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2010.07.08
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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
「脾」って何ですか?(その4)
「脾」って何ですか?(その5)
「脾」って何ですか?(その6)
「脾」って何ですか?(その7)
「脾」って何ですか?(その8)
☆脾が弱ると出血する!?
これまで、「消化吸収のかなめ」としての「脾の臓」に注目して話をすすめてきました。
その流れから言うと、今回の話は意外に思えるかもしれません。でもこういうことが、実際にあるのです。
今日も患者さんから、
「どうして不正出血ってするんですか?」
という質問をいただきました。実はこういった、不正出血や下血、鼻血なんかの原因に、「脾の弱り」があることがあります。
(・・・まあ、今日の患者さんの場合はちょっと違ったけどネ。)
僕は普段の臨床の中で、脾の弱りがメインの患者さんを診た場合、例え症状が不正出血であったとしても、
「胃腸の、消化、吸収する力が弱っていることが今回の症状の原因です。」
という説明をすることがあります。
これを言うと多くの患者さんは、
「ハ?消化吸収と出血に、何の関係が??」
という顔をします。(笑)
しかし、こういうことはあるんです。今日はそんなお話しです。
まず、(その7)でお話ししたように、「血(けつ)」のもとは飲食物であり、飲食物から「血のもと」を取り出す要は「脾の臓」でしたよね?
ということは、「よい血」を手に入れるには、「よい飲食物」+「よい脾」が重要、ということになります。
では、ここでいう「よい血」とはいかなるものかというと、大まかに言うと、
1.血管から勝手に漏れ出さず、
2.全身をキッチリと栄養し、
3.滞ることのない、
血のことです。
この1~3の条件を満たした血こそが、理想的な「血」なのです。
これは言いかえれば、少し難しい言い回しかもしれないけど、「気」とのバランスのとれた「血」と言ってもいいと思います。
・・・まあともかく、脾が弱ると、この1~3の条件が満たせなくなります。
だから仮に飲食物を気をつけて、いいものを食べていても、からだ側の「脾」が弱っていると、”出血”という病的状態になってしまうことがあります。
(専門家の先生方、簡単に済ませて申し訳ないが、”脾不統血”、”気不摂血”というキーワードを、『難経』42難、49難などを踏まえてミックスした、患者さん用の僕なりの説明です。勘弁してネ。)
・・・ここまでで「脾」の形と働きの説明は大体終わります。
最初の方で述べたように、「脾」は「胃」とセットで考えねばなりません。
なので次回から”「胃」って何ですか?”シリーズでいこうと思っています。
「脾胃」は生命力のかなめです。
ココが弱い若者が多い、ということは、日本の将来は一体・・・。
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2010.07.07
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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
「脾」って何ですか?(その4)
「脾」って何ですか?(その5)
「脾」って何ですか?(その6)
「脾」って何ですか?(その7)
いや~、今日のジメジメも半端じゃなかったですね~!!
湿度は常に70%以上!
自然界がジメジメの時、体も心もジメジメになっちゃあいけません!
「サラッ」とさせとかないと!
・・・大体この時期、体がジメジメの人は太り、心がジメジメの人は痩せますな。(笑)
今日はそんなお話。
☆脾と「太る」「やせる」
これまでの話を読んだ人なら、これはなんとなく想像できると思います。
何度も出てきているように、当然「脾の臓」は消化、吸収に大きく関わります。
ということはこれがうまくいかなかったら過剰に太ったり、過剰に痩せたりしてしまうんです。
・・・まあコレ、当たり前の話ですけどね。(笑)
僕のところにも、いまだに、
「鍼で痩せられますか?」
とか、
「食欲のなくなる鍼ってないんですか?」
という問合せや質問がたま~にあります。(苦笑)
一体いつまで続くんでしょうか、女性の「楽して痩せたい」願望(幻想)・・・。
確かに、テレビや雑誌に出ているスリムで美しい女性を見て、ああなりたい、と思う気持ちはよく分かります。
