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2019.10.22
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昨日チョロッと書いたように、二十四節気では寒露から霜降に入ろうとしています。
霜降の後にはいよいよ「立冬」です。
この「立冬」の前の18日間を「土用」と言います。
実は昨日、21日から立冬の前18日間なんで「秋の土用」と言います。
「四立(立春・立夏・立秋・立冬)」の4つの節の前の18日間のことを言い、1年で4回あります。
この時期にはよく、引っ越しするなとか、土いじりをするなとか言われます。
(丑の日にはウナギを食えとかね。(笑・・・これは平賀源内のアイデアらしいが。))
これは陰陽道の神である「土公神(どくじん、どこうしん)」の怒りを買うからだと言われます。
これが発展したのか拡大解釈されたのか、結婚や就職も良くないと言われます。
日本人はこうやって色々、占い的に考えるのが好きですね。
自然界の様相を数字や記号に置き換えて、現実と照らし合わせては理論に落とし込んで、吉凶を考える占術というのも、なかなか面白いものです。
何かをつかまえているのでしょう。
・・・まあかといって、治療においては、時節以外の要因も数限りなくあるわけですから、言うまでもなく時節に拘り過ぎれば失敗します。
土用だから絶対的に脾胃をいじっちゃいけないとかは僕は思いませんね。(∩´∀`)∩
2019.10.14
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「脊髄損傷」という病気があります。
これは病気というか、ケガ(外傷)からくるものがほとんどです。
最近ではプロレスラーの高山善廣さんが試合中の事故で起こしました。
背骨の中には「脊髄」という、中枢神経の束が入っている訳ですが、これが何らかの外傷によって障害されると、主にその障害部位から下のレベルの筋運動や感覚が機能しなくなってしまうという、大変気の毒な病気です。
この病気は、以前にもプロレスラーのハヤブサさんなど、有名人に何人か患った方がおられますので、知っている人も多いことと思います。
・・・で、これに対して、清明院の鍼灸はどうか、というお話。
僕は20代の前半から、今日に至るまで、ずーっと往診(在宅医療)をやらせていただいておりますので、脊髄損傷の患者さんを診させていただく機会は、これまでにも多々ありました。
仕事が出来ない、あるいは出来ても大変なハンデの中でおやりになっている方がほとんどですので、自費で継続して治療するのは大変なことですし、
外来では正直、あまり診る機会は少ないのですが、これまで、往診の患者さんも入れると、10人以上診ています。
今現在は、外来でも数名、診させていただいています。
もちろん普段通り、北辰会方式の弁証論治で対応します。
臨機応変な少数鍼治療と、養生指導が、僕に出来るすべてです。
これによって、主に飲食、二便、睡眠の状況を変えていき、リハビリでのストレスの緩和や、QOLの向上に繋げていきます。
脊髄損傷の患者さんに対する対応として、西洋医学的、リハビリテーション医学的に考えることと言えば、
「障害機能の回復」
「残存機能の維持・増進・改善」
です。
また現在ではiPS細胞を使った「再生医療」がこれにどこまで出来るのか、ということに期待が高まっています。
これに対して、我々東洋医学ではあくまでも
「一人一人の患者さんに合わせた、陰陽バランスの調整」
です。
・・・まあ、それが結果的に、残存機能の維持増進改善や、障害機能の回復に繋がれば良い、繋がるかどうか、どこまでいけるか、という話であるわけです。
脊髄損傷の患者さんが日々感じておられるストレスは、我々健常者の想像を絶するものだろうと思います。
生来の麻痺でなければ、健常であった時(動かせていた時)の記憶があるからこそ、尚更でしょう。
治療後に起こる変化に関して、こちらが過度な期待をし過ぎるとか、あるいは患者さんに期待させ過ぎるのはちょっと違うと思うし、何人か実際にやってみれば分かると思いますが、
患者さんも、術者の側も、実際は非常に根気のいる治療です。
それでも、密にコミュニケーションをとりながら、コツコツとあきらめずに治療していくと、麻痺までは回復しなくても、色々なポジティブな変化が出ることがあります。
発汗、排尿、排便、睡眠の状況の良性変化、また、上肢が動く患者さんでは車いすを使うので、肩こりや頭痛、逆上せ感などの不快な不定愁訴の改善、
何より日々の生活で感じるマイナスな気分の良性変化などなど、鍼灸治療の産物、副産物は枚挙にいとまがないです。
これは僕自身がこれまでに何度も経験しているところです。
本来は、脊髄損傷専門のリハビリ病院でも、積極的に東洋医学的な鍼灸漢方でのアプローチを採り入れるべきだと思っています。
2019.10.06
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今書いている「太極・無極」シリーズ。
長くなったので、ここらで目次を作りましょう。
番号だけ並んでても分かりにくいので、各話にタイトル付けます。
「太極」「無極」の意味 6 なぜ”太極”陰陽論なのか その2
・・・もうちょっと続きます☆
2019.10.04
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これまでのお話し
『列子』という人物 参照
さて、続きいきましょう!!
