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これまでのお話・・・
「肺」って何ですか?(その1)
「肺」って何ですか?(その2)
「肺」って何ですか?(その3)
「肺」って何ですか?(その4)
「肺」って何ですか?(その5)
「肺」って何ですか?(その6)
「肺」って何ですか?(その7)
「肺」って何ですか?(その8)
☆「肺」と「本能・感覚」と「魄(はく)」
・・・以前、「肝(かん)」は「魂(こん)」を蔵する、というお話をしました。
・・・また以前、「心」は「神(しん)」を蔵する、という話もしました。
・・・そして以前、「脾」は「意(い)」を蔵する、という話もしました。
・・・「肺」というのも、これらと同じように、五臓の一つですから、精神作用や感覚に関係のある「魄(はく)」というものを蔵しています。
この辺の話って、とっても難しいけど、実はとっても面白い、そしてとっても重要な部分なんです。
・・・でもまあ、なるたけ簡単に述べます。
この「魄」というものも、まあ言わば、全身を流れる「気」のようなものであります。
そしてその役割は、
1.人間の本能的な欲求に関わる
2.感覚機能(味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚、etc..)
主にこの2つです。
1.については、そもそも人間に「本能」なんてあるんだろうか、という議論もあるようです。
(事実、「人間には本能などない!」とする学問もあるようです。)
しかし間違いなく、「欲求」は存在しますよね?
・・・なのでこのような書き方にしました。
つまり、「〇〇したい!」という欲求の惹起には、この肺魄の活動が大きく関わる、ということです。
2.について、東洋医学では、( )内のあらゆる感覚にて得られた情報を、「肺魄(はいはく)」が「心神(しんしん)」に伝えることによって”認知”する、と、考えています。
(笑・・・難しい?)
まあ要するに、生命を主宰し、精神活動の中枢である、「君主の心」を、すぐそばでサポートする側近(宰相)が「肺」であり、その「君主の心」に蔵され、
人間の精神活動を統合する「神」というものに、あらゆる情報を正確に伝達するのが「肺魄」だ、という関係です。
・・・まあ、僕としては、最低限皆様に分かっていただきたいのは、東洋医学ではこのように、
”人間の感情も感覚も、消化吸収排泄など、あらゆる生理機能も、ぜ~んぶ「気」の働きによるものです!!”
と言ってしまえば、そりゃあ簡単なんだけど、それじゃザックリし過ぎててよく分からんので、東洋医学では、こういう細かいメカニズムについても当然いちいち考えているし、
そしてそれが、実際に起こるあらゆる現象を説明しうるものかどうか。治療を行う際に使えるものかどうかについても、ひっじょ~に細かく細かく考え尽くされているよ、
ということが言いたいのです。
・・・ですから、東洋医学はきちんと体系だった「医学」なんです。
荒唐無稽ではございません。
お間違いなきよう。(笑)
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2010.08.26
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これまでのお話・・・
「肺」って何ですか?(その1)
「肺」って何ですか?(その2)
どんどんいきましょう。
☆肺のカタチ
東洋医学の言う「肺の臓」の形は、実はとても興味深いものです。
↑↑中国清代、王宏翰『医学原始』(1692)より
これまた、一見、
「は?何すかコレ?」
ですよね。(笑)
でも、東洋医学がこの形で「肺」を表記したのには、当然大きな意味があります。
この形は、実は他の臓腑で言うと「肝」にそっくりです。
「肝」の時は、「肝」が「血(けつ)」を蓄える働きが、植物の葉っぱが養分を蓄える働きに似ていることから、葉っぱの形をしていると考えた、と説明しました。
では、「肺」は何を蓄えるんでしょう。
答えは「気」です。
「肺」は、そのすぐ下の、中焦に存在する「脾胃」が飲食物から取り出した「気血のもと」が、脾の働きによって上焦に持ち上げられたものと、
「肺」自身が天空から吸い込んできた「清らかな気」とをドッキングさせて、全身に行きわたらせる、という重要な働きを持っています。
カテゴリ「脾胃について」参照
このような働きを指して、
「肺は気をつかさどる」
なんて言われたりします。コレについては、重要なので後ほどもう少し詳しく述べようと思います。
そして、前回書いたように、「肺」は全身の清と濁の「気」を、絶えず交換しています。
これは植物の葉っぱの光合成やガス交換によく似ていますね?
