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2010.07.23
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これまでのお話・・・
「胃」って何ですか?
「胃」って何ですか?(その2)
「胃」って何ですか?(その3)
☆胃は「気」の工場
いよいよ、「胃の腑」の機能面での重要性について書いていこうと思います。
まず、我々人間というのは、「飲食物」と「空気」がないと、すぐに死んでしまいますよね。
外界からこの二つを取り込むことによって、生命を維持している訳です。
そして、このうちの「飲食物」による生命維持に、「胃の腑」が大きく関わる訳です。
飲食物が体内に入ると、まず初めに食道を経て、「胃の腑」に収まります。そしてここで、「脾の臓」と協調して、飲食物から「気血のもと」を取り出します。
つまり脾胃がしっかりと働く、ということが出来ないと、全身の正常で健全な気血の産生運動は、ここでいきなりつまづいてしまう訳です。
しっかりとした脾胃を作るためには手足を使った軽い運動が一番いい、というお話は以前に致しました。
☆脾は上げ、胃は下げる
飲食物が脾胃に入った後、脾が胃をグイグイと「もんで」、気血のもとを取り出したならば、その残り物(カス)はさらに下の「小腸の腑」に送られます。
では取り出した「気血のもと」はどうなるか、というと、一度「胸部」に持ち上げられる、と、東洋医学では考えます。
この「胸部」よりも上の部分のことを、東洋医学では「上焦(じょうしょう)」と呼び、胸部に存在するのは「心の臓」と「肺の臓」、頭に存在するのは「脳」ですよね。
(「脳」についても、またいずれ述べましょう。)
以前、「脾胃」の存在する、みぞおちからおへそまでの位置(スペース)のことを「中焦(ちゅうしょう)」と言いましたよね。
・・・それに対して「心と肺」が存在するのが「上焦」です。
そしてこの”上”と”中”の境界線になるのが「膈(かく)」ですね。
(膈については「心」って何ですか?(その2)参照)
ではおへそよりも下は?というと、「下焦(げしょう)」と言います。
東洋医学ではこのように、人体を「上・中・下」の横3分割にして、それぞれの関わり、それぞれにおける働きを考えます。
なんで3分割で考えるのか、という問題は、長い話になるので、これもいつか書きましょう。
(笑・・・でもここは大変興味深い部分です。)
少し話がそれましたんで、今日はこの辺で一旦切って、次回は「脾は上げ、胃は下げる」話の続きから行きましょう。
続く
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2010.07.22
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これまでのお話・・・
☆胃のかたち
ここまでのお話で、「胃」は人の生命においてとても重要なもので、お腹に位置している、ということが分かりました。
そこで今日は「胃の腑」のかたちを見ていきます。
↓↓これが一応、東洋医学が「胃の腑」と言っているものの図です。
これを見ますと、現代医学の教科書に出てくる「胃=stomach」と非常によく似ていますね。
・・・まあこれが、「脾の臓」と密着した状態で、前回言うように「中焦(ちゅうしょう)」にデ~ンと存在している、と東洋医学は考えた訳です。
↓↓ちなみに既出ですが、「脾胃」のセットの写真
まあこのように、東洋医学の「五臓六腑の図」というのは、たまに写実的だったり、あるいは何を描いたものか一見よく分からないものがあったりと、
「現代西洋医学の観点、常識のみから」
分析、理解しようとすると、ワケが分からなくなるものが多いです。
そりゃそうです。
東洋医学の方が全然前からあるんだから。
今の価値観で、昔のものを強引に理解しようとすると、まあ大体において齟齬が出るでしょうね。
・・・なので、東洋医学の言っていることを理解しようと思ったら、頭をちょっと切り替える必要があります。
視点の基準をちょっと変える、とでもいうかね。
これがすぐにパッと出来る人にとっては、東洋医学が教えてくれることというのは、いたって簡単です。
これ、誰でも普通は出来ます。
出来る筈です。
だってもしそれが出来なかったら、
「君はいつもどうやって自分と違う、色んな価値観、考え方の人たちとお話しをしてるの?」