◆腹診、腹部刺鍼と太極無極
・・・まあ、ここまでクドクドと述べてきたように、
「太極とはウンチャラカンチャラ・・・」
「無極とはウンチャラカンチャラ・・・・・」
と、古代中国の哲学に思いを馳せたり、勉強するのは結構だけれども、多くの臨床家にとっては、
「・・・で? つーかそれ、臨床に関係あんの??」
「それ覚えたら、なんか治せるようになんの??」
というのが普通のリアクションでしょう。(笑)
江戸期の日本古流派の腹診図や腹診書には、「太極」「無極」という表現が散見されます。
奥村裕一先生論文 参照
・・・まあ、お臍には「神闕」という経穴名が付されているのですが、このお臍のすぐ下の「気海」という経穴に鍼することを、宮脇仲策(江戸中期、生没年不明)の『鍼学発曚訓』では、
「腹根本太極鍼」と呼んでいたり、1679年序の『合類鍼法奇貨』では上腹部を太極、下腹部を無極と呼んでいたり、同年序の『大明琢周鍼法』では左右の天枢穴を太極無極穴と呼んでいたりします。
いずれにせよ、お臍周辺、あるいはお臍のレベルを境界線として、「太極」「無極」と呼び分けている。
まあこれらから分かるのは、要するにお臍、ないしその周辺には、全身(精神も含む)を大きく調整できる経穴がある、という臨床的事実です。
全員の陰陽の気の動きの根本になるのが臍周辺だ、ということですね。
お臍とは、母体と胎児を物理的に繋ぐ臍帯(へその緒)の名残りであり、出生してしまえば、そこを解剖しても特に何もなく、西洋医学では開腹手術をするにあたって、
臍の周辺を大きく切るなんてことは珍しくないですし、人によってはファッションでピアスをする人もいますが、東洋医学的には大問題だと思います。(苦笑)
因みに、近年ではこんな研究もあるようです。
(興味深いですね。)
太極観、無極観それ自体についても、江戸期各流派によってそれぞれ違いがあるようで、であるからして、「太極」「無極」と名付ける部位にも違いがある、ということなんでしょうね。
(実際は、タイムマシンで江戸時代に行って、当時の先生方に直接質問してみないと分かりませんけどね。)
江戸期は、中国(明)からの「儒・道・仏」の三教の影響、また、自国の神道との習合、あるいは、伊藤仁斎に始まる新儒学など、学問上の様々な動きがあり、
面白い反面、じゃっかんワチャワチャしています。(苦笑)
伊藤仁斎という人物 参照
(まあ、今でもそれはそうか。。。)
ただ、いずれにしても医学の分野で「太極」「無極」を語る場合には総じて「お臍(神闕)」にポイントが置かれているのが興味深いですね。
東洋医学では、お臍にはいつの時代も、深い意味が付与されてあります。
続く
2019.09.28
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これまでのお話し
さて、続きいきましょう!!
