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2009.12.26
これはですねー、僕が鍼を持った当時からずーっと、新しい患者さんに聞かれ続けている疑問であります。
この間も、何気ない会話の中で聞かれました。
これについては以前、「ある腰痛の患者さん」というタイトルでも少し述べましたので、そちらも参照してください。
これは患者さんからしてみれば、ある意味当然の疑問でもあります。
僕はこの質問が来たときはたいてい、
「もちろん打つ場合もあります。でもね、それで治るものはごく軽症のものなんです。また、患部に鍼を打つということは、弱っている(血行の悪い)ところに鍼を打つわけだから、
それだけリスク(かえって悪化させる危険性)も高いんです。」
とか、場合によってはもっとシンプルに、
「この場合は打たない方が効くと思うからです。」
という風に説明します。
しかし、これには実はもっと深イイ意味があります。
今日は僕の経験を例に挙げて説明しようと思います。
このブログ上でも、HP上でも何度も言うように、清明院では「東洋医学」に立脚した治療を行います。
治療をするにあたっては、その患者さんのどの臓腑(五臓六腑)が悪いのか、どの経絡が悪いのか、ということを考えながら診察し、最も効果が高いと思われる経穴(ツボ)を選んでいきます。
つまり、「東洋医学的な」病気の原因究明をさせていただく訳です。
その過程を経て、この臓腑が悪くて、この経絡が悪くなっている、という診断結果を得た上で、初めて治療に入りますので、「痛いところ(患部)」に鍼をするよりも、
その痛みを起こさしめている「原因」となっている臓腑や、それと関連する経絡に、経穴を使って直接アプローチした方が結果がいいことが多いし、
もし結果が良くなかったとしても、なぜ良くなかったのかを考察するのが非常にやりやすいんです。
もちろんこれは僕の経験上の話です。
しかし、もし皆さんが鍼師だとして、それまでの経験や知識から見当のつかないこと、あるいは効かないと分かっていることを、患者さんに出来ますか?
・・・その昔、とある腰痛の、なかなか治療がうまくいかない患者さんがおられまして、僕は当時、なぜだろうなぜだろう、と考えながら、
睡眠時間を削ってその患者さんの病気について調べ、細かく再問診をしながら治療していると、
「そんなことどうでもいいから、さっさと腰に鍼をしてくれよ!!」
と言われたことがあります。
このとき、本当は自分の技術不足を素直に反省するべきだなー、と今は思うのですが、当時僕は自分の必死の努力(のつもり)を
「そんなことどうでもいい」
と言われた怒りと悲しみから、
「僕はあなたの召使いではありません!そんなに自分の体のことが分かるんなら、鍼ならあげるからご自分で腰に鍼を刺したらどうですか!?」
と言ってしまったことがあります。
いわゆる「逆ギレ」ですネ。(苦笑)
・・・当然、二度とその患者さんは見えませんでした。
今にして思えば、完全に冷静さを欠いた若造の、安いプライドから来る、だっさい物言いですね。
(まあもし今、こんな後輩がいたら、その「やる気」は高く評価しますがね。)
こういうとき、本来なら(プロなら)冷静に患者さんの納得が得られるような説明がキチッと出来なければいけません。
それでも納得が得られないし、治っていかないようなら、
「自分なりに最善は尽くしましたが、残念ながら今の僕には治せません。」
と素直に謝り、自分よりも腕達者だと思う先生とか、信頼できる西洋医にでも紹介するべきなんです。
「臨床」というのはまさに真剣勝負です。
こういう時に、患者さんに言われるがままに、ハイハイと言って患部に鍼してても、それで治らなけりゃ、結局「下手くそ」の烙印を押されます。
(ちなみに、その経験もあります。)
そこで頑固に、「いや、私はこう思うのだ!」といって、東洋医学的に一生懸命考えた鍼をしても、やっぱり治らなかったら「下手くそ!」と言われます。
こちらのプロ意識(まあプライドみたいなもんか)と、患者さんの要求との最大公約数が表現できてて、しかも治った、効いた場合にのみ成立するのが我々の「臨床」です。
これはあまり言いたかないんだけど、大変、厳しい世界だと思います。
でもその中で、苦しんだ末に僕が得た、一臨床家としての結論が、
「東洋医学的な最高の鍼の世界を追求すること」
ですし、それで生活がまわり出してしまえば、メチャメチャ楽しいんです!