となりますよね。(笑)
よく、東洋医学は難解だ、とか、よく分からん、とか盛んに言いたがる人って、僕から見ると、ただ単に理解する気がないか、理解したくないだけなんだと思います。
いわゆる「食わず嫌い」ってやつではないでしょうか。
それならそうで、そのまま食わないでほっといてくれりゃあ別に何もないんだけど、そういう人に限ってよそで東洋医学のことを云々したがる傾向があるように思います。(苦笑)
困ったもんです・・・。
やってて思うけど、東洋医学は別に難解じゃないです。むしろ極めてシンプルです。
でもそれだけに「深遠」で、ある意味「”完璧”に限りなく近い、完成度の高い医学」とも思います。
次回に続く
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2010.07.19
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・・・さあ、そろそろ再開しましょう。
これからお話しする「胃の腑」についてのお話は、とても重要です。
東洋医学では、生命を考える上で、この「胃」という腑の働きを、「脾」とセットで大変重要視しています。
何度も言いますが、東洋医学のいう「胃の腑」というものは、西洋医学の言う「胃=stomach」とは違います。混同なきよう。
西洋医学では、「死」を心肺停止と瞳孔散大からの全細胞の活動の停止、と考えます。
(もちろん死の定義については法律的、生物学的など、色々な解釈や議論があります。)
そしてそこに至るプロセスにおいて特に重要視される臓器は「心臓=heart」であったり「脳=brain」ですよね。
語弊があるかもしれませんが、東洋医学では、そうは考えません。
最後まで、五臓六腑の正常な働きに裏打ちされた、「陰陽のバランス」を重要視します。
「陰陽(いんよう)」って何ですか?
「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」って何ですか? 参照
そしてとりわけ、その中でも重要なのが「脾胃」であります。
・・・昔、とあるパーキンソン病(脳の病気で、体が震えたり、筋肉がこわばって、徐々にあらゆる運動が出来なくなってしまう病気)の患者さんがいました。
その方は80過ぎの男性で、奥様と二人暮らし。
昔から病院が嫌いな方でしたが、鍼をすると震えが止まり、ご飯がおいしく食べられる、ということで、信頼していただき、亡くなられる寸前まで診させていただいたことがありました。
その方は最後、徐々に徐々に筋肉が硬直していき、起き上がることすら困難、だんだんと食べ物を噛んだり飲み込んだりすることもままならない状況になっていきました。
その時、病院の医師は、「胃ろう(胃に管を通し、その管から胃に直接栄養を入れる方法)」をご本人と奥さまにすすめてきました。
それをすれば、奥様の介護の負担が減るし、ご本人も長く生きられるし、誤嚥(ごえん:誤って飲み込んだものが気道に入ること)して肺炎を起こす危険性もないと。
しかしご本人は、断固拒否。
「そんなことまでして生きてるんなら、死んだ方がマシだ!俺がもし喋れなくなっても、そんなこと絶対にするなよ!」
と、奥様におっしゃっていました。
その後、いよいよ喋ることすら難しくなり、流動食をどうにか口にするようになった頃、奥様が病院の先生に、
「胃ろうにして下さい。」
と、”ご本人に内緒で”願い出ました。
無理もないことで、介護の負担があまりにもきつかったんだと思います。
しかし、「検査だから」とご主人をだまして病院に連れていき、胃ろうを開けた翌日に、ご主人は他界されました。
・・・何とも言えない、症例でした。
東洋医学が重要視するのは、あくまでも他の4臓5腑とのバランスの取れた、「脾胃」であり、それは機械的な消化吸収機関、としての「内臓の一つ」のことではありません。
この患者さんの場合も、治療していく上で僕の念頭にあったのは、最終的には「脾胃」の機能をどこまで保てるか、繋いでいけるか、ということでした。
その場合、常に他の臓腑や全身(精神的な安寧も含む)とのバランスを考えていなくてはなりません。
すべての生物が避けることのできない「死」というものに対して、一つの自然現象として、相対的に寛容に受け止めるか、たとえ姑息的であっても、
方法があるのにやらないということを医療の敗北と考えて、いかなる方法であっても、延命の道をとるか。