◆「周氏太極図」の解釈 その3
さて、「周氏太極図」の中の、「水火匡郭図」の下の「三五至精図」の解釈の話の続きです。
(ここから読んだ人は、もはや何が何だか分からんね。(゚∀゚))
↑↑これですね。
まあ、以前書いたようにこの医学を語る上で外せない「五行」なるもの。
カテゴリ 五行 参照
「五行」とは、木火土金水の5つの要素(はたらき)のことであり、五行の「行」には”めぐる”という意味があり、これは、よく英訳されるように、
5つの元素(five elements)と考えるのではなく、森羅万象の5つの位相(five phases)と訳した方が正確なように思えます。
(これは、大先輩が書かれていたのの受け売りなんですが、東郷俊宏先生に確認したところ、英文の著作でも、モノや文脈によっては後者で書かれてあるそうです。(笑))
・・・ともかく、昨日述べたように、「三五至精図」は、まずは五行の位置関係が重要です。
左側に火と木(二と三で五)があること、右側に水と金(一と四で五)があること、真ん中に土(五)があることで、五行の調和、交流を示しています。
(魔方陣的なね。)
また、一番上の段に火と水があることは、五行というのは最終的には火水(陰陽)の働きに帰結するという考え方があり、「三五至精図」の上にある「水火匡郭図」の陰陽が、
そのまま下に降りてきた姿(陰陽をシンボライズ)と、考えること出来ます。
しかし、陰陽ではなく、五行で言う「火と水」の間には「水克火(すいこくか)」という、いわゆる相尅(そうこく)関係というものがあります。
(水で火が消える、っていう力関係を示したやつね。)
相尅関係にあるもん同士が横並びでは、バランスが悪いですね。
ここで、すぐ下にある「土」の意味が効いてきます。
「土」と「水」の関係は「土克水(どこくすい)」ですから、この位置関係には、「土」の働きが「水」の働きを堰き止め、
結果的に「火」と「水」の調和を助ける、という意味があります。
そして、左上(最も陽の位置)にある「火」から、中央の「土」へ、そして「土」から右下(最も陰の位置)にある「金」へ、そして「金」から今度は右上にある「水」へ、
「水」から中央の「土」を飛び越して、左下にある「木」へ、で、また「木」から左上の「火」へと、タスキのように、五行の「相生(そうせい 木→火→土→金→水)」の順番で線が引いてあります。
そして、その相生の線とは別に、火水と木金から、それぞれ一番下の「天地の一元気」に向かって、線が引いてあります。
つまり、これは総じて、左側(火木)の「陽」と、右側(水金)の「陰」が、中央に「土」があることによって調和し、循環し、その結果として、
「天地の一元気」が生まれることを示しています。
そしてこの下の大きな〇に、「乾道成男」「坤道成女」と書いてあり、男女(人間だけでなく動植物全ての生物のオスメスを含む)を示し、
その下の大きな〇で、「萬物化生」とあり、自然界の万物の生々化育を示してあります。
周敦頤さんはこの五段階、つまり
「太極而無極」
↓↓
「陰陽(水火匡郭図)」
↓↓
「五行(三五至精図)」
↓↓
「男女」
↓↓
「萬物」
の流れでもって、宇宙全体の成り立ちを示した訳ですね。
シンプルながら、なかなかすごい意味が凝縮された図だと思います。(゚∀゚)
↑↑改めて見ると、ヘエ~(゜o゜) オオ~(゜o゜) となりますね☆
この図については、微妙に違う、類似している図があったりとか、仏教や道教の影響とか、清代以降にバカにされた歴史とか、まだまだ言い出せばキリがない話題を含んでいるんですが、
まあ今回は紹介として、こんなところにしときましょう。
・・・では次回から、こういった、
「やれ太極だ、無極だ、陰陽だ、五行だ、万物だ」
とかっていうのを考えていることが、実際に我々の日々の臨床にどう役立つのか、考えてみましょう。
続く
2019.09.27
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これまでのお話し
さて、続きいきましょう!!