でも、楽して、他力本願でそうなりたい、とか、何か一つのことだけやればあとは何もしなくていい、というのは、やっぱり虫のいい話のようです。
清明院では不自然に、無理やり食欲をなくさせたりするような、病気を形成、助長する行為は致しません。
どうしてもやりたければ他へどうぞ、という話にならざるをえません。(笑)
ただ、治療をしていくことで、その方の本来の消化吸収機能を取り戻し、体内の余分なものが減っていった結果として「やせる」ということはよくあります。
また逆に、やせ過ぎていた女性が、治療をすることによって適度に肉がついてきた、という変化もまたよくあります。
この変化に大きく関わるのが「脾の臓」です。
脾がうまく働かないと、飲食物が大して吸収もされずに、未消化便となって体から出ていってしまうことがあります。
また、吸収したのはいいけど、それがいつまでも無駄に体に留まる場合もあります。
前者の場合は痩せていくし、後者の場合は太っていきます。
ではどういう人がこのパターンに分かれるかというと、それは「脾の臓」以外の臓腑との機能のバランスによって決まってきます。
詳しくは難しくなるので書きませんが、例えば、すでに出てきた「心の臓」とか「肝の臓」とか、あるいは一番そばにある「胃の腑」とかとのバランスです。
これらがきちっと協調し合いながら仕事してれば問題ないんだけど、アンバランスがあると、先ほどの2つのタイプに分かれてきます。
何事もバランス、ということです。
陰陽あるけれども、「中庸(ちゅうよう)」が大事、というのが東洋医学的な健康体の基本です。
次回に続く。
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2010.07.02
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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
「脾」って何ですか?(その4)
「脾」って何ですか?(その5)
「脾」って何ですか?(その6)
☆脾は血に関与する
以前、「肝」って何ですか?(その2)や、「心」って何ですか?(その5)にて、「肝」や「心」が血と深く関わる、というお話をしました。
しかし、血に関わるのは肝や心だけではありません。
「脾」も大いに関わります。
今日は、では「脾」が血にどのように関わるのか、というお話。
まず、血のもとは何かと言ったら、食べ物や飲み物です。
これは万国共通、疑いないですよね?
飲食物が口から入ると、一番最初に待ち受けるのは「胃の腑」と、それに密着した「脾の臓」でしたよね?
そしてこの2者がうまく協調して、飲食物から「気と血のもと」を取り出す、という話は以前にしました。
と言うことは、もし「脾」の働きが弱っていたら、もともとあるべき、体内の「血」の絶対量が少なくなってしまうんです。
「気血のもと」が取り出せない、てことは全身の気血が少なくなっちゃう、ということです。
そうなると肝も豊富に血を蔵することが出来なくなるし、心も十分に血を全身に送り出すことが出来なくなります。
そういう意味で、脾は血の生成に大きく関わり、ここでも生命の中心的役割を演じています。
「肝」「心」「脾」、この3者の血への関わりをまとめると・・・、
肝・・・血を貯蔵して、配分バランスを調節
心・・・血を律動的に全身に流動させる
脾・・・血の生成に大きく関わる
となります。
ですから血が足りない、という症状があったとしても、即座にどこが悪い、と決めつけることなんてできないんです。
ちなみに、西洋医学の言う「貧血」という考え方と、東洋医学の言う「血虚(けっきょ)」という考え方は、確かに似た部分もありますが、やっぱり違います。
どこがどう違うか、ということを説明すると長くなるし、難しくなるのでしませんが、そもそもこういう風に、西洋医学の概念を東洋医学的に翻訳しようとすること自体に無理がある、というのはいつも述べている通りです。
物差し自体が違うのです。
注意せねばなりません。
次回に続く
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2010.07.01
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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
「脾」って何ですか?(その4)
「脾」って何ですか?(その5)
続きいきます!!
