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これまでのお話
奇恒之腑について 3 参照
では続きいきます!!
◆東洋医学における「脈」とは。
本日は「脈」というものについて解説します。
奇恒之腑における「脈」というのは、西洋医学で言う”血管”と似ているものであります。
(厳密に考えていくと違うので、混同しないでほしいですが、血が通る道、管腔状の組織、という意味では同じです。)
まあ要は、臓腑の定義から言えば、「脈」は管腔状でありますが、便や尿や汗と違って、血は体外にどんどん漏らして捨てていくわけではなく、
キッチリ一定量を体内に蔵しつつ、全身を循環してくれないといけないので、「脈」は腑の様でありつつ、血を蔵する臓でもある、というところから、
奇恒之腑に数えられているんだと思います。
東洋医学の言う「血」というものについては以前書きました。
因みに、ちょっと話はずれますが、東洋医学ではこの「脈」のことを「脉」と書く場合があります。
これ(漢字)の意味の違いについても、以前書いています。
「脈」か「脉」か。 参照
この「脈」についても、『黄帝内経』に当然記載があります。
『黄帝内経霊枢』決気篇(30)には、
「営気が漏れないようにしてるのが脈でっせ~。」
とあり、また『黄帝内経素問』脈要精微論(17)には、
「脈の別名は、血之府(けつのふ)と言いまっせ~。」
とあり、『黄帝内経素問』痿論(44)には、
「心の臓は全身の血脈を統括してまっせ~」
とあり、『黄帝内経霊枢』九鍼論(78)には、
「人の生命が成立するのは血脈があるからでっせ~」
とあり、『黄帝内経霊枢』論疾診尺(74)には、
「血脈を診ると、赤が多ければ熱、青が多ければ痛みあり、黒が多ければ痺れとなるよーん。」
とあります。(意訳by竹下)
歴代医家や、現代中医学も、基本的にこの理解に沿っているようです。
ここから分かるのは、
「血脈は、血による濡養を全身に行うために必要不可欠であり、心の臓を肺の臓がフォローしながら、全身に血を律動的に推動している道である!!」
「全身を循環する”気”を、軽清な衛気と、相対的に重濁な営気とに分けた時、営気が正常に循環するためには血脈の状態がよくないといけない。」
「血脈の状態がよくないと、心の臓に負担がかかり、また、心の臓の状態がよくないと、血脈に負担がかかる。」
と、いうことであります。
続く
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2016.01.31
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これまでのお話
奇恒之腑について 2 参照
では続きいきます!!
◆東洋医学における「髄」とは。
本日は「髄」に関していきます。
「髄」というのは、前回説明した「骨」の中にしまわれている、大切なエキスです。
その原料になっているのは「精」だと言われます。
(『黄帝内経霊枢』経脈篇(10)「・・人始生.先成精.精成而腦髓生.・・」)
五臓はそれぞれ「精」を蔵していますが、とりわけこの「精」にかかわりが深いのは「腎の臓」です。
(『黄帝内経素問』解精微論(81)「・・水宗者積水也.積水者至陰也.至陰者腎之精也.・・」『黄帝内経霊枢』本神(8)「・・腎藏精.精舍志.・・」、九鍼論(78)「・・腎藏精志也.・・」)
腎の臓が蔵する「精」は、人間の生殖能力にも大きく関わります。
その「精」が凝集し、骨の内部をミチッと満たしているものを「髄」といい、それは「骨」の中に大切にしまい込まれている腎精のエキスだ、というワケです。
『黄帝内経素問』五蔵生成論(10)には
「諸髄はみな脳に属す」
とあり、同じ『素問』の陰陽応象大論(5)には、
「腎は骨髄を生ず」
とあります。
これらから分かるのは、奇恒之腑のうち、「骨」「髄」「脳」は、どれも腎の臓、とりわけ”腎精”との関わりが深く、腎の臓の機能失調、機能低下は、
結果的に骨をもろくし、髄や脳を空虚にする、という現象がある、ということです。
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2016.01.30
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前回のお話
奇恒之腑について 1 参照
では続きいきます!!