・・・東洋医学の「胃」と西洋医学の「胃」は違うんです。
次回に続く
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2010.06.23
今日、患者さんからこんな質問をいただきました。
その内容が、今つづっている「脾って何ですか?」にもちょっと関わるので、紹介します。
・・・その患者さんは、お酒をよく飲まれる、坐骨神経痛の男性です。
初診時から、経過は良好なのですが、たまにお酒を飲み過ぎると、症状が出てくることがあります。
今日も、前日にお酒を飲み過ぎたことによって、若干症状が出た、とおっしゃいました。
しかし、いつもの、飲み過ぎた時の症状とは若干違います。
体表観察してみると、今日の場合は「酒のせい」というよりも、
お酒というより、全体的に水分全般を取り過ぎてること+体の外からの冷え
によって症状が出ている、と判断しました。
そこで患者さんに再度確認してみると、
「自分では飲み過ぎたような印象があったんだけど、よく思い返してみると、量的にはいつもと変わらないか、少し少ないぐらいだった。」
と言いました。また、
「昨日仕事中にエアコンがきつすぎて寒かった。」
ともおっしゃいました。
・・・で、
”あー、ヤッパリネ”
ということで、治療が終わり、治療後に、
竹「お酒も含めて、少しお水の取り過ぎに注意して下さいね~。」
と声をかけると、
患「先生、体に余分なお水が多い時、お酒の量は変えずに、他の水分の量”だけ”減らしたら、それでも症状軽くなるの?」
と聞かれました。
僕は即答で、
竹「なります。この場合はね。酒がたくさん飲みたいんなら、酒以外の水分を極端に減らせば、ある程度の量飲んでも症状が悪化しにくいですよ。」
患「なるほど。へへへ・・・。(笑)」
竹「ただ、”今日みたいな場合は”ですよ!!いつもそうとは限らんよ!」
・・・という会話でした。専門家の先生方なら、この会話の時点で大体どういう患者さんかお分かりになるかと思いますが(笑)、今日はこの会話から、
一つの問題を取り出して解説してみようと思います。
☆お酒とその他の水分の違い
清明院で使用している(一社)北辰会専用カルテの問診事項には、飲酒の頻度と一回量を記載してもらう欄があります。
ここに問題がありそうな患者さんであれば、そこからさらにお酒の種類は何か、ペースはどうか、酔うとどういう状態になるかなどなど、
さらに突っ込んで問診していきます。
・・・なぜこのように、”お酒”を医学的に特別視するんでしょうか。
酒のことを東洋医学では、
”大辛大熱(だいしんたいねつ)”
と言って、適量であれば、大いに気血を巡らせる作用があるが、過度になれば体内に余分な熱を生じる飲み物、と考えています。
また発泡酒(炭酸が入ったお酒)の場合は、
上記の作用+気血を体の上(つまり頭部、胸部)に持ち上げる作用がある、
と考えます。
よく、「酒は百薬の長」と言われますが、これはお酒が持つ”気血の巡りをよくする”作用のことを指して言っているのであって、過度に飲んで、
結果的に体内に”余分な熱”や”余分な水分”を生じることを指して言っているのではありません。
よく西洋医学で、酒は利尿作用があり、呑んだ量よりも出ていく量の方が多いから、結果的に脱水状態になり、水分補給にはならない、と説かれますが、
酒を呑んでいる人をよく観察していると、かえってトイレに行かなくなる人もいます。
そういう人の場合は浮腫みます。
このように、「どういう人が」「どういう酒を」「どの程度の量」呑んだかによって、その後起こる現象は一様でなく、これをよくよく聴取して、
酒がその患者さんに何をもたらしているか、個別に考えるべきです。
(因みにあの、”チェイサー”というのはとてもいい方法だと思います。)
こうしたことから、日頃よくお酒を飲む、という初診の患者さんには、量、頻度、種類、ペース等々、詳しく聞いておくことが、「正しい」東洋医学的な診断をする上ではとても大事になります。
冒頭の患者さんも、こうした「お酒」というものの特徴から考えると、ちょっと考えにくい症状、所見を呈していたので、冒頭のようなやり取りになった訳です。
お酒以外の嗜好品では「カフェイン類」というのも見逃せませんが、それはまた今度語ることにします。(笑)
まあ、いずれにしても最近のようなジメジメした時期を快適に過ごそうと思ったら、酒だろうがカフェインだろうがジュースだろうが、
お茶やお水であっても、過度に飲まないことです!