☆脾と口とくちびる
脾の働きは口の機能と関係が深いです。
(「喋り」という意味よりも、この場合は唇も含めた、口腔粘膜全般の機能、と考えて下さい。)
例えば卑近な例を挙げれば「口角炎」や「口内炎」、これらは経験したことがある人も多いんじゃないでしょうか。
僕も普段患者さんに聞かれることがあります。
「口内炎や口角炎がよく出来るんだけど、どうして??」
僕は大体、
「胃腸の働きが弱っているからだよ。」
と答えます。
・・・これは実は、
「それはねー、内外の複雑な原因があいまって、五臓六腑の中の、消化機能をつかさどる”脾”という臓が機能低下をきたした結果、流注の面、
生理機能の面から関わりの深い口唇に異常が出たんだよ。」
という難し~い言い方の回答を(笑)、省略して簡潔に述べている訳です。
こんなことを実際の患者さんに言ってたら、途中で寝られちゃいます。(笑)
ここでもし西洋医学の医師であれば、
「それはビタミンの不足です。」
な~んて言って、ビタミン剤を処方するかもしれませんよね。
ここにも、東西の視点の違いが見て取れます。
要するにビタミンを吸収する人間側の消化機能を問題視するか、摂取ビタミンの絶対量を強引に増やすことによって強制的に治そうとするか、という違いです。
どちらが人体に優しいか、また、長い目で見た場合に、どちらが問題が起こらなそうか、普通に考えりゃ誰だって分かります。
僕なんかはそもそもこんな飽食の時代に、「ビタミンの絶対的な不足」という状況なんて、果たして起こるんかしらー?と思っちゃいます。
もし仮にそれが起こってたとしたって、それ以外に過剰なものがあってそれが消化管粘膜に負担をかけてる場合、それを控えるだけで済む場合もありうると思います。
・・・ま、いいけど。(苦笑)
またこの他にも、「味覚」にも脾の働きが関与します。
風邪をひいて鼻がつまって味が分からなくなる、という経験は、誰もがしたことがあると思いますが、あれなんかは脾の弱りが関わってることが多いです。
脾は、口腔内を津液(生理的な水分)で潤し、舌や歯など、口腔内に存在する重要なものが十分に機能を発揮できるようにサポートする役目も持っているのです。
つまり、脾がしっかりしていると、口の中や口周辺は適度に潤い、その機能を十分に果たすことが出来るんです。
以前、舌には心の臓が深く関わる、というお話をしましたが、人間のあらゆる機能というのは、このように様々な臓腑がうまく協調することによって初めて成り立っている、と東洋医学では考えます。
これらの「どこがどう」アンバランスを起こしたかを見抜き、治療するのが東洋医学的な治療なんです。
次回に続く
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2010.06.26
今日は朝一から猛烈に忙しかったです!(感謝)
狭い清明院の中を、1日中かけずり回っておりました(笑)
さて、今日の患者さん達を診ていて気がついたのですが、やはりこの時期、
「クーラーをつけっぱなしにして寝ちゃってから調子が悪いです。」
という訴えの多いこと多いこと!
・・・これ、単純になぜでしょうか?
なんで、クーラーつけっぱなしにして寝ると調子悪くなるんでしょうか?
そりゃ冷えるからに決まってんじゃん!・・・という声が聞こえてきそうですが、じゃあ患者さんの訴えが人によってバラバラなのはどうしてでしょう?
必ずしもカゼみたいな症状が出る人ばかりじゃなくて、神経痛が出る人、頭痛が出る人、痒みが出る人、怒りっぽくなる人などなど、
「クーラーによる冷え」
の後から出てくる症状は、メチャメチャ多岐にわたります。
・・・今日は、これがどうしてか、考えてみたいと思います。
本日は6月26日、この時期は24節気で言うと「夏至(げし)」に入って5日目であります。
この「夏至」とは、1年で一番日が長く、とても暑い時期、ということになっています。
ただ日本ではこの時期は梅雨であり、あまりこのことが実感されることは少ないようですが、いずれにしても自然界の”陽”の気が非常に高まる時期であります。
我々人間も動物ですので、自然界が陽に傾けば、人体も陽に傾きながらバランスを取るのが自然な、本来の姿です。
ですから、この時期は体の中には陽気が盛んになって、活動的で元気になってきます。
そしてたくさん汗もかきます。
陽気が盛んになる、ということは、ある意味「生理的に」「生理的な」熱を持つ、と言ってもいいと思います。
だから、たくさん汗を出して、その熱が体に籠らないように発散しようとしている訳です。
これを、クーラーで体の表面を冷やし、玄府(げんぷ=汗腺)の動きを鈍らせ、皮毛を閉じ、生理的な発汗を無理に止めてしまうと、マズイことが起こります。
要は、体に「余分な熱」が籠るのです。
具体的な症状としては、咽が異常に渇いたり、食欲が極端に亢進したり、便秘したりします。
そして、口渇や食欲など、その欲求にまかせてどんどん暴飲暴食してしまうと、もっとひどくなって、しまいには便秘したりします。
あるいは徐々に徐々に食欲が落ちてきて、ヤル気がない、元気がない、本来活動的になるべき陽気の盛んな時期なのに、いわゆる「夏バテ」状態になります。
また、局所的に冷やされた部位の血行が極端に悪くなり、そこに痛みやしびれが出たりします。
・・・ここまで書いたところで、支部役員前日勉強会のお時間になってしまいましたので(笑)、続きは次回に・・・。
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2010.06.15
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さて、五臓六腑シリーズ、続いて「脾(ひ)」についてです。
☆「脾の臓」を理解する上で
これもまた、西洋医学の言う「脾臓=Spleen」とは違います!