・・・まあちょっとカタい話になったけど、それを踏まえて、冒頭のテーマに関して平たーくいうと、
「東洋医学では、症状の原因にアプローチできる経穴は、必ずしも患部周辺にある訳ではないのです。だから結果的に患部に打たないことが多いんです。
僕の経験上、その方が効きます。」
ということです。
コレじゃあ平たすぎるかな・・・?
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2009.11.18
僕は今まで、最近芸能人なんかが世間をにぎわせている”ブログ”というものに対して、
「へっ、ブログなんてなにさ。」
「日記を不特定多数の人に見せて、それがなんだって言うのさ。」
・・・と、思っていました。
それが今では、毎日一生懸命、せっせと
「不特定多数の人に日記を見せる行為」
をしています(笑)
実際にやってみて分かったのは、ブログって、
「日記を見せる、あるいは見られる」
ではなく、
「日頃自分が考えていることや思っていることを、世に問う」
大変”お手軽なツール”なのだ、ということです。
僕がこれまで、社会に出てから自由に使える時間のほぼ全てを費やしたと言ってもいい、
「東洋医学」
というものは、残念ながらまだまだ国民に正当に認知されているとは思えません。
「アンダーグラウンド医療」
とでもいうべきか、HP内の”スタッフ紹介”のところにも書いたように、明治以降、富国強兵政策だの文明開化だのと、
西洋医学(ここでは、”軍人医学”と言ってもいいかもしれません)一辺倒でやってきた日本の医療の中で、
いつの間にか東洋医学は日蔭のジメッとした存在になってしまいました。
・・・しかしそれでも、現代でもこの医学は滅びることなくシブい光を放っています。
(僕にとって、です。)
・・・なぜでしょうか。
答えは簡単です。
「効く」からです。
なんぼ「科学性がない」とか、「迷信じみてる」とか「怪しい」とか揶揄されようが、いつの時代も効くものは効くんです。
いいものはいいんです。
患者さんからの「ニーズ」があるんです。
滅びるわけありません。
患者さんにとっては、治してくれる人が「先生」なんであって、そこに洋の東西とか、その資格を取るのにいくらかかったとか、
その人の家柄がどうとかなんて関係ありません。
いい大学出てるから、高学歴だから名医なんであれば、名医ランキングは出た大学の偏差値順になるはずです。
大昔の医者たちは、今のようにレントゲンだのMRIだのと高度な道具が何もない中で、必死に患者さんを治そうとしたことでしょう。
よーく患者さんの言葉に耳を傾け、患者さんの体を観察し、本を調べたり師匠に聞いたりしながら、血眼になって治療にあたっていたはずです。
それしかやりようがなかったでしょうし、現代よりもよっぽど余裕のない環境だったはずです。
そういう厳しい環境の中で、実に数千年の年月をかけて集積され、育まれてきたものこそが、
「東洋医学」
と呼ばれる体系なんです。
僕はこれを、人間の成す業の中でもっとも「高度」なものだと思っています。
・・・しかしそれをもってしても、治せなくて馬鹿にされたり、治療に失敗して痛い目にあっていた医者や患者は山ほどいたはずです。
「病」というのはそれほどに難しいものなんです。
だから明治の時代に、ある意味アンチテーゼとしての西洋医学が、
「医者からも、患者からも」
もてはやされた、というのも、やむをえない面があります。
1639年から200年以上も鎖国政策をとっていた日本の医者にとって、西洋医学はさぞかし目新しく、まぶしく映ったことでしょう。
・・・ま、こういうことを語りだすと止まらなくなるのでこの辺にしておきますが、
ともかく、先人たちのそういったギリギリの苦労を思うと、時代は違えど、同じ職業に就くものとして、とてもナメた真似は出来ません。
東洋医学はいいものです。
僕ごときの少ない経験からもそれは明らかです。
僕は僕の出来る範囲で、最大限、この医学の素晴らしさを現代にあふれる「お手軽なツール」を駆使して、アピールして行こう、
一人でも多くの人に知ってもらおう、と思っています。
それがこのブログを始めた一番の理由であります。
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