「脾」は湿気(余分なお水)を嫌いますのでネ・・・。
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2010.06.04
これまでのお話・・・
「心」って何ですか?(その1)
「心」って何ですか?(その2)
「心」って何ですか?(その3)
「心」って何ですか?(その4)
「心」って何ですか?(その5)
だんだんと、ネタが増えてまいりましたね・・・。
イイ感じです。(笑)
ただまあ、このブログは専門家に向けたものではないので、最初から全部読まなくても、1話1話、
「誰でもが」
分かるように配慮したものにしよう、と思っています。
今日は東洋医学のいう「心」を理解する上で欠かせない、「神(しん)」というものの関わりについて述べます。
東洋医学には「五神(ごしん)」という考え方があります。
人間の精神活動(考えたり、覚えたり、判断したり・・・)は、この「五神」というものの働きによってなされている、と考えられています。
そしてこの「五神」というものは、読んで字のごとく”5つ”あり、それぞれが「五臓」と深く関わる、とされています。
「五神」と「五臓」の関わりを書きますと・・・
・肝・・・魂(こん)
・心・・・神(しん)
・脾・・・意(い)
・肺・・・魄(はく)
・腎・・・志(し)
となります。
この中の、「肝」と「魂」の関わりについては、以前「肝」って何ですか?(その4)にて述べました。
脾と意、肺と魄、腎と志についても、いずれ述べようと思っていますが、今日はとりあえず「心と神」について述べましょう。
この「五神」というものには、それぞれに役割があります。
例えば、肝の魂には無意識をつかさどる働きがあったり、それ以外の意や魄や志にも、それぞれ異なった働きがあります。
その中で、この「心神」というものは特別、別格です。
なぜならば、他の四神の働きを統合し、まとめる、という、”部分的”ではなく、”全体包括的な”働きを持っているからであります。
つまり、人間が持つあらゆる感覚、記憶、本能、理性、思考、といった、精神活動の全てを、「心」が蔵する「神」が、最終的には統括している、という風に、東洋医学では考えます。
この辺の詳しい話はたにぐち書店『中医心理学』に非常によくまとまっております。
(しかしこれは専門書ですので、一般の方は読んでもチンプンカンプンかもしれません。)
実は僕は昔からこの辺の理論が好きでして、というか興味を持ってまして、色々な先輩たちに質問したり、本を読んだりして、徐々に自分なりに勉強を進めていました。
日々患者さんに接するたび、
「一体、人間のココロの仕組みってどうなっているんだろう?」
「この人は何を求めているんだろう?」
「どうすればこの人は癒されるんだろうか?」
とかっていう問題は、僕が鍼を持って以来、ずーっと頭にありました。
これを「医学理論的に考える」、一つのヒントがこの『中医心理学』でありました。
・・・まあそれはともかく、「心」という臓が蔵するこの「神」というものは、「魂」の説明の時と同じ感じになりますが、「気」のある側面に名前を付けたもの、と考えたらいいと思います。
つまり、平た~く、はしょりまくって、強引に、言うと(笑)、「気」のように全身を周流しつつ、”主に”「精神活動」のバランス調節をしているもの、と言えます。
じゃあ肝の臓が蔵する「魂」との違いは何か、というと、「魂」が無意識の精神活動に関与するのに対し、「神」は意識下の精神活動に”主に”関与します。
要は、仕事でも家庭でも、それ以外の人間関係も、我々の振る舞いは全て、各人の顕在意識下でなされていて、潜在意識が表面化することは通常ない訳ですが、
両者は表裏一体の関係性を持っていて、相互に影響しあう訳です。
これを調整、統括し、顕在意識を清明、正常たらしめているものが「心神」なのであります。
なので様々な要因でコレが不安定になると、実に多様な症状を呈します。
いわゆる西洋医学的な、”精神病”と言われるようなものも、東洋医学では「心神の病」の範疇に入ってくることが多いです。
あるいは原因不明の激痛を伴う病なども、この範疇で考えると説明がつくことが多いです。
なので臨床的には、この考え方を応用すると、非常に強力な鎮痛作用を鍼で表現することが出来たりします。