僕はこれを、クドいようでもずーっと言い続けようと思います。
そうでないと話が始まらないし、混同して理解していくと、あとで整合とれなくなるからです。
一部に、
「東洋医学の言う”脾”は西洋医学の言う”膵臓(すいぞう)”の働きに相当する。」
という解説がされることがあるようですが、この論、僕は学生のころから「まったく」納得できませんでした。
東洋医学における「脾の臓」を正確に説明するにあたって、あまりにも一面的過ぎるように思います。
これにもし、そんなことない!とおっしゃる方がいらしたら、是非とも詳細なご説明、実際の症例も踏まえた上でのご見解をお伺いしたいです。
こういう、よく分からない理論を聞くと、僕としては、日夜難しい症例に悪戦苦闘しながら勉強しておられる、西洋医学の膵臓の専門医の先生に、逆に申し訳なく思っちゃいます。
「西洋医学の膵臓=東洋医学の脾の臓」という理論が成り立つならば、当然、「あらゆる膵臓病=脾の臓の病」という理論が成り立つことになり、膵臓癌や急性、慢性の膵炎なんかは、
全て東洋医学では「脾の病」ということになり、あたかもその分類方法や治療体系があるかのように聞こえますが、そんなものはございません。
我々は、例え患者さんが膵臓癌であれ、膵炎であれ、その時点での症状、東洋医学的な所見を正確にとらえて、それを正すのみです。
(つまり、気血津液、五臓六腑のアンバランスを正し、人間が持つ自然治癒力を最大限引き出してあげる訳です。)
その結果、患者さんの自覚症状はもとより、西洋医学の画像所見(MRIなど)や血液検査所見でも、症状の改善が確認されることがある、という訳です。
じゃあその2つ(東洋医学と西洋医学)を臨床次元で完全に結び付ける、スキのない理論や方法論があるかというと、現状、そんな便利なものはないんです。
それがないんであれば、自分で作るか、これまで培われてきた”より確からしい理論”に依拠して治療を進める以外にない、ということになりますよね?
前者の場合は、不確定性が強すぎて、とても患者さんにやる気になりません。
患者さんは我々の実験台ではないのでね。
研究所にこもって、ラット相手にやるならまだしも、僕らプロの臨床家が相手にするのは、現実に現代を生きている人間(患者さん)であり、
しかもその患者さんからお金(対価)をいただいて行うのです。
鍼ともぐさを持って、真剣に患者さんの病と対峙した場合、後者を全力でやる以外にないと、僕は考えています。
東洋医学は何千年もの風雪に耐えて、今や世界中に広まりつつある、
”現代で最も確からしい、鍼灸の活かし方”
な訳ですから。
これから何回かに分けて、東洋医学の言う「脾」というものを説明していきます。
いかに西洋医学の言う「脾臓」や「膵臓」と違うか、”普通の人”なら、よくお分かりになると思います。
次回に続く
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2010.06.04
これまでのお話・・・
「心」って何ですか?(その1)
「心」って何ですか?(その2)
「心」って何ですか?(その3)
「心」って何ですか?(その4)
「心」って何ですか?(その5)
だんだんと、ネタが増えてまいりましたね・・・。
イイ感じです。(笑)
ただまあ、このブログは専門家に向けたものではないので、最初から全部読まなくても、1話1話、
「誰でもが」
分かるように配慮したものにしよう、と思っています。
今日は東洋医学のいう「心」を理解する上で欠かせない、「神(しん)」というものの関わりについて述べます。
東洋医学には「五神(ごしん)」という考え方があります。
人間の精神活動(考えたり、覚えたり、判断したり・・・)は、この「五神」というものの働きによってなされている、と考えられています。
そしてこの「五神」というものは、読んで字のごとく”5つ”あり、それぞれが「五臓」と深く関わる、とされています。
「五神」と「五臓」の関わりを書きますと・・・
・肝・・・魂(こん)
・心・・・神(しん)
・脾・・・意(い)
・肺・・・魄(はく)
・腎・・・志(し)
となります。
この中の、「肝」と「魂」の関わりについては、以前「肝」って何ですか?(その4)にて述べました。
脾と意、肺と魄、腎と志についても、いずれ述べようと思っていますが、今日はとりあえず「心と神」について述べましょう。
この「五神」というものには、それぞれに役割があります。
例えば、肝の魂には無意識をつかさどる働きがあったり、それ以外の意や魄や志にも、それぞれ異なった働きがあります。
その中で、この「心神」というものは特別、別格です。