奇恒之腑というのは、6つあります。
つまり、
「骨・髄・脳・脈・胆・女子胞」
の6つです。
この6つに、”奇恒之腑”なる名前を与えたのは、『黄帝内経』です。
(『素問』五蔵別論(11)です。)
五蔵別論には、
「この6つは、地の陰気を受けた存在であり、腑のクセに何かをため込んでやがる存在」
ということになっています。(意訳by竹下)
五蔵別論には、臓と腑の定義を比較して、
「臓は大事なものをため込んで洩らさない存在、腑は洩らしてため込まない存在」
ということになっています。
(これは超有名です。)
そう考えると、奇恒之腑というのは、腑のクセに、何かをため込んでやがるという、変わったやつな訳です。
だから、変わった存在、ということで、奇妙の”奇”の字があてられています。
この中の、「胆」については、以前書きました。
「脳」についても、以前書いています。
ですので、ここでは、それ以外の4つについて語っていこうと思います。
まずは「骨」から。
◆東洋医学における「骨」とは。
東洋医学も、当然、人間の体には「骨」という、建物で言えば柱のようなものがあるということは、2500年前の『黄帝内経』の時代から、すでに認識していました。
『黄帝内経』の本文中から、「骨」という文字を検索すると無数に出てきます。
しかし、素問81篇、霊枢81篇の、「篇名」自体の中に”骨”とはいっているのは
霊枢:骨度篇(14)と素問:骨空論(60)
のみです。
骨度篇の方は、骨の長さから、経脈の長さを論じた篇です。
骨空論の方は、経穴が骨と骨の間の空間(骨空)に存在することを説いた篇です。
このように、「骨」というのは、他の組織に比べて動きが少ないため、人体における位置や長さを考える時の”基準”として考えるのに便利だったんだろうと思います。
また、何度も出てきますが『素問』五蔵生成論(10)には、
「腎の合は骨なり」
とあり、『素問』陰陽応象大論(5)には、
「腎は骨髄を生ず」
とあり、『霊枢』経脈篇(10)には、
「骨は幹たり」
とあります。
これらから分かるのは、骨と腎の臓との関わりの深さ、また、骨は体を支える柱である、ということです。
また、「歯」について、東洋医学では
「歯は骨余(骨の余り)」
と説きます。
歯についても、以前書きました。
歯科と東洋医学 参照
これらのことから、東洋医学的には、「腎の臓」が弱ると、骨や歯がもろくなり、逆に骨折などで骨を傷めると、腎の臓にキツイ負荷がかかる、と言えると思います。
続く
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2015.12.12
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これまでのお話
「浮く」の意味 6 参照
では続きいきまーす!!!
というか最後です。
ここまで、東洋医学の中で重要な「浮」という文字に関して諸文献からの字解きを進めてきました。
基本的には、字源から見ても、
”水面に浮く”
という意味合いが強いようですが、雲の様に、
”空間に浮き上がる、漂い動く”
という意味も含まれるようであることが分かりました。
東洋医学の原典である『黄帝内経』の”霊枢 衛気萹(52)”、”素問 気府論(59)”というところに、”浮気(ふき)”という表現が出てきます。
気府論の方では頭の方に浮き上がる気、という意味合いで使われていますが、問題は衛気篇の方です。
衛気篇における”浮気”という表現は、我々の治療にとって非常に関係の深い”衛気”のことを指しています。
東洋医学における”衛気”というのは、「衛気」って何ですか? その9 でも示したように、経脈の外を巡って、体を防衛する気のことです。
さて、ここでいう”浮気”なるものが、「体の”外”の、空間部分をも巡る存在である。」と言ってしまっていいのか、ここは実はけっこう慎重に検討するべき問題のようです。
これに関して、歴代医家の注釈や解釈等を調べたりしましたが、体表から離れた部分をも気が巡っており、それを刺さない鍼(翳す鍼や接触鍼)で調整できる、
ということを述べた医家はいないようです。
(研究家の先生方、もしおられましたら是非ご教示ください。)
また一方で、気功家の方では「内気」「外気」という考え方があり、患者さんの体に手を翳したりして「外気」を動かす、調整する、という考え方は存在するようです。
(また、治療者の内気をコントロールして、外気として放出し、病気を治したりするのが気功家のやり方ですね。)
私もかつて、とある気功家(鍼灸家でもある)の先生に、この”外気”を操作されて、実際に体が大きく動かされる、という不思議な経験をしたことがあります。
ここまで書き進めてきたように、”浮”の字解き、”気”の字解きからすれば、「衛気」は「浮気」とも考えられ、体表面から離れたところにも流れており、
それを刺さない鍼で補瀉(調整)出来る、と言ってしまってもいいように思います。
「気」の字解き 9 参照
これまで、従来からの一般的な東洋医学、鍼灸医学の歴史からすれば、この「衛気」というものは、あくまでも「体内の」「皮膚表面付近の」浅い部分を流れる気、
という風に定義されてきたようです。
多くの臨床事実や、字義解釈、また気功家の考えも参考にしながら、「衛気」を「浮気」として解釈し、診察や治療に運用することに、どのような問題があるのか。
これから、私なりにこの問題をもうちょっと専門的に考究してみたいと思いますが、一般人からすればどうでも良すぎるし、難しすぎる問題ですので、
ブログに書くのはここまでにしますね。(笑)
専門家の先生方は、日本伝統鍼灸学会の学会誌『伝統鍼灸』第45巻第1号(通巻92号)に、拙著の症例報告「乳児のアトピー性皮膚炎の一症例」が掲載されており、
その症例報告論文の末尾の考察部分に、この問題についてまとめてありますので、宜しかったらご参照ください。
このシリーズ、おわり。
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2015.11.29
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これまでのお話
では、続きいきまーす!!