(・・・と言ってもまあ、そんな簡単な技術ではないけどネ。)
かなり簡単に述べましたが、東洋医学の言う「心の臓」が蔵する「神」とは、以上のような役割を持ち、人間の健康には欠かすことのできない役目を担っている、ということです。
次回に続く
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2010.05.31
これまでのお話・・・
「心」って何ですか?(その1)
「心」って何ですか?(その2)
「心」って何ですか?(その3)
・・・まだまだ続きますよ~!
☆心は舌と関係が深い
東洋医学では、
「舌診(ぜっしん)」
と言って、舌の色や形、動き具合や舌に生えている苔の状態などをよく観察することで、正確な診断の材料にします。
これは我々にとって非常に重要で有益な情報を与えてくれる診察法であり、毎回の診療において、欠かすことのできないものであります。
そしてこの”舌”そのものには、五臓では心、それから脾が大きく関与します。
脾についてはまた今度説明しようと思いますが、心という臓は、(その1)で述べたように、ものを覚えたり、考えたり、判断したりする、
精神的な働きの中枢である、と述べました。
また同時に、心は触覚や味覚、嗅覚など、あらゆる感覚を感知する働きもある、とされています。
(西洋医学では、そういった働きの中心は”脳”である、と説明しますが、東洋医学では”心”と説明します。)
舌と言えば、当然ながら、味覚を感知する、重要な感覚器ですよね?
また、上手にしゃべる時、ものを食べる時に大活躍する部位でもあります。
これらの働きには心の臓が大きく関与することから、
「舌は心の苗(びょう)たり」
と言われ、心に異常が起こると、うまくしゃべれなくなったり、味が分からくなったり、舌そのものがピリピリと痛んだりします。
(唐容川『血証論』吐血の項 参照)
こういった症状のある時、鍼でもって「心」を調整してやると、症状が取れることが多いのです。
・・・ところで、
「西洋医学が言う「脳」の働きを「心」に置き換えるなんて、随分ブッ飛んだ発想だナー・・・。」
と思う人も多いんじゃないかと思います。
そこで一つ、有名な話を紹介します。
亀節子さんという人が書いた、
『意識の闇、無意識の光』
という本の中に出てくる話なんですが、
(この本は、かのユングを日本に紹介した第一人者である、河合隼雄先生も推薦されている本です。興味のある方はどうぞ。)
心臓と肺を移植したとある女性患者が、それ以来、嗜好がすっかり変わってしまったというお話で、
術後彼女は、フライドチキン、ピーマン、冷たいビールなどを非常に欲しがるようになり、さらに、ブロンドの女性との情事を期待している自分を発見した。
それからしばらくして、自分に接吻したティムという名の青年を、深い息とともに体内に呑みこんでしまうという、わけの分からぬ夢を見た。
その後、新聞の死亡記事から、自分のドナーが、夢と同じティムという名前だったことを知って、彼の両親に会いに行った彼女は、ようやく彼女の身の上に起きた変化の原因らしい事実にいきついた。
オートバイに乗っていて事故死したティムは、ピーマンやフライドチキンや冷たいビール、それにブロンドの女性が好きな18歳の青年だったのだ。
この驚くべき体験から、心臓の提供者と患者との関係を調べていくと、たくさんの人が、この患者とよく似た体験をしていることが判明した。
・・・というお話です。
「心は神を蔵し、精神活動の中枢となる」と、2500年前にさらりと述べている東洋医学、恐るべし・・。
(次回に続く)
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2010.05.28
前回のお話・・・
今日は、心の形態について考えてみたいと思います。
☆心は他の4臓と直接つながる
↑上の図が、東洋医学的な「心の臓」の図であります。
(中国明代、張景岳『類経図翼』より)
これを見ますと、心から直接4本の管が伸びていることが分かります。
それぞれの管は肝、脾、肺、腎という他の4つの臓に直接繋がっていることを示します。
この中で、「肺」とのつながりだけは他と比べて、少し違います。
この図に、ちょっと難しいけど、
「肺系即肺管」
という言葉が書いてありますね?