なぜならば、他の四神の働きを統合し、まとめる、という、”部分的”ではなく、”全体包括的な”働きを持っているからであります。
つまり、人間が持つあらゆる感覚、記憶、本能、理性、思考、といった、精神活動の全てを、「心」が蔵する「神」が、最終的には統括している、という風に、東洋医学では考えます。
この辺の詳しい話はたにぐち書店『中医心理学』に非常によくまとまっております。
(しかしこれは専門書ですので、一般の方は読んでもチンプンカンプンかもしれません。)
実は僕は昔からこの辺の理論が好きでして、というか興味を持ってまして、色々な先輩たちに質問したり、本を読んだりして、徐々に自分なりに勉強を進めていました。
日々患者さんに接するたび、
「一体、人間のココロの仕組みってどうなっているんだろう?」
「この人は何を求めているんだろう?」
「どうすればこの人は癒されるんだろうか?」
とかっていう問題は、僕が鍼を持って以来、ずーっと頭にありました。
これを「医学理論的に考える」、一つのヒントがこの『中医心理学』でありました。
・・・まあそれはともかく、「心」という臓が蔵するこの「神」というものは、「魂」の説明の時と同じ感じになりますが、「気」のある側面に名前を付けたもの、と考えたらいいと思います。
つまり、平た~く、はしょりまくって、強引に、言うと(笑)、「気」のように全身を周流しつつ、”主に”「精神活動」のバランス調節をしているもの、と言えます。
じゃあ肝の臓が蔵する「魂」との違いは何か、というと、「魂」が無意識の精神活動に関与するのに対し、「神」は意識下の精神活動に”主に”関与します。
要は、仕事でも家庭でも、それ以外の人間関係も、我々の振る舞いは全て、各人の顕在意識下でなされていて、潜在意識が表面化することは通常ない訳ですが、
両者は表裏一体の関係性を持っていて、相互に影響しあう訳です。
これを調整、統括し、顕在意識を清明、正常たらしめているものが「心神」なのであります。
なので様々な要因でコレが不安定になると、実に多様な症状を呈します。
いわゆる西洋医学的な、”精神病”と言われるようなものも、東洋医学では「心神の病」の範疇に入ってくることが多いです。
あるいは原因不明の激痛を伴う病なども、この範疇で考えると説明がつくことが多いです。
なので臨床的には、この考え方を応用すると、非常に強力な鎮痛作用を鍼で表現することが出来たりします。
(・・・と言ってもまあ、そんな簡単な技術ではないけどネ。)
かなり簡単に述べましたが、東洋医学の言う「心の臓」が蔵する「神」とは、以上のような役割を持ち、人間の健康には欠かすことのできない役目を担っている、ということです。
次回に続く
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2010.05.20
これまでのお話・・・
「肝(かん)」って何ですか?(その1)
「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)
「肝」って何ですか?(その4)
「肝」って何ですか?(その5)
「肝」って何ですか?(その6)
「肝」って何ですか?(その7)
「肝」って何ですか?(その8)
・・・ではでは、楽しい楽しい「肝」のお話を続いてまいりましょう。
◆肝は将軍
東洋医学の古典では、
「肝は臓腑の中では”将軍”のような役目を果たすよ。」
と言っています。
(『黄帝内経素問』霊蘭秘典論(8) 参照)
コレ、面白い例えだと思います。
将軍の役目と言えば、戦いの時に作戦を考え、自らも動き、自分の軍を勝利に導く、言わば、
”勝敗を分ける、戦のかなめ”
ですよね。
・・・これを人間の日常生活で考えると、「戦(いくさ)」というのは、要するに”外界からの刺激に対する対応”です。
(物理的、精神的、両面含めた、です。)
人間は”オギャー”と生まれたその日から、最後亡くなるその日まで、実に様々な刺激にさらされ続けます。
(まあ、生まれる前からもだけどネ。)
その刺激に対して、上手に、適切に対応できれば、精神的にも肉体的にも、理論上は何も異常を起こさず、快適な日々を送ることが出来ます。
「肝」の働きが異常を起こすと、本来耐えられるはずの些細な刺激でも、体が異常を起こしたり、緊張とリラックスのアンバランスが生じたりします。
清明院の患者さんでも、別に仕事で緊張し過ぎている、という自覚はないけれど、家に帰ってホッとする、あるいは休日でホッとする、そうすると、
急に色々な症状が出る、とおっしゃる患者さんがおられます。
(皆さんこういうこと、ないですか?)