◆その他の三陰三陽経の働き
東洋医学のバイブル、『黄帝内経』には、他にも三陰三陽についての記載があります。
『黄帝内経素問』陰陽類論(79)では、
・太陽経を「三陽」と呼び、「経」と称し、人体の後面、体表にあり、「父」の様に優れて尊い、とし、
・陽明経を「二陽」と呼び、「維」と称し、人体の前面、体内にあり、「衛」という、とし、
(ここでの「衛」は外側ではなく”内側を”守る、という意味だと思っています。by竹下)
・少陽経を「一陽」と呼び、「游部(ゆうぶ)」と称し、人体の前後内外を動く存在とし、「紀」と言って”綱紀(規律の意味)”の様に重要なものだ、
としています。
また、
・太陰経を「三陰」と呼び、六経の主であり、「母」の様に他の五経を育み養うとし、
・少陰経を「二陰」と呼び、肺と膀胱に通じ、「雌」のように背後で援助する、とし、
・厥陰経を「一陰」と呼び、「独使」と言って陰陽の間を通行する存在としています。
ここまでをまとめると、
太陽経→三陽、経、父 太陰経→三陰、母
陽明経→二陽、維、衛 少陰経→二陰、雌
少陽経→一陽、游部、紀 厥陰経→一陰、独使
となりまして、ここでは、一陰の厥陰経を「独使」と呼んで、陰陽の間を動く存在、と定義づけたところが興味深いですね。
ここまでの理解では、開闔枢理論で言えば少陰経が「枢」、皮部論で言っても少陰経は「枢儒」ですから、三陰経の中で陰陽を調整するのは少陰経だと思っていましたが、
開闔枢理論では「闔」であり、皮部論では陰の極みで「害肩」である厥陰経が「独使」と呼ばれ、陰陽の間を動くとは、なかなか意味が深いように思いますね。
続く
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2015.11.28
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これまでのお話
では、続きいきまーす!!
◆三陰三陽経が支配する皮膚の部位
今日は我々にとって重要な「皮膚」について考えてみたいと思います。
鍼も灸も、皮膚からのアプローチですわな。
『黄帝内経素問』皮部論(56)によると、その皮膚も、部位によって三陰三陽経が支配している、と言われます。
どの部位をどの経絡が支配するかは、その経絡が流れる部位を頼りにすればいいそうです。
そしてそこには、それぞれ、何やら変わった名前が付けられています。
手足の陽明経が支配する皮膚の部位のことを「害蜚(がいひ)」と言います。
「害蜚」は”万物を損なう”という意味だそうで、陽気が盛んになるのも陽明経、陽気が損なわれるのも陽明経、という意味なんだそうです。
手足の少陽経が支配する皮膚の部位のことを「枢持(すうじ)」と言います。
「枢持」の「枢」の意味は、前回のお話の「開・闔・枢」の枢に通じ、気の出入を調整、調節する重要な機構、という意味なんだそうです。
手足の太陽経の支配する皮膚の部位のことを「関枢(かんすう)」と言います。
「関枢」の意味は、「関」は堅め守る、「枢」は先ほど言うように出入の調整ですから、「枢」の働きを固め守る、という意味なんだそうです。
そして、手足の少陰経の支配する皮膚の部位のことを「枢儒(すうじゅ)」と言います。
少陰経も、前回の「開・闔・枢」の話しで出てきたように、その働きは「枢」でした。
「枢儒」の「枢」もその意味であり、少陰経が支配する皮膚の部分が「枢」の働きを持っている、という意味だそうです。
手足の厥陰経の支配する皮膚の部位のことを「害肩(がいけん)」と言います。
「害肩」の意味は陽明経の「害蜚」と似ており、厥陰経は陰の極みであるから、陰が盛んになるのも、陰が損なわれるのも厥陰経、という意味で、
「害肩」と名付けられているんだそうです。
手足の太陰経が支配する皮膚の部位は「関蟄(かんちつ)」と言われます。
「関」は固める、「蟄」はこもる、という意味がありますので、陰気を固めこもる、という意味があるようです。
以上、三陰三陽経が支配する皮膚の部位の名称は
太陽経→関枢 太陰経→関蟄
少陽経→枢持 少陰経→枢儒
陽明経→害蜚 厥陰経→害肩
となり、これに前回の開闔枢を重ねると、
太陽経→関枢 太陰経→関蟄 太陽経と太陰経は「開」
少陽経→枢持 少陰経→枢儒 少陽経と少陰経は「枢」