古代の中国人は、実際に解剖してみた場合の、”写実的な”内臓の様子をそのまま書き残すのではなく、その臓腑が持つ「機能」に着眼、重視して、臓腑の形態を描き示しました。
個人的には、あるものをそのまま書くよりも、その方が賢い(というかシャレてる)気がします。
(まあそこは、好みの問題だけどネ。)
さて、この写真の上の部分に、「氣管」がくっついているのが分かるかと思いますが、そこに、
「肺管九節(はいかんきゅうせつ)」
と書いてあることに気付くと思います。
また、
「六葉 両耳」
コレにも目がいきますよね?これらにも当然、深い意味があります。
「九節」に関しては、氣管の節目の間の数であり、「六葉両耳」というのは、「肺」を構成する葉っぱの数が全部で「八枚」ある、ということを教えています。
以前、「東洋医学」と「数学」に書いたように、この医学に数字が出てきた時には、ほぼ間違いなく、特別な意味があります。
ですからこの「九」と「八」にも、当然意味が隠されている訳です。
さて、その説明は長くなりそうなので次回、お楽しみに♪
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2010.08.25
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これまでのお話・・・
・・・今日、患者さんから、
「五臓六腑の話し、分かりやすいです!楽しみにしてますので、どんどん書いて下さい!」
と言われ、すっかり上機嫌なので、続きを書きます。(笑)
☆肺の位置
これは、前回も書きましたが「胸部」です。
東洋医学では、人間の体の「膈(かく)」から上の部分のことを「上焦(じょうしょう)」と呼びますが、
(「膈」についてはこちら参照)
「肺の臓」はまさしくこの”上焦”の「胸部」に位置します。
そして、胸部にはもう一つ、重要な臓である「心」があります。
ではこの「心」と「肺」との位置関係はどうかと言うと、
「肺」の方が「心」よりも上にあり、ちょうど「心」に乗っかったような位置関係
にあります。
そして、以前書いたように、「心」と「肺」は、それ以外の3つの臓と比較すると、相対的に結びつきが強い、と考えられています。
これは東洋医学では、「氣管(きかん)」という、空気の通り道で、心と肺が直接つながっているためだ、としています。
(形態的には、ですよ。機能の話は追々しましょう。)
☆「肺」と「呼吸」
東洋医学の言う「肺」は、ちょうど「ふいご」のような役割を果たす、と考えています。
要するに空気を吸ったり出したりする訳です。
(簡単ネ。)
ここで大事なのは、
天空の清らかな空気(清気)を取り入れ(吸)、
体内の汚れた濁気(だっき)を排出する(呼)、
という風に、単なる出し入れではなく、「気の清濁入れ替え作業」を行っている、という考え方です。
東京なんかにいますと、全然「天空の清らかな空気」という感じがしませんが、生活できる、ということは、これでもまだ何とか「清らか」なようです。(苦笑)
この「清らかな空気」というものが、体内を巡る最も重要な「気」というものの原料の一つになります。
「気」の原料は他に何があるか、と言うと、「飲食物」です。
カテゴリ「脾胃」について 参照
人間が外の世界から取り入れているものは「空気」と「飲食物」だけです。
基本的には、それ以外のものは取り入れることは出来ません。
なので、結局はこの2つから「気」を作り出し、不要なものは大小便と汗などによって体外に排出することで、生命を維持している訳です。
逆に言うと、それしか出来ないんです。
人間ていうのは。
昔っから。
・・・東洋医学を「古い」という人がいるが、僕はそうは思いません。
人間自体の基本が変わってないんだから、東洋医学の基本原理だって変化する必要がないんです。
少なくともここ数千年は。
対して、この数百年で劇的に変化した西洋医学。
「医学」としての完成度が高いのはどっちでしょうかネ・・・。
ちょっと話がそれたけど、「肺」の基本的な機能は何と言っても「呼吸」だ、というお話でした。
次回に続く
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2010.08.24
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さてさて、そろそろ五臓六腑シリーズを再開したいと思います。
こないだ、「怒り方の大事」のコメントの多さをみた時、
「あれ、みんなもしや、東洋医学の話し、あんましキョ―ミないのかしら??」
とか、
「やっぱちょっと難しかったんカナー・・・。」
・・・とも思いましたが、負けずに書き続けようと思います。(笑)
このブログの裏テーマは、読み手(皆様)のニーズと、僕の楽しめる世界との最大公約数の模索であります!
