエルさんたち!)とかです。

 


つまり、

「人間は皮膚で呼吸しているからうんぬん・・・。」

と主張することは、

「人間は卵を産むからうんぬん・・・。」

と言っているのと、ある意味同じことです。(苦笑)

 

・・・東洋医学の言う、「肺と皮毛」の関係というのは、こういうことを言っているんじゃありません。

 


コレを正しく理解するためには、「衛気(えき)」というものについて、「サッと」考える必要があります。


・・・これはちょっと長くなりそうなので、次回に続く。(笑)

 

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「脾」って何ですか?(その4)

2010.06.18

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これまでのお話・・・

「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)

 

☆脾の位置

 


今日は、脾の位置についてお話ししようと思います。

 


脾は、前回までに書いたように「胃の腑」とぴったりくっついて、体のど真ん中に位置します。

 


東洋医学では「胸(膈)から上」を上焦、「上腹部から臍のレベル」を中焦、「下腹部以下」を下焦と、大まかに人体の部位を上中下の3つに分けて考えますが、

 

この中で、脾が位置するのは「中焦」の位置です。

 


つまり腹、体のど真ん中に、堂々と、デーンと存在しているのが「脾胃」なのであります。

 


日本では、あまりいい意味で使われることはないけれど、
”中華思想”という言葉があります。

 


古代中国人にとってはこの「中」というものに特別な意識があります。

 


中国人が「中」という字を使う時は深い意味があることが多い、と思った方がいいです。

 


当然それは医学にも反映されていて、「脾胃」は生命活動の中心となる、と言い、ここの営みを指して「気血生化の源(きけつせいかのげん)」なんて呼んでいます。

 


つまりここに入ってきた飲食物から、「気血のもと」をきっちりと取り出し、
「心」や「肺」の存在する「胸から上」に持ち上げ、不要なものは「下腹部」にある「小腸」「大腸」に送る、


という活動の活発さこそが、”生命力”そのものの根本だ、という解釈です。

 


・・・ではなぜ、その「気血生化の源」である脾胃の営みが、手足を使った運動にて鍛えられるんでしょうか?

 


これはあまり難しい話にしたくないので、簡単に述べましょう。

 


要は、体のど真ん中にある脾胃から、一番遠いのが手足であり、手足は脾胃がしっかり働かないと、栄養が行き届かず、十分に養われないから、

「手足を使った運動をする」

ということは、脾胃のお尻を叩くことにつながるんです。

 


手足を積極的に使うことで、

「お~い!脾胃さ~ん!早く気血をおくれよ~!!」

とやっている訳です。

 

 

すると脾胃さんが、

「はいよ~!ちょっと待ってな~!!」

ということで、頑張って消化吸収機能を行い、気血をたくさん、速やかに作って、手足を養おうとする、という訳です。

 


ということは当然、手足を使わなければ脾胃は怠けて弱るし、脾胃が弱れば手足も弱くなる(萎える)ということです。

 


だから脾胃と手足は「中央(真ん中)と四隅(よすみ)」という、ちょっと変則的な陰陽の関係をなしている訳です。

(笑・・・ムズい?)

 


一応、専門家の方も読んで下さっているようなので、上記解釈の根拠を示しておきます。

『黄帝内経素問』太陰陽明論(29)です。

 


ちなみに杉山流などでは五行を使った解釈がありますが、あれは一般には説明しにくいので割愛しました。あしからず・・・。

 


ここまで書いたところで、急用が入ってしまいましたので、今日はここまでです!

 

 


次回に続く

 

 

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「心」って何ですか?(その1)

2010.05.27

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・・・さて今日から「心(しん)」という臓について、考えていきましょう。

 


これを読んでいく時に注意してほしいのは、やっぱり西洋医学のいう「心臓=heart」と、東洋医学のいう「心の臓」というものとは、全く別のものであると考えたほうがいい、ということです。

 

東洋医学と西洋医学は、まったく違う角度、まったく違う哲学をもって、「人体」という小宇宙をみています。

 

だからここを初めから混同してしまうと、後々、ワケが分からなくなるのがオチなんです。

 

(僕自身がそうでした)

 

しかし、みている角度、哲学が違う、とは言っても、その対象は「人間」な訳ですから、その解釈が

”部分的には”