◆「周氏太極図」の解釈 その2
前回、周敦頤(周濂渓)の「周氏太極図」↓↓において最も目立ち、清明院のロゴにもなっている「水火匡郭図(すいかきょうかくず)」について簡単に解説しました。
↑↑これの中の・・・
↑↑これね。
これは「太極」→「陰陽」のお話でしたね。
カテゴリ 陰陽 参照
・・・で、今日はその下の「三五至精図(さんごしせいず)」ってやつについて、簡単に解説しましょう。
↑↑この図ね。
要は今日は「陰陽」→「五行」の話ですね。
カテゴリ 五行 参照
・・・易には有名な「河図洛書(かとらくしょ)」という図があります。
(ちなみに河図洛書のことを略して”図書(としょ)”と言うそうです。”図書館”の図書とは、もともとはそういう意味だったのか・・・?)
このうちの「河図」というのは、「十数図」とも呼ばれるそうです。
↑↑これです。
この図は、簡単に言えば易の考え方でもって、宇宙万物創造の過程を描いた図であり、図中の○は陽、●は陰を示し、下が北、上が南、左は東、右は西を示します。
(方角を言っているのに、普通の地図とは上下左右が逆です。これは陰陽論では、上と左は陽、下と右は陰だからだと思います。)
そしてよく、この図を説明する時に、
「天一は水・北方を生じ、地二は火・南方を生じ、天三は木・東方を生じ、地四は金・西方を生じ、天五は土・中央を生ず。」
「地六は水・北方を成し、天七は火・南方を成し、地八は木・東方を成し、天九は金・西方を成し、地十は土・中央を成す。」
と言われ、これはまあ要するに、天地(陰陽)が定まったのちに、五行(森羅万象の性質や分類)が生じていく過程を順に説明しています。
上記の河図の説を踏まえて、冒頭に出した周氏太極図の中の「三五至精図」↓↓を考えると、
真ん中に土(五)
があり、
左に火(二)と木(三)、足して五
があり、
右にも水(一)と金(四)、足して五
があり、つまり真ん中と両サイドに「三つの五」があるから、「三五」と言われるそうです。
そしてこの、木火土金水の五行で描かれる「三五」は、下にある「ナゾの◯」に連なります。(笑)
↑↑ここね。
この◯は、「天地の一元気」と理解され、丹書である『周易参同契』に「三五、一となり、天地至精」とあるように、
陰陽が五行を生じ、それが天地の一元気となる過程をあらわしています。
そして「三五至精図」ではこの、五行間をつなぐ実線にも、意味があります。
長くなったので続く。(∩´∀`)∩
2019.09.26
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◆「周氏太極図」の解釈
前回も出したこの図。
↓↓
周敦頤さんの宇宙生成図(周氏太極図)な訳ですが、この図に関する詳細な解説がなされている本はあまりないようですが、私の手元にあるものだと、
やっぱり鈴木由次郎先生の『漢易研究』と、今井宇三郎先生の『宋代易学の研究』に詳しいですね。
(この二冊はマストだね。10年ほど前に、苦労して入手しといて良かったです☆)
まず、清明院のロゴにもなったこの図↓↓ですが、
これは「水火匡郭図(すいかきょうかくず)」と言います。
ちょっと難しくなりますが、ここまで来たら、簡単に解説、やってみましょう。
この図のドーナツの左半分は内側から白→黒→白、右半分は黒→白→黒、です。
白は陽、黒は陰だとすると、左は陽→陰→陽、右は陰→陽→陰、という順番になっています。
これを、易の八卦で言うと、左は「離火(りか)の卦」、右は「坎水(かんすい)の卦」で表されます。
☲(離火)
☵(坎水)
(↑↑真っ直ぐな横棒が陽を示し、途中で切れてる横棒が陰を示すのね。)
・・・で、「水火匡郭図」は左右で「離火と坎水」、つまり陰陽を示しています。
陰陽は繋がっており、真ん中には太極があり、図の下にはくっつくように半円が描かれ、これは陰陽が互根であり、しかも五行に連なることが示されています。