・・・まあ、ここは諸説あるようなんですが、要は心と肺とは、気管(空気の通り道)を通じて連結しており、
それ以外の3つの臓よりもさらに機能的に密接なつながりを持つ、と解釈すればよい、と思います。
「心の臓」は、それ以外の四臓のうち、「肺の臓」との繋がりが密接かつ特別です。
「肺の臓」が”八葉蓮華”と言われ、蓮の花の姿で描かれるのに対して、「心の臓」は”蓮の蕾(つぼみ)”として描かれます。
このことは、東洋医学の蔵象観自体が、仏教の影響を受けていることや、心と肺の同源性、同根性を示している示唆だと思います。
(私見です。)
位置については、肺の下で膈(かく)の上、ちょうどみぞおちの少し上あたりにあるとされ、これは西洋医学の言う「心臓」の位置とほぼ一致します。
・・・しかしここで、東洋医学の言う「膈(かく)」というものは、西洋医学の言う、「横隔膜(おうかくまく)」とはまた違います。
古代の中国でも、人体を解剖する、という行為は当然ながら行われていたようです。
(『黄帝内経霊枢』経水篇(12)にすでに記載あり)
ですから、実際に人体を解剖してみて、西洋医学の言う「横隔膜」を目で見て、「膈」としたのでしょう。
しかし、そこから先は違います。
西洋医学の解剖学の本を見ると、「横隔膜」は筋肉であり、人間の呼吸運動に関わる、”呼吸筋”の一つであり云々・・・と出てきます。
つまり呼吸に関わる重要な筋肉である、という認識です。
これに対して東洋医学では、そうではありません。
まず、人体というものを働きの上から、横に三分割して考えています。
(すなわち、「膈」から上(上焦)、膈からおへそまで(中焦)、おへそから下(下焦)、という風に、です。)
そしてこの「膈」というものを、「膈」から下の、飲食物が消化吸収される、ある意味では汚れた世界(中焦、下焦)と、清らかな空気を吸い込む、
膈から上の綺麗な世界(上焦)とを分ける、大事な膜だ、と考えました。
(中焦と下焦の境界線には、膈のような物理的な境界はありません。)
「膈」があるから、その上に存在する「心」と「肺」は特に綺麗でいられる、大便や小便のもととなるような、飲食物が消化吸収された”残りカスの気”が、
「膈」から上の世界には入ってこないのだ、と考えました。
面白いですねえ。。。
こういう発想、僕は大好きです!(笑)
まあいつも言うように、東洋医学は「医学」ですから、”面白い”だけでは終わりません。
この考え方に基づいて、鍼灸なり漢方なり、何か治療をしたら、キチッと効果があがる、言った通りになる!
患者さん喜ぶ!