オーバーラップしてくることも当然あります。

 

これから述べる、「心の臓」の働きの中にも、そういう部分はあります。

 


でも、そこだけを強調して採り上げて、両医学の融合が出来るか、と考えると、それは限りなく不可能に近い、というか無理、少なくとも現段階では無理にそうしない方がいい、と僕は考えています。

 

まあ、コレ言いだすとまた前置きが長くなりそうなんで、さっさといきます・・・。苦笑

 


☆心は君主

 


東洋医学では、体を一つの国に例え、五藏六府をそれぞれ官職に例える考え方があるのですが、心というのは君主(国王、王様)と言われます。

(『黄帝内経素問』霊蘭秘典論(8)です)

 

 


国王がしっかりしていれば、国、国民は安定しますよね。

 

反対に、国王が不安定だと、国民も不安定になります。

 

このように、心がしっかりと機能していれば、体は安定し、滅びることはなく、心に異常があると、体は不安定で、滅びる方向に向かいます。

 

つまり病になる、ということです。

 

なぜ、心が君主、国王なのかというと、大まかに言うと、以下の二つの機能を「心の臓」が持っているためであります。

 

1.五臓六腑、全身に気血を巡らせるポンプ作用

 

(書籍によっては主血作用、と記載があります。谷口書店『基礎中医学』P71)

 

これは西洋医学の考え方ともオーバーラップしています。

 

しかし、東洋医学的な「心の臓」が巡らせるのはあくまでも「血液」ではなく「気血」なのであり、巡る対象は「五臓六腑のある、東洋医学の生命観に則った」全身なのです。

 

生まれた時から亡くなる時まで、ドックンドックンと、心は気血を全身に送り出し続けます。

 

 


「心の臓」のこの働きがなかったら、人間は生きていられません。

 

 

2.心は神(しん)を蔵するため

 


ここは、東洋医学独特です。

 


後ほど詳しく説明しますが、ここでいう「神(しん)」というのは、精神的な働きの中核をなすもの、と考えればいいと思います。

 


以前
「七情」についてで述べたように、人間は常に、実に色々な精神刺激にさらされていますが、それに対して、正常に反応できるのは、

この心が蔵する「神」という、「形のないもの」が正常に働いていれば、の話なんです。

 

この「神」に異常が起こると、ものごとの判断が正常に出来なくなったり、精神面、肉体面において、あらゆる異常が起こってきます。

 


つまり、心は


・全身に気血を休まず供給するポンプ(カラダの働きのかなめ)


・精神的な働きの中枢(ココロの働きのかなめ)


という2点から、「生命」というものを主宰する、”君主”である、と、東洋医学では位置付けられています。

 


この認識が、東洋医学の言う、「心の臓」というものを理解する出発点になります。

 


(次回に続く)

 

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「肝」って何ですか?(その9)

2010.05.20

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これまでのお話・・・


「肝(かん)」って何ですか?(その1)

「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)
「肝」って何ですか?(その4)
「肝」って何ですか?(その5)
「肝」って何ですか?(その6)
「肝」って何ですか?(その7)
「肝」って何ですか?(その8)

 

・・・ではでは、楽しい楽しい「肝」のお話を続いてまいりましょう。

 

◆肝は将軍

 


東洋医学の古典では、

「肝は臓腑の中では”将軍”のような役目を果たすよ。」

と言っています。

 

『黄帝内経素問』霊蘭秘典論(8) 参照)

 


コレ、面白い例えだと思います。

 

将軍の役目と言えば、戦いの時に作戦を考え、自らも動き、自分の軍を勝利に導く、言わば、

”勝敗を分ける、戦のかなめ”

ですよね。

 

・・・これを人間の日常生活で考えると、「戦(いくさ)」というのは、要するに”外界からの刺激に対する対応”です。

(物理的、精神的、両面含めた、です。)

 


人間は”オギャー”と生まれたその日から、最後亡くなるその日まで、実に様々な刺激にさらされ続けます。

(まあ、生まれる前からもだけどネ。)

 


その刺激に対して、上手に、適切に対応できれば、精神的にも肉体的にも、理論上は何も異常を起こさず、快適な日々を送ることが出来ます。

 

「肝」の働きが異常を起こすと、本来耐えられるはずの些細な刺激でも、体が異常を起こしたり、緊張とリラックスのアンバランスが生じたりします。

 


清明院の患者さんでも、別に仕事で緊張し過ぎている、という自覚はないけれど、家に帰ってホッとする、あるいは休日でホッとする、そうすると、

 

急に色々な症状が出る、とおっしゃる患者さんがおられます。

(皆さんこういうこと、ないですか?)