(五行の説明は次回)
ここで、宇宙の大きな陰陽を示すなら、陰陽を左右に割るのではなく、上下(天地)に割った方がいいのではないか、という疑問が浮かびますが、
清代の著名な学者である毛奇齢先生の解釈では、「左右」は方角で言えば「東西」であり、東西に離火と坎水を置くのは、北宋の儒学者である、
邵雍(しょうよう 邵康節しょうこうせつ 1012-1077)が強調した、易の「先天図」の考え方であり、左右が坎離(かんり)ということは上下(南北)は乾坤(けんこん)となり、
この思想(先天図の考え方)は道家によって受け継がれてきたことから、この図は、道家の内丹書である『周易参同契』の影響を受けている、という風に解釈なさるそうです。
(・・・ま、毛先生のこの説については反対意見や疑義もあるようですが。『宋代易学の研究』『占いの想像力』参照)
神野英明先生の『鍼灸・漢方の名医になるための秘訣』では、先天図というのは、陰陽の対待(たいたい)関係を示した図である、と説明して下さっております。
(まあ対待関係を簡単に言えば、対立と統一、つまり、あっちがなけりゃこっちもない、という陰陽関係のことです。)
因みに、『易経』の説卦伝における「天地定位、山沢通気」という文言を、『太玄経』では、「南北定位、東西通気」と置き換えています。
『太玄経』については長くなるのでいつか触れるとして、ここでは詳しくは述べませんが、たったこれだけの図で、「南北定位」が易の体、「東西通気」が易の用とし、
その上で、先天図は天地自然の法象、後天図は変化活動の法象、と仰る鈴木由次郎先生の解釈が、シンプルでシャープで、個人的にはすごく気に入っています。
まあ、簡単に言うと、清明院のロゴマークになっている「水火匡郭図」ってのは、
「場そのものや、森羅万象の関係性がもつ原理を示した図」
ってことなんですね。
上記のような考え(まあ他にもあるんだが。。)を知って、20代の半ば頃、妙にこの図の持つパワーに夜な夜な一人で興奮し、魅かれており、
開業したらロゴはこれかな、とか思っていました。(゚∀゚)
(ナツカシー)
続く。
2019.09.25
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◆色々な太極図
さて、この太極を図に示したものをよく「太極図(たいきょくず)」と言います。
清明院のロゴマークの元になったこの図が、歴史上最初に登場した太極図だそうです。
↓↓
これは、中国、北宋の時代の儒学者、周敦頤(しゅうとんい、周濂渓しゅうれんけい ともいう。 1017-1073)先生が『太極図説』に書いた図、
ということで「周氏太極図」という呼称が一般的です。
これは実はいくつかの図が組み合わさった図なんですが、とりあえず一番上の〇は、このシリーズで説明した「無極而太極」を示し、次のシマシマの〇は「陰陽」を示し、
次に「五行」、そして最終的に「万物」という、宇宙生成の道理を示しているんだそうです。
因みにこの図は、後漢の魏伯陽という人物が著したと言われる『周易参同契』という、煉丹術に関する本の影響を受けていると言われます。
(鈴木由次郎『漢易研究』参照)
この図については、なんつっても清明院のロゴの元ですから、後ほどゆっくりとキッチリと説明しましょう。(`・ω・´)ゞ
清明院ロゴマークについて 参照
あと、まあなんつっても、太極図として有名なのはこの図でしょう。
↓↓
実は、この図の作者や来源はイマイチ分かってないみたいです。
まあ、諸説あるようですが、歴史上に登場したのは、一番上に示した「周氏太極図」よりも後、と考えられるようです。
(今井宇三郎『宋代易学の研究』参照)
この図は「太極陰陽魚図」とか、「陰陽魚太極図」とか、「天地自然の図」とか、「天地自然河図」とか、色々な名前があるようで、道教の道士がよく用いたことで知られています。