だから、寝る間も惜しんでやる価値がある、という訳です。
・・・次回に続く
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2010.03.12
昨日、珍しく親戚からメールが入りました。
何でも、身内が「小麦アレルギー」になった(判明した)とのこと。
・・・以前から、その親戚は何となくアレルギー体質っぽい印象はあり、注意するようにと伝えてあったんですが、
「はやっ!」
と思いました。
もちろん即座に、
「鍼するべき!」
とメールしましたが、今ホントに多いですね、アレルギー。
これはねー、花粉症についての時も書いたけども、内的、外的のありとあらゆる要因が複雑に絡んでいるんでしょう。
今回のケースで考えれば、どうやら小麦が外的要因、ということはおぼろげに分かりますが、内的要因について、となると現代医学的には不明な点が多いようです。
・・・そうなると根本治療(アレルギー反応自体を全く起こさないようにする)は不可能、というか不明、となり、治療は小麦と、小麦の入った食品を摂取しないことと、
もし湿疹等の症状が出てしまった場合は軟膏等で対症療法的に抑えよう、それしかない、となる訳です。
この、患者さんにとっては大変厳しい場面で、東洋医学がパワーを発揮します。
同じ小麦アレルギーでも、よくよく観察していくと、必ずその患者さん独特の「特徴」が出てきます。
まず、最近発症したということであれば、「春先」に初発、ということが分かります。
その時点で、こないだ花粉症の時に述べたように、「肝の臓」「胆の腑」「木気(風邪)の関与」の関与を疑います。
また、食餌性(しょくじせい)のアレルギーというのは、花粉などと違って、食べるものに対する反応ですから、
「肝」以外にも「脾の臓」や「胃の腑」の関与もありうるかもしれません。
そして、湿疹が出た、ということになれば、それがじゅくじゅくしたものか、カサカサしたものか、赤みはどうか、熱は持っていたか、出た場所はどこか、
などを詳しく聞いて、調べていくことにより、徐々に「体の内面」の「どこがどう」おかしくなっているか、という問題が明らかになってきます。
コレを整えていくことによって、結果的に「小麦」という食品に「普通に」、「人並みに」対応できる状態に持っていければいい訳です。
「エエ!?小麦アレルギーって、肝臓や胃が悪いんですか!?」
と思った方が、もしいたらいけませんので、これは何度も何度も繰り返し、しつこくしつこく述べていますが、東洋医学の言う内臓学と、西洋医学の言う内臓学には違いがあり、
当然、東洋医学の言う「肝の臓」と、西洋医学の言う「肝臓=Liver」は違います。
五臓六腑ってなんですか? 参照
・・・まあ要するに、人間は物質代謝が基本な訳で、「動く」と「寝る」のバランスが重要であるのと同じように、「食べる」と「出す」のバランス、
つまり、「同化」と「異化」のバランスがキチッと取れていれば、大概の病気は治っていくんだと思います。
現代病と言われる「アレルギー疾患」、今後も注視していきたいと思います。
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2010.03.02
再び、「患者さんの声」をいただきましたので、載せさせていただきます。
20代 女性
症状:頭痛、肩こり、冷え症、手に汗をかく、お腹が張る
私は、子供の頃から頭痛持ちで、1日に2~3回は鎮痛薬を飲みながら生活していました。
これまでも頭痛に良いということは色々とやってきたのですが、あまり効果を実感することが出来ず、
「元々の体質だからしょうがない、頭痛薬は効いているんだから、ごまかしながら付き合っていこう。」
と思っていました。
そんな折に偶然清明院を知ったことがきっかけで、HPを拝見し、院長先生のアツいブログを拝読し、
「もしかしたらこの先生なら治して下さるのでは・・・。」
と思うところがあり、思わず予約を入れました。
丹念な問診と触診の末に手首に鍼を1本。
目で確認しないとどこに打たれているのか分からないくらいの感覚です。
鍼治療を受けるのは初めてでしたが、痛い、怖いといったイメージからは程遠く、むしろ心地いいとさえ感じられたことが驚きでした。
私の場合は治療翌日から劇的に治療の効果を感じました。
頭痛薬を飲まずに過ごせた何年かぶりの1日でしたので、ちょっとその感激は忘れられません。