 

こういった場合、臓腑では「肝」を中心に病んでいて、

”緊張とリラックスのアンバランス”

が起こっていることが少なくありません。

 


つまり、将軍である肝が、平素から「余分に」力み過ぎちゃってる訳です。

 

プロスポーツの試合なんかを観ているとよく分かると思いますが、やっぱり選手が力み過ぎていると、たいがい負けますよね。

 


余分な緊張、というのは、かえってパフォーマンスを下げてしまうのです。

 

これは何もスポーツの世界だけではなく、我々の社会生活においてもしかりであります。

 

そういう患者さんを治療していくと、ある程度治療が進んだ段階で、

「今まで余分な緊張をしていたことがよく分かりました・・。」

なんて言われることが多いです。

 

 

患者さんからこの言葉が出たら僕は、

「お、肝の働きが大分立ち直ってきたな。ヨシヨシ・・・。」

と理解します。

 

「ストレス社会」、「うつ病の時代」と言われる現代、肝を中心に病んでおられる患者さんは、非常に多いと思います。

 

続く

 

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「八綱」って何ですか?

2010.02.25

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前回まで、

ⅰ.「表裏」

ⅱ.「寒熱」

ⅲ.「虚実」

という、3つのテーマについて書いてきました。

 

 

そして、東洋医学ではこれらの考え方を使って、患者さんの

「どこに(病位)」

「どういう(病性)」

病があり、

 

「その勢い(病勢)」

 

はどうなのかを、まず大まかに診断するんだよ、ということを述べました。

 


この考え方(診断方法)を、

「八綱弁証(はっこうべんしょう)」

と言い、これは東洋医学的な鍼灸治療をする上で、絶対にはずせない診断法(弁証法)の一つです。

 

 

歴史的には、清代の程国彭(ていこくほう)が1732年に撰した『医学心悟』の中の「寒熱虚実表裏陰陽辦」に説かれ、

 

その考えは1742年、呉謙『医宗金鑑』にも引き継がれ、現代中医学の弁証法の基本の一つになりました。

 


なぜ「八綱」と言うのかというと、組み合わせとして、

「表か裏か」の2、

「寒か熱か」の2、

「虚か実か」の2

を掛け合わせると2の3乗となり、2x2x2=8パターンが得られます。

 


すなわち、全部は書かないけど、「表、寒、実」とか、「表、熱、実」・・・とかって組み合わせていくと、8通りの組み合わせが得られ、

 

それを「八綱(はっこう)」と呼び、大まかに病気を分類することが出来る訳です。

 

因みに、ここでしっかりと断っておきますが、上記は私の個人的な考えです。

 

 

中医学の教科書には、どの本にも八の要素を並列に並べて、陰陽、表裏、寒熱、虚実で八綱、という風に解説されていますが、個人的には上記の説に一票、という感じなんです。

 

(何の本で読んだか忘れたけど。。(^^;))

 

 

これは私の「八」に対する解釈にもかかわってきます。

 

 

奇経八脈の八、八法の八、八卦の八にしても、やはり総綱としての「二(陰陽)」があり、それの組み合わせや現れ方の違いのために他の「六」がある、

 

と考えた方が、個人的には納得できることが多いからです。

 

(まあ些末な話っちゃ話だけどね)

 

 


患者さんの病気のパターンが、この8パターンのうちのどこに収まるか、ということは、我々にとってとても大事です。

 


なぜなら、これによって「治療の大まかな方向性」が決定づけられるからです。

 


病気というのは、患者さんが訴える、表面的な「症状」にのみとらわれて、治療や診断そのものが右往左往していては、なかなか治っていきません。

 


大事なのは、その症状を出さしめている本質は何か、要は病の本体は何なのか、ということを常に意識して治療を進めることなんです。

 


そうしないと、治るものも治らないんです。

 

 

これを中医学では「治病求本」といい、2500年前の東洋医学のバイブルである『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)「・・治病必求於本.・・」とある通りです。