あと、アメリカのサーフブランド、タウンアンドカントリーのロゴとかネ。(笑)
あと、こんなのもあります。
↓↓
↑↑これは中国明代の来知徳(らいちとく 1525-1604)先生が著した図だそうで、「円図」とも呼ばれます。
(真ん中の〇を太極、白を陽、黒を陰とし、縦に入った黒線が陰、白線が陽だとする図です。『来註易経図解』より)
今は深入りしませんが、この図もまた、非常に深い意味を持っているようです。
あとは、韓国の国旗にみられるように、あらゆる国旗や軍旗、地方自治体のマークなんかにまで使われる「太極図」。(笑)
(因みに、李氏朝鮮の国王の旗と、国軍の軍旗に清明院のロゴと同じマークが使われていますが、清明院と李氏朝鮮はまったく無関係ですので。。。(苦笑))
また、韓国は、この図を朝鮮半島発祥の図だと主張しているとか。。。(苦笑)
・・・まあ、「太極図」というのは、色々な図柄や来歴や考え方があるにせよ、要は「太極」「陰陽」に含まれる深遠な哲学を、簡単な図で表現しようとした結果な訳ですね。
確かに、図にしてくれたら、クドクドと漢文で説明されるよりは、分かりやすくていいネ!!(゚∀゚)
続く。
2019.09.22
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◆「気」の哲学の変遷
さてここまで、「太極」「無極」「その両者の関係」「鍼灸臨床家としてはどうか」あたりを題材として話を進めてきました。
「臨床家としてはどうか」というところで、北辰会ではこの医学の言う「陰陽論」を、単に「陰陽論」と呼ぶのではなく「”太極”陰陽論」として、
理解、運用するべきだ、というお話(臨床古典学)もしました。
蓮風先生の御著書では、中国、成都中医薬大学の教授で、易学の大家である鄒学熹先生の『易学十講』の論を参考に、陰陽論というのは「陰」と「陽」と「その境界線」の3つ、
「三を含みて一となす」という考えがあり、全て一つであるという太極と、陰陽と境界の太極があるからだ、と説きます。
(因みにこの辺の詳細(『易学十講』の部分的翻訳)は、北辰会機関誌『ほくと』17号に掲載されています。)
まあこれは、簡単に言えば何かを陰陽に分ける時に、その基準(境界)を明確に!というお話です。
そしてこれには、背景として「気一元論」という考え方があります。
「気一元論」を含む記事 参照
「気一元論」は、簡単に言えば「この世界は全て気で出来ているのさ」という考え方です。
東京大学出版会『気の思想』によれば、「気一元論」という言い方は、特に誰それさんが言い出した言葉、というワケではないようで、古くは『老子』『荘子』『淮南子』の中にもあるっちゃある考え方であり、
この考え方を強調したのは、中国では北宋の張横渠(ちょうおうきょ 張載(ちょうさい)ともいう 1020-1077)、日本では伊藤仁斎(1627-1705)が有名だそうです。
伊藤仁斎という人物 参照
(張横渠もせっかくなんでそのうち紹介しましょう。この人は何とあの程顥と程頤(二程子)の叔父さんです。優秀な一族だねえ~~ (゜レ゜))
荘子の
・・・因みに、現代中国では大きく気の哲学について3つの流れがあると考えているそうで、
1.程伊川と朱子の「性即理」の考え方(客観唯心論、客観的観念論)
2.陸象山と王陽明の「心即理」の考え方(主観唯心論、主観的観念論)
3.張横渠と王夫之の「気」の哲学(唯物論)
とし、3.の唯物論哲学こそ最高のものである、としているそうです。
(by 『朱子学と陽明学』島田虔次)
(因みに、王夫之の気一元論に関してはこの論文が参考になりました。)
しかしこの、3.の、気一元論を、全くの唯物論と解し、それを最高のものとする考え方と、北辰会の考え方は違います。
中国哲学、中国伝統医学に通底する「気」という概念は、唯物論でとらえきれるものではない、と考えています。