(・・・言っちゃったら”裏”じゃないけど。(笑))
まあ、なるべく「面白く」、「分かりやすく」を心がけて、愛すべき東洋医学の世界を語っていきますので、難解、あるいは不可解な表現等がありましたら、
遠慮なくコメント下さいますよう、宜しくお願いします。<m(__)m>
ではいきます。
「肝」、「心」、「脾」、「胃」ときまして、続いて「肺」であります。
ちなみにこのシリーズは、どこから読んでも分かるように配慮して書いていますので、これまでのシリーズを読んでいなくても分かる書き方で書いていきます。
☆東洋医学の言う「肺の臓」とは
毎回毎回、うるさいかもしれませんが、東洋医学の言う、五臓六腑の一つとしての「肺の臓」は、西洋医学の言う「肺=lung」とは違います。
「全然」違います。(笑)
ではどういうものか、と言うと、
1.胸部に位置し、
2.呼吸運動や、それに伴う様々な部位に深く関係し、
3.「心の臓」と協調し合いながら他の臓腑の働きを助け、
4.皮膚や粘膜と深く関わり、
5.人間の本能とも深く関わり、
6.「お水」の出納(すいとう)にも関わり、
7.便通にも関わる、
という「臓」です。
これをざっと見ると、
「なんだ、やっぱ西洋医学の”肺”と似てんじゃん!」
と思う人もいるかもしれませんが、それは違います。
・・・「全然」違います。(笑)
「関わる」と言っても、その「関わり方」も、「関わる対象自体」も、全然西洋医学のそれとは違うんだから、同じな訳ないんです。
これから何回かに分けて、以上の7つのテーマを軸に語っていきます。
お楽しみにネ!!
次回に続く
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2010.08.10
先日、患者さんから、こんな相談、質問をいただきました。
「左の足の親指が痛むんですが、何で左だけなんでしょうか?」
・・・足の親指の異常、と言うと、有名な外反母趾とか、陥入爪(かんにゅうそう:巻き爪のこと)あたりが有名です。
これらについて、西洋医学では、先のとがった靴による圧迫や、骨盤の歪み等からくる荷重のアンバランスによって、徐々に足の親指の血行が悪くなって発症する、と考えています。
【参考サイト様】
冒頭の患者さんも、整骨院でこのような説明を受け、テーピングをしてもらった、とのことでした。
僕としては、コレはコレで筋が通っていると思いますし、否定するつもりは全くございません。
(事実、この患者さんも少し楽だ、とおっしゃいました。)
僕も、整骨院や整形外科で働いた経験もありますし、柔道整復師の免許も持っています。
各種の関節痛等の疾患において、こういうやり方(テーピング等)で効果が上がるケースがある、ということは、よく存じ上げておりますし、かつては僕自身も実際にやっていました。
しかし東洋医学では、これに対して、西洋医学とは違った考え方をします。
巻き爪や外反母趾、その他の異常については、足の親指に流れる「経絡・経筋」の異常、と考えます。
東洋医学では、足の親指の、人差し指側(外側)には「肝の臓」に関係する経絡(足厥陰肝経)、内側には「脾の臓」に関係する経絡(足太陰脾経)の気が流れている、と考えます。
これらの流れが悪かったり、均等にバランス良く流れていなかったりすると、足の親指に様々な異常が起こる、と考えます。
つまり、「肝の臓」や「脾の臓」に異常が起こると、足の親指に異常が起こることがある、ということです。
では、どういう異常が起こると、親指がどういう変化を起こすのか、という話になると、細かくて、難しくなるので書きません。(笑)
しかし、足の親指に起こった異常がどういったもので、しかも左右で違うのはなぜか、という問題も、東洋医学の考え方で、綺麗に説明がついていきます。
説明がつくだけで、治らないんじゃあしょうがないけど、それに基づいて治療していけば、ちゃんとよくなります。
これまでに何例も経験しています。
ちなみに冒頭の患者さんはお腹に1本鍼。
・・・よく効いています。
患者さんとしては、
「なんでお腹に?不思議!」
と思うかもしれないけど、東洋医学的に考えたら普通のことなんです。(笑)
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2010.08.09
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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その9)
「胃」って何ですか?