陽明経→害蜚 厥陰経→害肩 陽明経と厥陰経は「闔」
となります。
・・・まあ、太陽経と太陰経、つまり陰陽離合論で「開」の働きを持った経絡に、皮部論では「関」の字があてられているあたり、非常に興味深かったりするのですが、
ここはあえて深入りは避けます。(笑)
続く
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2015.11.27
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これまでのお話
では続きいきます!!
前回、手足の経絡は3つの陰経と、3つの陽経とに分類される、というお話をしました。
それを「三陰三陽経」というワケですが、その名前を陰経から言うと
「太陰経」「少陰経」「厥陰経」、
陽経では
「太陽経」「少陽経」「陽明経」
でしたね。
そしてこれらは、陰気や陽気の多寡によって、このように呼び分けられている、というお話をしました。
今日は、それ以外の特徴について触れておこうと思います。
◆三陰三陽経と開・闔・枢(かい・ごう・すう)
この話は一般の方には難しいと思うけど、ついでなんで書いときます。
三陰三陽、それぞれの経絡の”働き”を考えた場合、開・闔・枢という3つの働きに分けることが出来ます。
これは、『黄帝内経素問』陰陽離合論(6)というところに書かれています。
「開」には開くという意味があり、気の出入に関係します。
三陰三陽経の中で「開」の働きを持っているのは、陽経では太陽経、陰経では太陰経です。
太陽経は小腸と膀胱の経絡、太陰経は脾と肺の経絡です。
・・・まあ、この4つの臓腑ともに、”開く”ことによって気の出入を調整するという意味で、理解できなくもないと思います。
「闔(ごう)」は閉じるという意味があり、気の保護に関係します。
「闔」の働きは陽経では陽明経、陰経では厥陰経です。
陽明経は胃と大腸、厥陰経は肝と心包です。
この4つも、閉じることによって気を保護する、と、理解出来なくもない感じです。(笑)
「枢」は”開と闔(つまり開閉)を調整する”という意味があります。
ドアで例えれば、開いていて出入り自由な状態が「開」、閉じた状態が「闔」、それを調整する蝶番のような役割を担うのが「枢」です。
「枢」の働きは少陽経と少陰経です。
少陽経は胆と三焦、少陰経は心と腎です。
この4つが、「開く」と「閉じる」を調整するというのも、分からんではない、という感じですな。
〇
ここで個人的に重要かな、と思うのは、上に一応臓腑を働きとともに挙げましたが、開・闔・枢というのは、「臓腑」そのものの働きことを言っているのではなく、
あくまでも「経絡」(手足三陰三陽経)の、生理的な働きのことを言っているのだ、ということです。
手足三陽経において、人体後面(陽の部位)を大きく流れる太陽経は、開く(エネルギーを発散する、と言い換えてもいいかもしれません)働きを持っており、
人体の前面(陰の部位)を大きく流れる陽明経は、閉じる(エネルギーをため込む、と言い換えてもいいかもしれません)働きを持っており、
人体の側面(陰陽が中途半端な部位)を大きく流れる少陽経は、その開閉を調整する働きを持っており、手足三陰経においては、手足三陽経のその働きを支えつつ、
自身も開・合・枢の働きを有し、表裏のエネルギーバランスの調整(恒常性維持)に役立っている、ということだと思います。
このように経絡というのは、それぞれに気血の量が多かったり少なかったり、それぞれに担う働きが違ったりしながら、人体の複雑で霊妙なバランスを支えている機構なのです。
つづく
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2015.11.14
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昨日、「三陰三陽」という考え方 1という記事を書きました。
早速、続きいきます。
まずは前回の復習から。
我々にとって欠かせない「経絡」なるものは、脾胃のある中焦から始まって全身を一周し、再び中焦から全身を巡ります。
このように、全身をくまなく巡って、全身に気をスムーズに行き渡らせる機構が「経絡」です。