こういった場合、臓腑では「肝」を中心に病んでいて、
”緊張とリラックスのアンバランス”
が起こっていることが少なくありません。
つまり、将軍である肝が、平素から「余分に」力み過ぎちゃってる訳です。
プロスポーツの試合なんかを観ているとよく分かると思いますが、やっぱり選手が力み過ぎていると、たいがい負けますよね。
余分な緊張、というのは、かえってパフォーマンスを下げてしまうのです。
これは何もスポーツの世界だけではなく、我々の社会生活においてもしかりであります。
そういう患者さんを治療していくと、ある程度治療が進んだ段階で、
「今まで余分な緊張をしていたことがよく分かりました・・。」
なんて言われることが多いです。
患者さんからこの言葉が出たら僕は、
「お、肝の働きが大分立ち直ってきたな。ヨシヨシ・・・。」
と理解します。
「ストレス社会」、「うつ病の時代」と言われる現代、肝を中心に病んでおられる患者さんは、非常に多いと思います。
続く
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2010.05.01
これまでのお話・・・
「肝(かん)」って何ですか?(その1)
「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)
肝という臓は、人間の体の中でも大変重要な臓でして、上記以外にもまだまだ働きはあります。
話があまりマニアックになっていきますと、患者さん向きでなくなるんで、このブログでは極力専門用語は使わずに、分かりやすく解説していこうかな、と思ってます。
(まあ専門家の先生方には、そういうサイトや本がいくらでもあるしね。)
・・・てな訳で今日も、肝の働き、いけるとこまで。
◆肝は「目」に関わる
・・・これも結局は、「髪」や「爪」と同様に、「目」を養っているのは「血」だから、というオチであります。
肝にためこまれている「血」が十分であり、ちゃんと目に十二分にいきわたっていれば、少々長い時間本を読んでも、PC作業をしても、
目が疲れたりかすんだりすることはありません。
清明院でも、よく患者さんの下まぶたを下げて(いわゆる”アッカンベー”ね。)、白くなってないかどうか診させていただくことがありますが、
下まぶたをめくった時の色が白くなっていれば、
「あ、肝がためてる血が少ないか、ためてる量はあっても、何らかの原因で、目にきちんと行きわたってないな。」
と考えます。
他にも、白内障や緑内障、疲労性の網膜剥離などなど、眼科のあらゆる病気は、東洋医学的には「肝」の異常を中心として起こっていることが少なくありません。
◆肝は「魂(こん)」を蔵(ぞう)す
・・・コレ、響きからして、いかにも東洋医学~!って感じでしょ?(笑)
「一体なんなのだ、この「魂(こん)」というものは!?ワケのわからんことを言うな!!」
と、僕も学生の頃は思っていました。
これについて細かく細かく解説をしていくと、どんどん肝の話から逸れていきますし、僕自身が年末に北辰会で講義する内容のネタばらしにもなっていきそうですんで、ここではごく簡単に述べてみます。
ここで言う「魂(こん)」ていうのも、人体を循環する「気」の一種だと考えて下さい。
つまり、生きている人間の体の中を絶えず流動し、心身のバランス調節をしてくれているものの一つです。
(「気」については、「気」ってなんですか? 参照)
で、「魂」は、日中活動時は「気」のように全身を行ったり来たりしていますが、睡眠時は、「肝の臓」に戻る、という運動パターンを持っています。
「肝の臓」が家だとすると、その家の主人が「魂」といった感じです。
このように肝の臓は、「血」であったり「魂」であったり、色々な重要なものを”蓄える”という性質があるということが、肝の臓を理解する上ではひとつ、重要です。
〇
・・・で、「魂(こん)」と「気」との違いはどうかというと、「気」が全身を巡って、”全ての生命活動を”調整するものであるのに対して、「魂」は、
「人間の無意識の精神活動を調節しているもの」
と言われます。
(笑・・・分かりにくいねえ~)
要はこの、「無意識の精神活動」っていうものは、僕らが普段、普通に「意識的に」やっていることの”支え”であり”裏”となっているものです。