「胃」って何ですか?(その2)
「胃」って何ですか?(その3)
「胃」って何ですか?(その4)
「胃」って何ですか?(その5)
「胃」って何ですか?(その6)
「胃」って何ですか?(その7)
「胃」って何ですか?(その8)
「胃」って何ですか?(その9)
これまで「胃の腑」に関するお話を「脾の臓」とも絡めながら、
・機能
・形態
・症状
なんかに注目しながら、具体例も挙げて話をすすめてきました。
・・・まあ、このシリーズは専門家に向けたものではないので、概要としては大体のことは述べてきたかな、と思います。
なので「胃ってなんですか?」シリーズは、ここらで一旦完結しようと思います。
最後に一つ、ついこの間、患者さんを診ていて、
「あー、これはまずいなー。」
と思ったことがあったので、お伝えしておきます。
☆「足三里」の危険性
その患者さんは、80代の女性です。
以前から診ていて、経過もよく、安心していたのですが、最近妙に元気がなく、脈、舌、体表観察所見も「脾胃」の反応所見がよくないのが気になっていました。
そんなある日、
「先生、最近食事の後、気持ちが悪くなるんです。」
と、その患者さんは訴えました。
詳しく聞くと、のどもよく乾く、便も出にくい、食欲も落ちてきている、体がだるいとおっしゃいました。
患者さんは、
「夏バテかなあ?」
とおっしゃったが、去年はどうだったか、これまではこういうことはあったかと聞いてみると、
「去年、その前はこんなことはなかった。」
とのこと。
さらによくよく聞いていくと、
「先生に鍼してもらってから調子がいいので、もっと調子よくなりたいと思って、足三里にここ最近毎日お灸をしている。」
とのこと。
「・・・それだ!!」
と思い、すぐに中止させたところ、上記の症状は消失。事なきを得た、ということがありました。
・・・ツボの中には、たまに、誰でも知っているような超有名選手がいます。
「足の三里」というツボもその一つです。
↑↑これです。
この「足三里」というツボは、よく「長生きの灸」とか言って、お灸をすると元気で長生きするとか、足腰が強くなるとか言われ、昔から有名です。
テレビや、一部の雑誌や書籍なんかで紹介されてたりすることも少なくありません。
・・・コレ、とんでもない話です。
こういう言い方は、迷信もいいとこです。
足三里にお灸をするだけで誰もが例外なく足腰が強く、元気で長生きするんだったら、誰も苦労しやしません。
確かに「足三里」は、上手に使えば大きな効果を得ることが出来るツボではあります。
しかしそれは、確かな東洋医学的な診断に基づいていて、なおかつ適正な術(鍼か灸か)で、適正な刺激量での処方であった場合にのみ、言えることです。
当然ながら、治療に使える、ということは、逆に言うと間違った使い方をすれば悪化させることもある、ということです。
上記の患者さんは、もともと「胃の腑」に熱がこもりやすいタイプの患者さんでした。
本来ならばその熱を冷ます治療、養生法を行い、どんどん「胃熱」を発散、排出させるように持っていかなくてはなりません。
しかし、この患者さんがやった「足三里にお灸」という処置は、どちらかというと「胃の腑」を温める治療になります。
つまり逆です。
熱に熱を足してしまっている訳です。
しかも、自分で見よう見まねで適当にツボの位置を決めているため、時には右のみが効いたり、左のみが効いたり、効果にばらつきがある上に、
その的確な評価も出来ないため、左右のアンバランスなんかも引き起こしやすいです。
高齢者が左右のアンバランスを起こし、それがあまりにもきつくなると、たいがい転倒します。
歩行姿勢が左右アンバランスで、不安定になるからです。
高齢者にとっては、転倒から骨折でもしたら、寝たきり状態にもなりかねません。
そうなってから泣いたってわめいたって遅いんです。
東洋医学というのは、誰でも簡単に使いこなせるもんじゃありません。
僕も場合によっては、遠方でたまにしか治療に来れない患者さんなど、自宅でお灸を据えてもらうこともありますが、その場合は、安全かつ確実なツボ以外は選びません。
・・・まあー、これだけ「医学だ、医学だ」と叫んでも、それはごく一部の人にしか伝わりません。
甘く見られることの方が多いです。
でも、それでも僕は叫ぶことをやめません。
だって「医学」だからです。
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2010.08.01
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これまでのお話・・・
「胃」って何ですか?