北辰会では「気」を唯物論でとらえ、最小精微な物質である、とするのではなく、むしろ生命原理、生命原体ともいうべきものとして、生気論的に理解しています。
つまり「気」を、物理学(ニュートン力学)の言うような質量を持った存在、と考えるのであれば、それとは認識を異にする、ということです。
(といって、量子力学の言うような素粒子とも同じでないと思いますが。)
・・・ま、「気ってなに??」という問いに対しては、トートロジー的になるけど、10年前に書いたように、「気は気です。」という答えがやっぱベストかな、と。
ここまでの話で言えば、生成論の太極も、場の論の太極も、認識論、存在論における主観と客観も、ぜーんぶただ一つの気の動きの一様態ですよ、ってことですね。
次回、清代に「気は動きである」この理論を完成させたと言われる戴震(1723-1778)さんを紹介します。
続く。
2019.09.21
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これまでのお話し
さて、続きいきましょう!!
◆「陰陽論」ではなく「”太極”陰陽論」。 その②
さて前回は、蓮風先生の著書における「太極」のとらえ方を紹介し、北辰会が鍼灸臨床で「太極」をどう考えているのか、というお話を紹介しました。
僕らは、あくまでも現代日本の鍼灸臨床家なので、古代中国哲学や、哲学用語の歴史的変遷や、東洋医学のバイブルとされるような各種古典の内容を、
あくまでも現代日本人への鍼灸臨床に役立つような、理解運用の仕方をするように心がけています。
これが北辰会の提唱する「臨床古典学」という立場ですね。
因みに、(一社)北辰会では「無極」という言葉についてはあまり言及されないのですが、奥村裕一学術部長がかつて1997年に『全日本鍼灸学会誌』上に発表された、
という論説の中に、日本の江戸期の医家による、腹部における「太極」「無極」という表現が出てきます。
ここについても今回、ついでなんで、あとで触れておきましょう。(∩´∀`)∩
・・・ところで、前回言うように、北辰会では「陰陽論」を単に「陰陽論」と言わずに、あえて「”太極”陰陽論」と呼んでいるのには、陰陽は偉大な哲学、分析学だけれども、
あくまでも常に「太極を踏まえた上で」分析することが重要だ、というメッセージが含まれています。
陰陽という「二」で考えつつも、常に太極と言う「一」の視点を外さないこと。
ですので「陰陽論」は単純な二元論ではなく、「二元的一元論」なのである、という重要な主張です。
陰陽論が、森羅万象に対する単なる分析学なのであれば、その境界線やものさしは精密で精緻であればあるほど良いわけですが、西洋医学のように、
電子顕微鏡レベルにまで精密精緻になってくると、出来ることや分かったことが増える一方で、分からないことも増えていき、時に「木を見て森を見ず」となって、
結果的にかえって「自然(人体)のトータルな全体としてのバランスの調和」を見逃す、見誤る、ということが起こりうる訳ですね。
手術はうまくいったけど亡くなってしまった、とか、血液検査の数値上は薬は効いているけど、全体的な体調としては悪化した、などですね。
ここに、よく言われるように、西洋医学で治らないものが、東洋医学では治ることがある、という事実の謎の一つが隠されているのではないか、と考えています。
上記の考えは北辰会方式のすべてを貫いており、以前紹介した「総合と総体」の話や、「直観と論理」の話にも通じてきます。
「直観」を含む記事 参照
あくまでも「気一元」の世界観。
色々分けるけど、そもそも分けれないもの「太極=太一」なのだ、ということが大前提なんです。
続く。
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