例えば、「何かしよう」と思う時も、それを実際に行動に移す時も、その背後には、必ずこの「魂」の働きがある、ということです。
だから、目立ちませんが、大変重要なものです。
この「魂」の働きの具体例としてよく言われるのは、「夢」や意識昏迷状態での「うわごと」などです。
(「夢」についてはかつて「夢」はなぜ見る?にちょこっと書いてますのでご参考あれ。)
本来は、「寝てる」という状態であれば、人間は当然無意識状態ですから、「魂」の出番はありません。
だから寝ている時は「魂」は「肝」におとなしく帰っています。
(その時「魂は肝に蔵されている」わけね。)
しかし肝が病になると、この「魂」が不安定になって、(肝の臓に蔵することが出来なくなって)寝ている間も肝に帰らなくなります。
(非行少年のように、夜遊びし出すわけです)
そうすると、「夢」をよく見て、しかもそれをいつまでも覚えている、という病的な現象が起こります。
これを東洋医学では「多夢(たむ)」と呼び、うわごとや、酷いものでは夢遊病なども含めて、「魂(こん)」が夜の間に肝の外で遊んだ、
という意味で、「遊魂(ゆうこん)現象」なんて言います。(笑)
・・・面白いですねえ。(笑)
東洋医学にはこういう、西洋医学にはない、独特の病のとらえ方がたーくさんあります。
どれもとても面白いです。
しかしもちろん、この医学は面白いだけで終わりません。
例えば上記のような、毎晩毎晩、悪夢にうなされて睡眠不足で困っている、という患者さんがいた時に、これを”遊魂現象”と考え、「肝」に着眼して診察し、
実際に肝の病が中心だ、と確定したとします。
そして、それを上手に治療していくことによって、夢を見なくなり、ぐっすり眠れるようになる、
そして、それに伴って、肝の臓に関する病的なツボの反応やその他の症状が体から消えていく、という現象が「現実に」起こるんです。
そういう症例を実際に経験するたび、東洋医学はこのような一見不可思議な説明から、確かに一部「真実」を捕まえている、と再確認出来る訳であります。
次回につづく。
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2010.04.29
これまでのお話・・・
・・・「肝」というのは、五臓六腑の中の一つです。
東洋医学の言う、五臓と六腑には、それぞれに独特の働きがあり、それらがうまく協調しあうことによって、正常な人間の機能が保たれます。
これは、西洋医学の言う「内臓=organ」とは違う!ということは、何度も何度も、繰り返し繰り返し、述べている通りです。
(笑・・・しつこい?)
では東洋医学の言う「肝」というのは、どういうもので、何をしているところなんでしょうか?
まず、中医学の教科書的には、肝には、「疏泄(そせつ)」という重要な働きがあります。
(”疏泄”という単語の歴史的経緯、変遷についてはまた色々とあるんですが、ここでは省きます。)
これは要するに、
全身を流れる「気(き)」や「血(けつ)」という、流動物を、足らないところには補い、渋滞があったら取り除く(通じさせる)、
という、肝の臓の重要な働きのことです。
これがあるから、少々の滞りや過不足であれば、「肝の疏泄機能」によって体が勝手に改善してくれる、という訳です。
次に重要なのが「蔵血(ぞうけつ)」という働きです。
これは読んで字のごとくです。
「血(けつ)を蔵する」訳ですから、体の正常な状態を維持するのに欠かせない「血」を、不足したところに補うためには、常にどこかに蓄えていないといけません。
「肝の臓」は、それ自体に”血を蓄える”という、重要な働きを担っております。
上記の2つは、東洋医学的「肝の臓」の機能の中でも最も重要な2つの働きです。
ちゃんと「疏泄」するためには、必ず十分に「蔵血」してないといけないし、たとえ「蔵血」だけしてても、「疏泄」しなかったら意味がありません。
この2つの働きは、「肝」という臓の、内向き(蔵血)と外向き(疏泄)の2つの機能として、「肝の臓」という臓の働きを考える上で、とても重要な「陰陽バランス」なのです。
ではそれ以外の働きはというと・・・それは次回。
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