「胃」って何ですか?(その2)
「胃」って何ですか?(その3)
「胃」って何ですか?(その4)
「胃」って何ですか?(その5)
「胃」って何ですか?(その6)
「胃」って何ですか?(その7)
☆「胃」と「熱」と「狂」(続編)
今日のお話は、ちょっと難しいかもしれないけど、大変興味深い部分でもありますので、続き、いきます!
以前、「脾」って何ですか?(その5)にて、”脾は湿気が嫌い”というお話をしました。
その時、「脾はもともと湿っている臓だから、過剰な湿気を嫌うのだ」と書きました。
また、「胃はもともと乾いている腑だ」とも言いました。
・・・ということは、”胃は熱が嫌い”という考え方が、当然あります。
なぜならば、よけい乾いちゃうからです。(笑)
(ここには、実は難しいお話(・・というか意味)がありますが、割愛します。(笑))
つまり「脾胃」は、人体のど真ん中である「中焦」に存在し、かたや湿り(脾)、かたや乾き(胃)、乾と湿のバランスをも、とってくれている訳です。
「胃」って何ですか?(その5)で述べたように、「脾胃」は全身の気血の「昇降のバランサー」でありながら、「乾湿のバランサー」としても一役買っている訳ですネ。
(カッチョイー!)
・・・東洋医学では、体内、および体外の過剰な”熱”のことを「邪熱(じゃねつ)」と言い、様々な症状、病気を引き起こすもとと考えます。
そして特に「胃の腑」が過剰に熱を持つと、それを「胃熱(いねつ)」と呼び、分かりやすいところでは、強いのどの渇き、あるいは食べても食べてもすぐに腹が減る、
暑さを極端に嫌がる、などの症状の原因になります。
”非”生理的な「邪熱」、および生理的な「熱」というのは、通常、どんどん体外に発散しなくては、正常な体の状態を保てません。
大便なり、小便なり、汗なりで、です。
「熱」がうまく発散、排泄出来ずに、どんどん「胃」に籠ると、徐々にマズイことが起こってきます。
前述のような症状はもちろん、マグマのようにブスブスと籠った熱は、やがてまるで”火が付いた”かのように、突然、一気に激しく「上焦」に向かって突きあげます。
これを東洋医学では「胃火(いか)」と言います。
(そのまんまだネ。)
そして突き上げた先の”上焦”には、「心」と「肺」という臓が存在します。このうち、特に「心」が「胃火」の影響を強く受けると、狂乱、錯乱状態になることがあります。
言わば、燃え盛る「胃火」が、「心の臓」に燃え移ってしまった、という状況です。
「心の臓」が蔵している「神(しん)」というものが、”顕在意識を清明たらしめているもの”という話は以前「心」って何ですか?(その6)に書きました。
その働きが侵されるために、正常な判断を失い、まるで”もののけ”でも憑いたかのように叫び、わめき、暴れ出します。
また、体内の邪熱が極まっているために暑くてしょうがなく、衣服を脱ぎ捨てる、というような状況となります。
まさに、前回のブログで紹介した事件のような状況、となる訳です。
しかもあの事件の場合は「朝8時ごろ」という時間帯にも大きな意味があると思いますが、それの解説は長くなるので、またそのうち致しましょう。(笑)
しかしまあ、あの事件の女性の発言から考えるに、おそらく悪い男に弄ばれたとか、そういうことがあった後のことでしょうから、もしそうだとすれば、
ある意味、言ってることにスジは通っています。
また、パンツ1枚の姿だった、とか、実際にベランダから飛び降りはしなかった、ということは、少しは理性が残っていたのかも知れません。
そういう意味ではそれほど強烈な「胃火」ではなかったか、「心神」がそこまでは弱っていなかったのでは、と考えられます。
まあ、いずれにせよ、ああなる前に治療させてほしかったナー、近いんだし・・・。
という感じです・・・。
次回に続く
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2010.07.31
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これまでのお話・・・
「胃」って何ですか?