 

 


治療を技術論と考えると、本当に治療のうまい先生ほど、この「八綱弁証」が正確で、かつブレないんだと思います。

 


・・・ですから治療経過の中で、多少の症状の増減はあろうと、方向性が正しい訳だから、結果的には徐々に徐々に、確実に治っていく訳ですね。

 

 

ここが正確であれば、術者もフラフラすることなく、一貫性のある治療を進めることが出来るわけです。

 

まあ、ちょっとこのシリーズは難しかったかもしれないけど、とても大事な考え方なので、あえて書きました。

 

・・・ところで、清明院のHPにもこのブログにも、よく「弁証(べんしょう)」とか、「弁証論治(べんしょうろんち)」という言葉が出てきます。

 

コレ、聞き慣れませんよね?次回はそのお話。

 

 

 

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「驚」について

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七情シリーズ、ラストは「驚」についてです。

「驚」という感情は、前回の「恐」という感情とセットで書かれることが多いです。

「恐」について 参照

ダメージがいく臓は「心」と「腎」であります。

 

【参考】

燎原『基礎中医学』P118

『黄帝内経素問 経脉別論(21)』「・・有所驚恐.喘出於肺.淫氣傷心.・・」「・・驚而奪精.汗出於心.・・」

『同 挙痛論(39)』「・・驚則心無所倚.神無所歸.慮無所定.故氣亂矣.・・」

 

 

また、「心の臓」「腎の臓」以外にも、少陽、陽明、少陰、肝の熱など、あらゆる病機で、「驚」という現象が起こることを、『黄帝内経』では教えてくれております。

 


また、当然ながら「驚」「恐」の両者は違います。

「驚」・・・驚く、という感情は、多くは一過性のものです。

ある事柄があって、それに対して2年も3年も継続してずーっと驚き続けている人、見たことあります?

それとか、

「今まさに驚いているところです。」

ということを、驚いている最中に人に話したり、出来ますか?

・・・というのは、例えば物陰から急に飛び出して

「ワッ!」

と脅かされた場合、一瞬、

「うわっ。」

となって「驚」という感情変化をし、その後、腰が抜けたり、ドキドキしたりしますが、すぐに落ち着きますよね?

その直後に大体みんな、

「あ~ビックリ”した”~!!」

っていうのは、すでに過去の話ですよね?

それを考えれば分かるように、「驚」という感情変化は、それ自体が「一過性のもの」という特徴を持っています。

 

それに対して「恐」・・恐れる、という感情は、その対象に対して徐々に蓄積されたり、逃れようのない過去のトラウマ(心の傷)に起因していたりします。

ただし、じゃあ「驚」の方が体に与える影響が軽いかと言うと、そうではありません。

「一過性」であるだけに「慣れにくい」という面があり、同じパターンの事柄に何度も「驚く」という面があります。

また、最初に書いたように、「驚」「腎の臓」にも悪影響を与えつつ、「心の臓」にも悪影響を与えます。

「心」については「喜」のところで出てきました。

 ☞ 「喜」について 参照

「驚」は主に「心」の、正常な思考をつかさどる機能を障害するため、驚いた時、ドキドキし、訳のわからない行動や言動をしたりする訳ですね。

それを考えると「驚」「恐」もイヤなもんですねえ・・。(苦笑)

そしてこれら2つが、時にセットで生じて、人体の正常な状態を犯す、と東洋医学では考える訳です。

ちなみに、『黄帝内経 素問』挙痛論(39)という項には、

「驚けば気が乱れる」

という記載が出てきます。

 

逆に言うと、何らかの別の原因で「心の臓」や「腎の臓」が弱っていたり、他臓とのバランスが悪くなっていたりすれば、大したことない刺激にも「驚きやすく」なってしまい、

 

全身の気の流れが乱れやすくなってしまいます。

 

これが酷くなれば、いわゆる「精神病」と言われるような状態となっていきます。

また、デカルト科学で有名なデカルトさん(1596-1650)は、その最後の著作である『情念論』の中で、”基本6情念”なるものを定義し、

 