そして、その「経絡」は、通過する場所によって関連の深い臓腑があり、臓腑別に、全部で12の名前があります。
それを「十二経絡」と言いました。
そして、その「十二経絡」も、陰陽に分けられています。
その分け方を「三陰三陽」と言い、他の東洋思想、東洋哲学にはない、医学分野独特の分け方(※)なのです。
(深い意味がありそうですねえ。)
※因みに、三陰三陽学説が東洋医学独特の考え方である、という論は、私の鍼灸学生時代の恩師でもある、松本弘巳先生の『鍼灸臨床のための素問・霊枢医学』の記載を参考にさせていただいています。
・・・とまあ、ここまでが前回の復習。
で、その分け方はどうかというと、
「3つの陽の経絡と、3つの陰の経絡があり、合わせて6つの経絡が、それぞれ手と足にある、だから手に6、足に6、6✕2で12経絡」
というセッティングになっています。
手足も陰陽ですから、12の経絡をまずは大きく手足に6つずつ分け、さらに手の中にも陰陽、足の中にも陰陽、と分け、さらにさらに陰を3つ、陽を3つに分けた訳です
ですので、手に三陰三陽の六経絡、足に三陰三陽の六経絡、合わせて十二経絡、というわけです。
ここでいう陽の経絡というのは、五臓六腑の「六腑」の方と関わる経絡です。
陰の経絡というのは五臓六腑の「五臓」の方と関わる経絡です。
因みに五臓だと数が合わないですが、肝心脾肺腎に、心の臓のガードマンである心包の臓を入れたら六臓ですね。
心の臓と心包の臓は働きの上でニコイチ、という話は以前しました。
心包・三焦 参照
このように、手に6つの経絡、足に6つの経絡、そしてそれらは三陰三陽、半分に分けられ、人体に左右対称に存在する。
総じて、陽の経絡は体の後外側、陰の経絡は前内側に配置されています。
このように考えられているのが、われわれ鍼灸師がこの上なく重視する、「経絡」の主な系統です。
では、もう少し詳しく考えていきます。
続く
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2015.09.27
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これまでのお話
「尺膚診(しゃくふしん)」について
「尺膚診」について 2
「尺膚診」について 3
「尺膚診」について 4
「尺膚診」について 5
「尺膚診」について 6
「尺膚診」について 7
「尺膚診」について 8
「尺膚診」について 9
「尺膚診」について 10
「尺膚診」について 11
「尺膚診」について 12 参照
では続きいきます!
◆和久田叔虎の『腹証奇覧翼』における尺膚診の記載
こないだ、墓マイラー8という記事を書きました。
この時に墓参した名医二人のうちの一人である和久田叔虎先生について、先日紹介しました。
和久田叔虎という人物 参照
その和久田先生の代表作である『腹証奇覧翼』という本の中に、何と尺膚診に関する記載が出てきます。
今回、偶然です。
まさかそういう風につながるとは・・・。
やはりあの時、僕の目の前に急に墓石が現れたのは偶然とは思えない。。。ナンテネ☆
まあともかく、『腹証奇覧翼』の冒頭部分、”総論並びに内経診尺図解”というところに、この尺膚診の話が出てきます。
(↑↑京都大学貴重資料デジタルアーカイブにリンク)
ここに、
「尺膚診には諸説あるけど、手を大きく開いて、親指の先から中指の先までの長さを”尺中”と言って、お腹をリンクさせて診てるに違いない!」
と述べ、さらに、
「尺内で臍からみぞおちまでをうかがい、尺外で臍下をうかがい、さらに体幹部を上中下三つに分けて、
臍からみぞおちまでを中とし、左の外側で肝を、内側で膈を、右の外側で胃を、内側で脾をうかがうとし、
みぞおちからノドまでを上とし、左の外側で心を、内側で膻中(胸腹ともにうかがうところ)を、右の外側で肺を、
右の内側で胸中をうかがい、前で生殖器と顔面部(目耳鼻口)をうかがい、後ろで肛門と首から背中をうかがい、
下では下腹部、腰から足をうかがう。」
とも述べ、
「素問に”三部九候”という言葉があるが、それは人体を上中下に分け、その左右と中をうかがうという意味だー!」
と、喝破しています。
・・・まあ、この論の正否はともかく、彼は上に挙げたような図まで付けて、この部分を強調しています。