「胃」って何ですか?(その2)
「胃」って何ですか?(その3)
「胃」って何ですか?(その4)
「胃」って何ですか?(その5)
「胃」って何ですか?(その6)
少し涼しくなったと思ったら、また猛暑。
・・・でも個人的には、猛暑って、ちょっと好きです。
(笑・・・溶けそうにはなりますがネ。)
僕は、育ちは日本一暑い群馬県前橋市なんですが、生まれは静岡県伊東市です。
まあ、海周辺で生まれ、山周辺で育ったわけです。
この時期になると、海の近くで生まれた血が騒ぐのか、妙に気分が高揚します。(笑)
フジツボ、イソギンチャク、ウミウシ・・・ああ、なつかしい・・・。
(見た目キモいのばっかですが。(笑))
・・・まあそれはさておき、ついこないだ、「胃」の話をする上で、とても興味深い事件がありましたね。
ニュースの記事というのはネットからすぐに削除されてしまいますので、ここに概要を述べておきますが、清明院からさほど遠くない、渋谷区円山町で、28日、朝8時ごろ、パンツ1枚の半裸の女性が、
「女をナメんじゃねえ~!!」
とか、
「電話して来い~!!」
とか叫びながら、マンションのベランダから身を乗り出して絶叫していたそうです。
一時は飛び降りを警戒して、消防隊も駆けつけ、あたりは騒然となったそうですが、部屋に入った警察がその女性を取り押さえて一件落着、という事件です。
今日はこの出来事を、東洋医学的に考えてみましょう。
☆「胃」と「熱」と「狂」
東洋医学では、上述のような精神錯乱の病を「狂証(きょうしょう)」と呼び、2500年前に著されたとされる東洋医学の聖典、
『黄帝内経(こうていだいけい)』
の中にはすでに「狂証」の分類、発症機序、治療法まで述べられています。
(専門家の先生方、『黄帝内経霊枢』癲狂篇(22)です。ココ、実におもろい。要チェックです。)
また今から約2000年近く前、中国は後漢の時代、張仲景(ちょうちゅうけい)という大名医がいました。
彼が著したとされる、
『傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)』
という書物は、この現代でも、漢方薬で治療にあたる先生方や、我々鍼灸師にとっても、これまた東洋医学の”聖典”の一つとして、不滅の輝きを放っています。
そこにもすでに、こういった病の症状や所見、治療法が書いてあります。
(専門家の先生方、陽明病篇、特に大承気湯、桃核承気湯の条文です。これまた示唆に富んでるよ~。)
それらを繙くと、結局、こういう「狂証」の治療の最終的な中心は、なんと!いずれも「脾胃」なのであります。
特に上述のような激しい錯乱状態を示すようなものに関しては「脾胃」の中でも特に「胃」が治療対象です。
そして、この考え方は現在でも支持されています。
江戸時代の医師の文献なんかには、実際の症例なんかも出てます。
僕も、何人かの先輩から、実際に鍼や漢方薬で治療した症例の話を聞いたことがあります。
また僕自身も、これに近い症例を経験したことがあります。
・・・まあとにかく、なぜ「胃」がおかしくなるとこういう症状が出るのでしょうか。
ちょっと長くなったので続きは次回に!(笑)
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2010.07.29
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これまでのお話・・・
「胃」って何ですか?