そのトップに「驚(驚き)」を挙げています。

この”基本6情念”というのは、デカルトさん曰く、あらゆる情念の基本となるものとし、色で言えば原色にあたるもの、と考えているようです。

それのトップに「驚」がきているのは大変興味深いですね。

・・・まあ、これ以上は難しくなるので解説はしませんが、興味ある人は読んでみて下さい。(笑)

次回は、「七情について」を、簡単にまとめてみようと思います。

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「恐」について

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続いて、「恐」について書きましょう。

「悲」「憂」についてはセットで書きましたが、「恐」「驚」については分けて書きます。

これは、後者の場合は意味的に違いが大きいからです。

「恐」というのは皆さんがよくご存じの「恐怖感」のことです。

生活、人生の様々な場面で感じることがあると思います。

これも出来れば避けたい感情ですが、僕なんかはチョイチョイ感じます。

でもこれも結局は「過不足」がなければ問題ナシです。

なので僕なんかは感じてもサッと乗り越えます。

・・・「サッ」とね(笑)

これが主に過度になった場合、体に悪影響です。

「恐」という感情は主には東洋医学の言う「腎」という臓を痛めつけます。

(西洋医学の腎臓=kidneyのことじゃないですぞ!・・・しつこい?)

 

(『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』「・・恐傷腎.・・」)

東洋医学のいう「腎」とは、泌尿器系の機能をつかさどる他に、生殖機能や、他の臓と協調して全身の温度調節をしたり、腰や足の機能の調節などを担います。

(これもまあ、ざっくり言うと、です。 詳しくは「腎」って何ですか?(その11)  参照。)

「腎」「恐」によって弱ると、主に「腎」の働きの中の生殖機能に影響し、男性ではED、女性では月経不順など、様々な症状を引き起こし、

 

酷くなれば精神障害、言語障害などが現れます。

余談ですが、小児に多いのですが、お父さんに怒られてビビって、

「おしっこチビッた。」

なんていうのも、まさに「恐」という感情によって「腎」の機能が障害された姿です。

僕の親戚は、よく怒られてはよくチビッていました。(苦笑)

彼は「腎」を鍛えなくてはなりません。

また東洋医学の聖典である『黄帝内経 素問』挙痛論(39)という項には、

「恐れれば気が下がる。」

とあり、極度の恐怖感は、上半身の気をグーッと引き下げてしまい、頭がフラフラして、貧血の時のメマイのような感覚が出ることがあります。

ドラマなんかで、あまりのショックに地べたにへたり込んだりするシーンがありますが、アレはウソや大げさではなく、実際に起こりうる現象です。

気が極端に下がり、腰から下の丈夫さと大きく関わる「腎の臓」が障害された結果、下半身に力が入らなくなり、上半身はフラフラになり、

 

へたり込んでしまう、という訳です。

また、「〇〇恐怖症」という言葉を聞くことがあると思いますが、「恐」という感情は、一過性のものというよりは、過去のトラウマによって徐々に蓄積されたものであり、

 

「驚」と比べて回復しにくい面があるようです。

また、「腎」を痛めたことによって、「恐」を感じやすくなる、という、逆パターンもあります。

グッドウィンと言う人が書いた『恐怖症の事実』という本の中に、

「・・・下半身が麻痺になった患者は、なぜか恐怖を感じやすいが、首から下が麻痺した患者は、そういう例は少ない。」

という記述があります。

グッドウィンさんはこれを、動物的な本能に起因するものとして説明しますが、東洋医学をやっている僕なんかは、「腎」が下半身の機能に大きく関与することを知っているので、

「へえ~やっぱりね~!」

・・・と思ってしまいました。

近現代の様々な学者の本を読むたび、しっかし東洋医学の数千年の知恵は、かなり真実(ものの本質)を突いてるよな~・・・と、悦に入るのは僕だけでしょうか?(苦笑)

次回は「驚」についてです。

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「悲」「憂」について

2010.02.03

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今日は「悲」「憂」についてです。

「悲しむ」「憂う」と言うと、人生において、出来ればない方がいい感情、と考えがちですが、当然、避けられないもので、皆さんこの感情を感じたことはあると思います。

そして、この2つは大体セットで生じますよね?(苦笑)

これらについても、「過不足なく」生じる分には、まったくの正常なことであり、体に害はありません。

では、これらに「過不足」があるとどうなるかと言うと、東洋医学では「肺の臓」にダメージがいく、と考えます。

(何っっっ度も言うけど、西洋医学の言う肺=lungじゃないよ!)