細かい部分はともかく、前腕の状態をうかがう尺膚診を、腹診とリンクさせて考えたり、全身の上中下、内外をうかがうという考え方そのものは、
北辰会が臨床に取り入れている尺膚診の考え方と同じです。
冒頭に書くということは、非常に重要視している証拠でもあります。
因みに、『腹証奇覧翼』のもともとの本であり、和久田先生の師匠である、稲葉文礼先生の書である『腹証奇覧』の冒頭には、
いきなり腹診のやり方、手順が書いてあります。
そしてそこには、
「患者も”術者も”、心を静めて診察にあたれ。それはまさしく武士が敵に向かうが如く、雑念を捨てて、ただ病人を救わんと、心を専一にして行え。」
と、書いてあります。
ひたすらアツい文礼先生と、アツいけども、キチッと理論を言おうとする叔虎先生の個性がよく出ているイントロだと思いますね。(笑)
続く
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2015.09.20
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これまでのお話
「尺膚診(しゃくふしん)」について
「尺膚診」について 2
「尺膚診」について 3
「尺膚診」について 4
「尺膚診」について 5
「尺膚診」について 6
「尺膚診」について 7
「尺膚診」について 8
「尺膚診」について 9 参照
では続きいきます!
◆『黄帝内経素問』脉要精微論(17)における尺膚診の記載
さて、黄帝内経の中には、まだ尺膚診に関する記載があります。
本日紹介しますのは、素問の17篇目、脉要精微論(みゃくようせいびろん)でございます。
この篇名の由来なんですが、ここでは、黄帝と岐伯が、診察の方法について問答しています。
その中で、特に脈診と望診の重要性を強調しているので、”脉要精微論”という名前がついているそうです。
(分かったような分かんないような説明ですネ。。。(苦笑))
そして、僕が知る、黄帝内経の中の尺膚診の記載は、これが最後ですね。
他にもあるよ!という方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。
一緒に、勉強しましょう。(笑)
〇
まあともかく、ここに、
尺内兩傍.則季脇也.
尺外以候腎.
尺裏以候腹.
と、出てきます。
簡単に訳せば、
尺の内側で、脇の部分の状態が分かるよー
尺の外側で、腎の状態が分かるよー
尺の深い部分で、腹の状態が分かるよー
という意味なんですが、ちょっとややこしいのは、この部分の”尺”の意味なんです。
これの解説として、
手首の脈の、脈診の部位について述べているのでアール!
という説と、
いやいや、尺膚診(前腕)について述べているのでアール!
という説があり、北辰会では後者の説の方を参考にしています。
(まあ、後者の説の方が有力なようなんですがネ。)
この説は、多紀元簡(1754?-1810)という人物の『素問識』という本の中に、いくつかの根拠とともに出てきます。
しかし、黄帝内経に注釈を入れた、有名な王冰(7世紀)という人の注なんかでは、
この尺は”尺沢(しゃくたく 肘にある経穴)”という意味でアール!
と書かれてあったり、明代の有名な医家である張景岳なんかは、
この尺は手首の脈のことでアール!
と言ってみたり、諸説紛々なわけです。
そこで重要になるのが、我々は臨床家な訳ですから、実際に現場で使ってみて、確かに妥当性が高い方を採用すりゃあいい、という、蓮風先生の言う”臨床古典学”的スタンスなのです。
ある古典を金科玉条視したり、教条主義に陥るのではなく、あくまでも臨床と合うものを採用する。実際に病める患者さんを前にして、真実使えるモノを採用する。
これでいいのです。
大体からして、『黄帝内経』というのは、まず第一に医学書なんであって、文学や考古学の研究材料じゃないのです。
(もちろん、そういう側面もあるけどネ。)
そういう考え方でこの部分を読み、実践で使ってみた結果、この記載の意味としては、前腕の各部位を、人体の各部位と対応させて、
診察、治療に組み込んでいく考え方を採用した、というワケなのです。
続く
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