「胃」って何ですか?(その2)
「胃」って何ですか?(その3)
「胃」って何ですか?(その4)
「胃」って何ですか?(その5)
☆「胃の気」について
これまでの、「脾」と「胃」についてのお話を読んで下さった方には、いかに東洋医学が「脾胃」というものを重要視しているか、少しは伝わったんじゃないかと思います。
結局、人間が、どんな状態であれ「生きている」ということは、「脾胃」の働きがまだある、ということを示しています。
なぜなら、東洋医学では、人間が健康に生きる上で欠かせないのは「気血」が正常に全身を巡っていること、な訳ですが、この「気血」そのものの生産工場である「脾胃」がダメになっちゃったら、
どんどん体は弱っていく、と考えるからです。
そして生命を維持できるだけの「気血」の絶対量に及ばなくなったならば、人間は死んでしまいます。
言わば、川の水源が枯れてしまうようなもんです。
この「脾胃」が気血生産の大本(おおもと)として働いている、全身の活動を正常たらしめている、根源的な働きのことを東洋医学では「胃の気」と呼びます。
そしてその「胃の気」の盛衰をうかがい知るのに、専門家の間で最もよく知られた診察法が「脈診」であります。
脈診については以前、「脈」で何が分かるの?に少しだけ書きましたが、脈から得られる情報というのは他にもたくさんあるのですが、中でも重要なのが、
「胃の気」の盛衰を知る、
ということです。
(一社)北辰会では、この胃の気の盛衰を専一としてうかがう脈診法を「胃の気の脈診」と呼んで臨床応用しており、脈診というものは、色々な情報を与えてくれるけれども、
結局、最終的には「胃の気」の盛衰を診るものである、と位置付けています。
これはなにも、北辰会独自の、オリジナルの考え方という訳ではなく、中国や日本の歴代の医家たちも、みんな重要視した考え方です。
当然、現代においても、北辰会以外の流派の先生方も重要視しておられる部分です。
僕も長いこと、往診での鍼灸治療をやらせていただいておりますので、これまであらゆる重病、難病の患者さんを診る機会をいただいておりますが、
やはり最終的には「胃の気」の存亡を診ていきます。
鍼をして脈がどう変化するか、場合によっては一口水を飲んでいただいて脈がどう変化するか、を指標にしていきます。
これが良性の変化を示せば「胃の気あり」、悪化するようであれば「胃の気の衰絶」と考え、予後は不良、場合によっては死に至る、と考えます。
俗によく、
「口からモノが食えなくなったらもう駄目だ。」
なんて言われることがありますが、これはある意味では当たっていると思います。
点滴や胃ろうのみで、”元気に”生きている人はいません。
「長生き」というのは、単純に生存時間が長いこと”のみ”を言うのでしょうか。
次回に続く
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2010.07.28
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これまでのお話・・・
「胃」って何ですか?
「胃」って何ですか?(その2)
「胃」って何ですか?(その3)
「胃」って何ですか?(その4)
・・・けっこう空いちゃいましたが、「胃」のお話、続けていきましょう。
☆脾は上げ、胃は下げる(続編)
「脾の臓」というのは、飲食物から取り出した「気血のもと」を、上焦(胸部から上の部分)に持ち上げます。
そこから後の流れについては、「肺」を解説する時に書こうと思います。
「胃の腑」というのは、飲食物から脾の臓が「気血のもと」を取り出したあとの”残りモノ”を、下焦(胃よりも下の部分)に送っていきます。
すなわち「小腸の腑」「大腸の腑」へと、下に下にと、送っていく訳です。
小腸、大腸にて何が行われるかは、それらを解説する時に述べましょう。
つまり、脾は「持ち上げる力」があり、胃には「下げる力」が生理的に備わっている、と、東洋医学では考えます。
そしてこれはなにも飲食物を消化する時にのみ働く力、と考えるのではなく、全身を巡る「気血」の、上下のうごきをバランス調整している、とも考えられます。
いわば脾胃は「人体」という小宇宙における「昇降のバランサー」なのです。
(笑・・・カッチョイー!)
なので、「脾の臓」が弱ると、消化器症状のみならず、気血がうまく上焦に上らないため、立ちあがった時にめまいがしたり、脱肛や脱腸、子宮脱や胃下垂などの内臓下垂になったりすることがあります。
同じように「胃の腑」が弱ると、うまく気血を下げられないために吐き気やおう吐、頭痛などが起こることがあります。
このようにして東洋医学では、「脾」と「胃」を、働きの上から「脾胃」、「脾胃」と呼んで同一視しながらも、実際に変調が起こった時は「脾」なのか「胃」なのかを明確にして治療します。
「脾」が悪い時と「胃」が悪い時では治療のやり方が違ってきます。
症状も違います。
東洋医学的な所見も違います。
こういったことを明確にしないままに治療しても、なかなかうまくいきません。
「弁証論治」の重要性ですな。
・・・人体を上焦、中焦、下焦と3つに分けると、そのど真ん中となる「中焦」にデ~ンと存在し、気血の上下、「昇」と「降」をつかさどる脾胃・・・。
昇るべきものを昇らせ、降るべきものを降す、脾胃はまさに、「生命活動の中心」なのであります。
次回に続く
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