「肺」って何ですか?(その12) 参照

特にこの「悲」「憂」については、「不足」する場合よりも「過度」になった場合、あるいは「突然」生じた場合に、問題になることが多いです。

(まあ、なんとなく分かるっしょ??)

症状としては胸が苦しい、ため息、無力感や倦怠感などが出て、酷くなれば精神に異常をきたすこともあります。

また、東洋医学の聖典である『黄帝内経 素問』挙痛論(39)という項には、

「悲しめば気が消ゆ。」

という記載があり、極度の悲憂の感情が起こると、生命を維持する上で欠かせない「気」がなくなってしまい、全身的なパワーダウンが起こる、と説きます。

「気」ってなんですか? 参照


東洋医学の言う「肺」というのは、呼吸に関わるのはもちろん、全身の血行を調節したり、他の臓腑の働きを助けてくれます。

また、いわゆる「本能」「感覚」「反射」、さらには「皮膚の病」とも関わる、と考えます。

(ざっくり言うと、です。)

「本能」「感覚」と、脳じゃなくて「肺」が関わるなんて、面白いこと言いますよね、東洋医学は!

東洋医学の「本能」「感覚」というものに対する考え方は、まだまだ面白いことが山ほどあるんですが、ちょっと話がそれるので、

興味のある方は「肺」って何ですか?(その12)をご参照ください。(笑)

・・・次回は「恐」についてです。

 

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「思」について

2010.02.02

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七情シリーズ、続いて「思」についてです。

人間は普通、何か行動する時、常にその前にそれを、

「しようと思って」、

行動する訳ですよね?

これが思慮「深い」行動だと、人様から高く評価されたり、思慮が「浅い」行動をして、争いごとの種になったりすること、ありますよね??

しかし、東洋医学では、思慮深かったら無条件にイイ!という訳ではなく、「思慮過度」と言って、思慮しすぎてもいけないし、思慮が不足し、

 

遂げられなくても、体に悪影響だ、と考えます。

(ここでもやっぱり、問題は”過不足”、”バランスの不調和”です。)


「思」という感情は、東洋医学では五臓の中の「脾」という臓に悪影響を与え、食欲不振やお腹が張る、といった、様々な症状を出します。

(これは西洋医学の脾臓=spleenとは違いますよ!僕はこれを何度でも言います!)

 

【参考】

『素問 陰陽応象大論(5)』「・・在志爲思.・・」

『同 五運行大論萹(67)』「・・其志爲思.・・」


・・・まあ、クヨクヨ思い悩んで、食欲不振や消化不良、こういう経験、思い当たる人も多いのでは?

ちなみに東洋医学の言う「脾」というのは、いわゆる現代医学の言う、「胃腸の働き」そのものを指して言うことが多いです。

さらに、東洋医学では、短期記憶や、血流そのものや、血の生成などにも大いに関与する、と考えます。


(ざっくり言うとね。)


また、「思えば気が結す」と言って、思い悩んだ状態が長く続くと、全身の血行が悪くなり、ひどければ出血傾向(不正出血、鼻血etc..)の原因にもなります。

 

(『黄帝内経素問 挙痛論(39)』「・・思則氣結.・・」)


また、飲食の不摂生などによって、先に「脾の臓」(胃腸の働き)が弱って、結果として精神的に思い患いやすくなる、という

「逆のパターン」

もあります。

(これけっこう大事!)

現代人は、食生活のメチャクチャな人があまりにも多い気がします。

(時間といい、食べてるモノといい、です。)

現代は、昔と違って、欲望のままに簡単に何でも食べるものが手に入る、まさに飽食の時代ですので、これが、あらゆる病の原因となっているケースは非常に多いと思います。

(しかも欧米型の、添加物、着色料満載の加工食品ばっかり!)

・・・気を付けたいものですね。(苦笑)

江戸時代中期、観相学(南北相法)で有名な水野南北(1760-1834)は、

「食は運命を左右する。」

と言って、節食こそが運気を好転させる秘訣だ、という意見を述べています。

彼がもし現代にいたら、現代人の食生活を見て、どういう感想を持つでしょうか・・・。(苦笑)

・・・次回は「悲」と「憂」についてです。

 

 

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