それから時々は薬を飲む日もありますが、それでも1日1回で、あとはスッキリ治まっています。
頭痛がないことの方が私にとっては非日常といった感じですので、今も毎日嬉しく、新鮮な感動を感じています。
まだ初診から1カ月ですが、頭痛以外の体調も治療に通うたびに段々良くなっていることが実感でき、竹下先生に診ていただいて本当に良かったと思っています。
20年来の頭痛も治ってしまったすごい鍼です。
私のように慢性的な症状に悩んでおられる方も、諦めずに相談してみて下さい。お勧めです。
【清明院からのコメント】
この方のご職業は薬剤師であります。
この方のように、薬剤師でありながら、薬に頼って生活することに疑問を感じる方は少なくありません。(苦笑)
現在、長年の頭痛を、「心肝火旺(しんかんかおう)>湿困脾土(しつこんひど)」と考え、治療を進めております。
経過は順調であり、このまま上手くいけば、幼少の頃から手放せなかった痛み止めから、卒業できるかもしれません。
近年は医療費高騰で、保険の患者負担割合を増やすとか、診療報酬を引き下げるとか、色々と問題になっておりますが、
東洋医学を効果的に使うことで、こういった社会問題にも寄与出来るのではないかと、清明院では考えております。
またこの方のように、清明院には医師、看護師その他、医療従事者の患者さんが多数おられますが、同じ業種の方から支持していただけるということは、
僕にとって大変嬉しいことであります。
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2010.02.02
七情シリーズ、続いて「思」についてです。
人間は普通、何か行動する時、常にその前にそれを、
「しようと思って」、
行動する訳ですよね?
これが思慮「深い」行動だと、人様から高く評価されたり、思慮が「浅い」行動をして、争いごとの種になったりすること、ありますよね??
しかし、東洋医学では、思慮深かったら無条件にイイ!という訳ではなく、「思慮過度」と言って、思慮しすぎてもいけないし、思慮が不足し、
遂げられなくても、体に悪影響だ、と考えます。
(ここでもやっぱり、問題は”過不足”、”バランスの不調和”です。)
「思」という感情は、東洋医学では五臓の中の「脾」という臓に悪影響を与え、食欲不振やお腹が張る、といった、様々な症状を出します。
(これは西洋医学の脾臓=spleenとは違いますよ!僕はこれを何度でも言います!)
【参考】
『素問 陰陽応象大論(5)』「・・在志爲思.・・」
『同 五運行大論萹(67)』「・・其志爲思.・・」
・・・まあ、クヨクヨ思い悩んで、食欲不振や消化不良、こういう経験、思い当たる人も多いのでは?
ちなみに東洋医学の言う「脾」というのは、いわゆる現代医学の言う、「胃腸の働き」そのものを指して言うことが多いです。
さらに、東洋医学では、短期記憶や、血流そのものや、血の生成などにも大いに関与する、と考えます。
(ざっくり言うとね。)
また、「思えば気が結す」と言って、思い悩んだ状態が長く続くと、全身の血行が悪くなり、ひどければ出血傾向(不正出血、鼻血etc..)の原因にもなります。
(『黄帝内経素問 挙痛論(39)』「・・思則氣結.・・」)
また、飲食の不摂生などによって、先に「脾の臓」(胃腸の働き)が弱って、結果として精神的に思い患いやすくなる、という
「逆のパターン」
もあります。
(これけっこう大事!)
現代人は、食生活のメチャクチャな人があまりにも多い気がします。
(時間といい、食べてるモノといい、です。)
現代は、昔と違って、欲望のままに簡単に何でも食べるものが手に入る、まさに飽食の時代ですので、これが、あらゆる病の原因となっているケースは非常に多いと思います。
(しかも欧米型の、添加物、着色料満載の加工食品ばっかり!)
・・・気を付けたいものですね。(苦笑)
江戸時代中期、観相学(南北相法)で有名な水野南北(1760-1834)は、
「食は運命を左右する。」
と言って、節食こそが運気を好転させる秘訣だ、という意見を述べています。
彼がもし現代にいたら、現代人の食生活を見て、どういう感想を持つでしょうか・・・。(苦笑)
・・・次回は「悲」と「憂」についてです。
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